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2005年05月14日

国際イメージと広告(真鍋 1998)

目次
第1章 広告の国際イメージ形成の機能
第2章 日本のテレビCMにおける「外国関連広告」の内容分析
第3章 ドイツにおける「日本関連広告」の内容分析
第4章 中国における「日本の広告」の内容分析
第5章 外国における「日本の広告」に対する態度・意見・行動

  はじめに「この研究の目的は,広告が国際イメージの形成にどのような機能を果たしており,そのことが国際マーケティング戦略にどのようにかかわってくるかを解明することにある」(3ページ)と記してある。この章では,アメリカ,中国,日本,を分析対象として外国関連広告が外国そのものをイメージするかを調査している。「ここで外国関連広告というのは,①外国の企業・団体の広告,②外国の商品・物産の広告,③外国のシンボル―たとえば外国の文化・芸術・生活・風景・建物・人物など―を取り入れた広告」(3ページ)をすべて含むものとする。その内容は①日本におけるアメリカ関連広告と中国関連広告②アメリカ合衆国のサンフランシスコにおける日本関連広告と中国関連広告③中国の上海における日本関連広告でありそれぞれを調査している。①はテレビ,CMと雑誌広告について,②は新聞広告と雑誌広告について,③は新聞広告について分類別に分けて分析している。さらに質問紙調査により細かく分析し,「外国関連広告においては,国家間の国際関係が微妙に反映されるものであること」(16ページ)と「アメリカにおいては外国の商品,製品,物産の広告は見られても,日本のように外国のイメージを使った広告はさほど多くない」(16ページ)という補足を挙げている。

 第2章では1990~1992年の日本のテレビCMにおける外国関連広告を分析している。分析結果から読みとれる内容は,アメリカのイメージが各年度,一定的で圧倒的に多いという点,外国関連広告はベルリン壁の崩壊やバルセロナ・オリンピックなどの世界情勢に大きく影響されるという点が挙げられる。

 第3章ではドイツでの日本関連広告における雑誌広告とテレビCMについてそれぞれの分析を記しており,さらに分類ごと分析し,それぞれの特長を表している。テレビCMにおいては企業名や商品名ごとにも分析されているが,ドイツへの商品輸出が少ないこともあり,サンプル数がとても少ないと書かれている。

 第4章では中国における日本の広告に関する内容分析を2種類の新聞を対象として調査,それをさらに分類別に分析する。特に目を引く結果は使用頻度が高い言葉が日本の広告ではたびたび使われるということである。ここでは中国における広告表現の変化も分析結果から読み取られ挙げられている。

 第5章では外国が「日本の国際広告に対して,どのような見方,感じ方,考え方,行動の仕方をしているか」(98ページ)ということを調査している。対象は日本以外の10ヵ国の大学生で,質問紙調査をする。この調査を分析していく上での注意点は性別,年齢,専攻領域,生活態度,生活満足度の質問項目が挙げられている。調査結果はマス・メディアへの接触度,媒体別広告への接触度,日本体験,マス・メディアによる日本との接触度,広告による日本との接触度,日本および日本人に対する好感度,日本に対する評価度,目につく日本の広告「企業・商品」と利用・購入したことのある日本の「企業・商品」,日本の広告に対する「好感度」と「有用度」,日本の広告に対する意見―ステートメント・テスト―に分類され,各国ごとに記されている。最後に「ある質問項目に対するある国の回答の分布の意味を深く理解しようとするならば,その国の事情について十分に検討することが必要となる。そのような事情については,広い意味でのその国の事情一般と,その国の広告事情とが,いったんは区別されながら分析されたうえで,再び両者が関連づけられて分析されるという手順がのぞましい」(123ページ)と書かれており,その分析作業で,日本とどのようにかかわるのかが重要なポイントであると記されている。

出典:真鍋一史(1998),『国際イメージと広告-国際広告・国際イメージ・文化的ナショナリズム-』 日経広告研究所,3-125ページ。

投稿者 : 2005年05月14日 20:01

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