« 小売業マーケティングにおける国際化戦略に関する考察(柳 2003) | メイン | 米国におけるGMS小売業態の衰退化と新たな取り組み―シアーズ(Sears)社での小売技術開発の試みを中心に―(渦原 2001) »

2005年05月16日

国際イメージと広告(真鍋 1998)

目次
第6章 日中相互イメージの構造
第7章 日本人の中国イメージ
第8章 中国における日本人イメージの諸相とその変化の方向 
第9章 中国における階層帰属意識と職業移動
第10章 日中相互イメージの諸相とその変化の方向
第11章 国際関係と世論

 第6章では「日本人と中国人がそれぞれお互いの「国・社会・文化・人」に対して持っているイメージの諸相を明らかにするとともに,両者のイメージの比較分析を行うことを目的とした」(129ページ)と記してある。ここでの調査は日本人の中国に対するイメージと中国人の日本に対するイメージに加え,日中両国の「一般サンプル」と「学生サンプル」に分けて行われている。国に対するイメージでは,日中間のイメージは対称的な結果になっており『日本のイメージは「豊か」「近代的」「民主的」「信頼できない」というものとなっている』(136ページ)「一般サンプル」と「学生サンプル」では日本イメージの方の差異が大きく『プラスの評定においても,マイナスの評定においても「一般サンプル」にくらべて「学生サンプル」のほうがより強い反応を示しているということである』(137ページ)人に対するイメージでは,日中間のイメージは「対称的」ではなく「対照的」な結果となっており,中国人イメージも日本人イメージも共にプラス方向に位置しているが,その程度に差異が見られる。「一般サンプル」と「学生サンプル」では「両者の差異は対日本人イメージのほうでより大きいといえる」(138ページ)次に,日中間の社会的距離感では『すべてについて日本人のほうが中国人に対して距離感が小さいことがわかる。結婚ということでは,日本人の場合とつぜん距離感が大きくなっている。中国人の場合もその点は同じに見えるが,他の諸項目にくらべてみるならば,中国人の場合は「日本人との結婚」よりもむしろ「日本人の上司のもとで働く」ことのほうで距離感がより大きい』(139ページ)このように日中間のイメージには差があり,同じ「一般サンプル」や「学生サンプル」でも大きな違いがある。

 第7章では『天安門事件(1989年6月)の前と後で日本人の中国イメージがどのように変化したかを捉えることを目的として実施された「対中国イメージ調査」の結果を報告する』(174ページ)と記されてある。事件後の結果では「貧しい」「伝統的」「軍事的に強大」「非民主的」という項目は一層高まり,前回の「信頼できる」が反対に否定的イメージになり「信頼できない」という数値が高くなった。しかし,この「信頼できない」というのは「国」に対してであり「人」に対しては前回とあまり差はなかった。結果として『中国における民主化要求運動とそれにつづく天安門事件の前と後とで,①人びとの中国(および中国人)に対するイメージがポジティブからネガティブの方向に劇的に変化したこと,②人びとの「マス・コミュニケーション」および「パーソナル・コミュニケーション」による中国情報に対する接触度が大きく増加したこと,がわかる』(184ページ)

 第8章では1988年と1992年の質問紙調査によって「中国人の対日イメージの諸相とその変化の方向」(219ページ)を明らかにしている。1988年と1992年では「ほとんどの領域で社会的距離感の短縮化が進んでいることがわかる」(207ページ)これらの年の間の変化として顕著なものは「貿易・経済の分野」であり,前回より減少したものの「科学・技術の分野」においても高いパーセントを残しており,中国の人びとはこの2分野において日本との交流が重要になると考えており,このことは中国の対日イメージが「豊かさと繁栄」という一元化の方向を示している。

 第9章では中国における階層帰属意識と職業移動について述べられている。階層帰属意識では,中国の開放改革のよって生活や収入に対する意識が高まり『現在の中国においては人びとの階層帰属意識が「収入」と,それにもとづく「生活満足度」によって大きく規定されている』(227ページ)また職業移動については,中国は改革などにより著しく経済発展しているため「親子間の職業の一致度が全般に低くなりつつある」(230ページ)

 第10章では「日本人と中国人がそれぞれお互いの国(人も含めて)に対してどのようなイメージを持っており,それが時間の経過とともにどのように変化してきたかを明らかにすることを目的とするものである」(235ページ)と記してある。ここでの内容は第8章で述べてきた内容と類似しており,日中間での「国」や「人」に対する好感度では「好き」のパーセントは両国とも同じ数値となったが「日本(人)・中国(人)が嫌い」のパーセントは中国人の方が高くなっている。また,変化の方向性に関しては第8章で述べたことに加え『日本の中国イメージが特定の事件を契機にいわば「波動」とでもいうべき変化の方向を示している』(249ページ)

 第11章では日本とアメリカと中国との関係について述べられている。グローバル化が進む今,より緊密な友好関係を構築するためにはお互いを理解し合うことが重要になるのだが,「日本・米国・中国における世論とマス・メディア調査」によるとこの3カ国の間には,お互いの国に対する好感度や知識度など様々な分野において差異が顕著に現れた。

出典:真鍋一史(1998),『国際イメージと広告-国際広告・国際イメージ・文化的ナショナリズム-』 日経広告研究所,129-280ページ。

投稿者 : 2005年05月16日 22:05

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~t020026/blog/mt-tb.cgi/45

コメント

つなげてしまうと分かりにくいので,各章ごとに,一行空けてください!

投稿者 tsukazaki : 2005年05月19日 11:38

コメントしてください




保存しますか?


 
Copyright© 2005-2006 Baba Seminar. All rights reserved.