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2005年05月31日

国際広告戦略の世界標準化対現地適応化(藤沢 1997)

 この論文は,広告メッセージ内容を世界標準化すべきか現地適合化すべきかという意思決定に影響を与える要因を,情報の手がかり数を判断基準として明らかにすることを中心とし,広告媒体,広告予算,広告効果についても考察を加えている。

 ここでは,広告メッセージを世界標準化すべきか現地適合化すべきなのかという意思決定に影響を及ぼす要因を明らかにするために,いくつかの先行研究をサーベイするという方法をとっている。そのなかで,ミューラーの実証研究をもとに情報の手がかり数を基準とし,必要な情報の手がかり数の量によって広告メッセージを世界的に標準化すべきかどうかの決定要因を推定している。多くの情報の手がかり数が必要とされる場合は,適合化された広告メッセージが,情報の手がかり数が少なくてもよい場合は標準化された広告メッセージが,それぞれ適しているとしている。広告メッセージの世界標準化の促進要因として,低関与型製品,テレビ広告,高コンテクスト文化,集団主義的文化,販売される各国間において製品ライフサイクル段階が導入期・成長期といった段階で類似している製品,が挙げられている。さらに,先行研究から産業財,世界中で共通したニーズを満たす製品,メッセージに含まれたユーモアも標準化に寄与するとしている。産業財,世界中で共通したニーズを満たす製品については,情報の手がかり数を基準とした場合でも標準化を推進させる要因となる点で一致するとしている。耐久消費財,高関与型製品,印刷物広告,販売される各国間において製品ライフサイクル段階が成熟期・衰退期といった段階で類似している製品,あるいは各国間で著しく異なる製品ライフサイクル段階の製品,低コンテクスト文化,個人主義的文化が,広告メッセージの現地適合化の要因となるとしている。これは,印刷物広告がテレビ広告より情報提供的であることや,製品ライフサイクルと広告のスパイラル効果では,成熟期には説得・情報提供機能,衰退期には情報提供・説得機能へと力点が移るとされていることなどにより,それぞれ情報の手がかり数が多くなるからであるとされている。

 高コンテクスト文化と集団主義的文化の方が,低コンテクスト文化と個人主義的文化と比較して,少なくとも同文化圏内においては広告メッセージを標準化しやすいとみなせるとしながらも,世界標準化という意味を考えた場合,文化コンテクスト・レベルの高低といった差異を乗り越えなければならないとし,「広告メッセージにも異文化マネジメントの定説的な考え方を適用すべきかどうかは,今後の検討課題としたい」(36ページ)としている。また,予算については,国民1人当りのGNPに応じて広告予算が算定されていると標準化の傾向を紹介し,広告効果でも標準化の必要性を述べているが,「これらはあくまでも経済的要因に着眼した発想」(36ページ)であるとして,文化的要因の差異を考慮した考察には至っていないとしている。これらのことから「予算と効果も世界的に標準化される要素だと断定してよいかどうか」(36ページ)ということも残された課題であるとしている。

論点 
 先行研究をサーベイするなかで,ポルシェの乗用車がヘネシーのブランデーなどとともに分類される高級ブランド的な製品タイプは,「消費者にとって文化とは関係なく類似したライフスタイルと期待を抱ける製品」(16ページ)であること,あるいは最初から決め買いに走りがちであることから広告メッセージの標準化が行いやすいとしている。しかし,ポルシェの乗用車をはじめとする高級車が,情報の手がかり数を多くは必要としない製品だとは思えないし,高級かどうかに関わらず乗用車は耐久消費財である。情報の手がかり数を広告メッセージ標準化・適合化の判断基準にするのは苦しいように思われる。

出典:藤沢武史(1997),「国際広告戦略の世界標準化対現地適応化」『商学論究』,44(3),13-38ページ。

投稿者 : 2005年05月31日 18:37

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コメント

引用しすぎです。自分の言葉でまとめるように。引用は「ここぞ!」という記述に限るようにしましょう。でもって,論点は?

投稿者 Baba : 2005年05月31日 23:29

遅くなってすいません。ご指摘いただいた箇所を修正しました。
以後,気をつけます。

投稿者 02urata : 2005年06月06日 09:42

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