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2005年05月05日

広告の理論と戦略 (清水 2004)

目次
第10章 広告効果測定基準とその測定手法
第11章 インボルブメントと消費者意思決定プロセス
第12章 IMCとマーケティング・コミュニケーションの諸ツール

第10章 広告効果測定基準とその測定手法
 第10章では,いろいろな要因が重なり合って効果が現れる広告の効果を,少し整理して考えてみる。広告測定効果はどのように測定されるのか。媒体普及,媒体露出,広告露出,広告知覚,広告コミュニケーション,販売効果といった広告評価基準に従って述べていく。媒体普及の段階は,特殊な測定方法もないため,ABCのリポートや,NHKの調査結果から得ることができる。媒体露出の段階では,視聴率測定によりオーディエンス総数を求める。視聴率には世帯視聴率と個人視聴率があり,世帯視聴率は調査世帯に視聴状況の自動記録装置をつけておいて求め,個人視聴率は日記調査法で調査する。広告露出の段階は,広告が見聞きされる可能性を超えるもので,新聞,雑誌の場合は注目率,生独立測定ということになる。広告知覚段階では,広告コピーが実際に見聞きされる効果を求めるもので,媒体機能とコピー機能との総合効果が測定される。コピー効果の測定法としては,起想法と質問紙法,問合わせ法,ラボラトリー・テスト法があげられる。広告コミュニケーション(態度変容)段階は,広告を認知してから広告商品への態度がどのように変容していくかを測定するものであり,態度測定の方法には,段階法,シュウエリン法,CACテスト法などがある。「販売効果測定は,広告キャンペーンの事前事後の売上高の差を捉えるもので,ストア・オーディット法や,販売地域テスト法などといった単純な方法で行われる。しかし,販売効果は,広告を含むマーケティング変数と,競合他社を含む外部環境変数との係わり合いの結果として現れるもので,この中から広告だけの貢献度を求めるのは困難である」(307ページ)
 
第11章 インボルブメントと消費者意思決定プロセス
 第11章では始めに,歴代のハイアラーキー・モデルについて述べられ,次にマーケティングにおける消費者意思決定モデルについて考察している。次にニコシア・モデル,ハワード=シェスモデル,アソシエーション・モデルについて述べられている。しかし、これらのモデルは,わが国において適応の可能性は極めて低いと言える。なぜならば,モデルの各段階は全て効果測定が必要であり,実際に調査機関によって,各々の段階の調査が定期的に行われ,データが得られる状態になければ,有効なモデルにはならない。わが国にはこれだけの段階をすべてカバーするだけの調査がなされていないからである。次に、インボルブメントに関する消費者行動研究の流れについて紹介されている。例として,広告媒体へのインボルブメントに関する研究としては,クラグマンが「被験者が説得的刺激の内容と自分自身の生活の内容とを『結びつける言葉の数』,或いは意識の上で明確な刺激の内容について個人の生活の内容に照らして述べる1分当りの言葉の数である」(332ページ)としているインボルブメントの定義に基づいて,雑誌とテレビによる実験を行い次のような結論に達した。「雑誌のような印刷媒体では被験者は自ら読もうとしなければ情報を入手することができないので,能動的学習をすることになり,インボルブメントの度合いが高い。テレビ媒体ではリラックスした状態で見ることができ,受動的学習を伴うので,インボルブメントの度合いが低い。このような状況下では広告が態度変容を起こさせることはほとんどないというものである」(332ページ)そして,インボルブメントを考慮した新しい広告効果モデルの構築が必要となってくるのであるが,筆者は,新しい広告効果モデルは「広告商品」,「媒体評価基準」,「学習セット」,「情動セット」,「行動セット」の五つのボックスからなるモデルを提案している。筆者は,「わが国において,消費者の商品に対するインボルブメントの調査研究が進められつつあるが,媒体に対するインボルブメントの調査研究はまだ行われていない。これらの実証研究が積み重ねられていけば,わが国消費者のロー・インボルブメント意思決定変数が次第に把握できるようになるのであるだろうが、それを待たなければ本当の意味での新しい広告効果モデルは生まれない」(352ページ)としている。

第12章 IMCとマーケティング・コミュニケーションの諸ツール
 第12章では,広告を送り手の立場から見るのではなく,受けてである消費者の立場から考えようとするインテグレーション・マーケティング・コミュニケーション(IMC)について述べられている。筆者は「IMCとは外部環境と消費者データを踏まえ,ターゲット・オーディエンスに対してブランドを統合的なメッセージで効率的にコンタクトさせ,納得してもらうトータル・マーケティング・システムである」(355ページ)と定義している。IMCは企業の一広告宣伝部局だけで遂行できるものではなく,全社的な意思改革と組織改革から始まるものである。今,アメリカに起こったIMC旋風が日本へ上陸しようとしている。次にマーケティング・コミュニケーションのツールについて述べられている。マーケティング・コミュニケーションのツールには、広告,社内販売意識の意欲と技術の向上を目的とした社内向け販売促進と,需要を創造することを目的とした消費者向け販売促進がある販売促進,プロモーション,あるいはマーケティング・コミュニケーションの重要なツールの一つである人的販売,「企業または組織体の活動に影響を受けるグループに対し,企業または組織体が好ましい態度を開発するため働きかける一切の活動あるいは態度である」(371ページ)と定義されているパブリック・リレーションズ(PR),パブリシティ,コーポレート・アイデンティティ(CI),商品/チャネル/コスト・コミュニケーション,インターナショナル・コミュニケーション,マーケティング情報,クチコミがある。

出典:清水公一(2004),広告の理論と戦略,(280-376ページ)

投稿者 02hidemin : 2005年05月05日 23:47

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