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2005年05月04日

広告の理論と戦略 (清水 2004)

第7章 広告媒体戦略とエンピリカル・データ
第8章 海外およびわが国の広告管理システムモデル
第9章 広告表現戦略と広告制作プロセス

第7章 広告媒体戦略とエンピリカル・データ
本章では媒体戦略の立て方,具体的戦術の方法,戦略・戦術を立てる際の考慮条件や,メディアシステムのためのエンピリカル・データについて述べられている。

第1節 広告媒体戦略と戦術
リチャード・P・ジョーンズのチェックリストを挙げながら,媒体の戦術と戦略について述べられいる。
1 媒体目標
1)大まかな目標を設定する
広告は,マーケティングと連動して初めて,企業目標を達成するツールとなる。そのためにもまず,マーケティングと目標と,戦略に同調した媒体目標を立てる必要がある。また,競合他社のマーケティング活動も十分に考慮しなければならない。
2)体的な目標を設定し,その根拠を明確にする
 ①ターゲットを明確にする:人口統計区分・地理的区分・ライフスタイルによる区分
 ②広告の実施期間と時期を明確にする:通年化特定の時期か
 ③コピーアプローチを把握する:クリエイティブ部門との密な連携により,媒体条件を把握する。
2 媒体戦略
 次に媒体戦略(media strategy)に取り掛かることが出来る。これは,与えられた広告費を効率的に配分するための基本原則の明示であり,その考慮条件は…
1)媒体計画に適応する広告費運用の一般原則を決める。
 ①広告費シェアを競合他社と同程度にするか,多くするかの決定。
 ②広告費の投入に当たり,到達と頻度のいずれかを重視するかの決定。
 ③売上高に対する広告費の割合を地域的に配分する。
2)主要媒体を選択し,その根拠を明らかにしておく。
3)補助媒体の選定を行い,その理由を明確にする。
4)媒体の利用に関する基本原則の決定。
 ①ガバレッジ・エリアを全国か地方のいずれかにするか
 ②スペースやタイムに関するおおまかなプラン
 ③ターゲット・オーディエンスの密度により,媒体ウェイト条件を記入
 ④CPMなど,効率性の基準設定
 ⑤露出は集中的か,継続的か-媒体利用のスケジューリング
5)来上がった代替案を検討する。

3 媒体戦術
 上記の基本条件を踏まえ,さらに具体化している。
1)予算の概要表の作成
総広告費,媒体別の広告費,構成比,広告費の対前年比などを盛り込む
2)媒体計画の概要を書く
 ①主要素の記述
 アイデンティフィケーション:ネットワーク名・局名・番組名
 局,新聞,地域の数
 購入広告単位:スペースやタイムなど
 ②計画内の各要素が,計画目標との関連において,どのように作用しているかの記述
 ③この媒体戦術か他のものよりも優れている理由を示す
3)広告媒体費と売上高との関係表を作成する。
 ①4半期ごとの計画済みの広告媒体費と売上高との関係表を,年間広告費に占める比率を含めて作  成。
4)媒体カバレッジ,頻度,その他の統計データの作成
 ①印刷媒体に関して:観客総数,広告出稿数,広告サイズ,費用,世帯カバレッジ
 ②電波媒体に関して:全/テレビ所有世帯カバレッジ,平均視聴率,CM本数・秒数,費用,CPM
 ③代替案の検討

第2節 到達・頻度・継続
 広告媒体戦術に関しては到達と頻度そして継続をどのように決定するかが重要である。
1 到達
 リーチとも呼ばれ,広告媒体や広告を見たり聞いたりしたりする人の量や割合である。
期間中に広告の露出回数が増えてくると,広告に重複して接触する人が出てくる。累積到達率も同様で,少なくとも1回は接触した世帯または個人の割合で,広告の広がりを測る指標とされる。

2 頻度 
 一般には平均接触頻度として用いられる。世帯または個人がその広告に平均何回接触するかを示しており,接触の深さを測るものと位置付けられる。
3 GRP
 延べ視聴率とも呼ばれCMの視聴・聴取率を合計したもの。到達度の大きさを測定するもの。
4 頻度分布
 複数広告のうち回数ごとに接触した世帯や個人は全体の何パーセントを占めるかを測る。
5 CPM 
 到達1000人当たりのコストで,媒体の費用効果を測定する
6 継続
 1カ月のうち1週間前後継続して広告を提出する短期集中型,1カ月以上継続する連続型,徐々に増加,する増加型,その逆の減少型,波型などがある。

第3節 ネット・リーチの把握
 広告媒体戦略で重要な事は,銘柄媒体の純到度,非重複オーディエンスを求める事である。頻度効果の異なった媒体,銘柄媒体で達成しようとするならば,それらの重複オーディエンスをあらかじめ把握しておき重複オーディエンスの多い媒体を選択することになるであろう。反対に少ない頻度で幅広い到達を目標にしているならば,できるだけ重複の少ない媒体を選ぶことになる。

第4節 広告の効果挿入法
1 印刷媒体への挿入法に関するズィールスクの研究
 1959年にズィールスクが広告の記憶率と忘却率の測定を行った。調査に用いたのはアメリカの一般家庭で使われている食料品13種。2つのグループに分けた婦人に,一方のグループは1年の最初の13週,もう片方は4週ごとに1年間同じ広告プリントを郵送した。ここで,記憶率を見てみると,毎週露出したグループは63%,4週毎露出した場合が48%であり,忘却率は毎週露出したグループは63%あったものがわずか4週間で半減,6週間後には3分の2にまで減少している。次に毎週露出したグループは記憶率が初めの3週間で14%から3%に減少し,その後は48%から37%へ減少している。忘却率は1回目が79%で13回目は23%である。忘却率は広告露出回数の増加に連れて減少していることがわかる。
《結果》
集中的広告は一時的に広告を記憶させる点では効果的である。
広告は継続的に実施しないと直ちに忘れ去られてしまう。
広告露出回数が増加すれば,それだけ広告の忘却率は減少する。
各週の平均広告記憶者数の最大化を図る場合,広告露出を分散させた方が効果的である。
広告の広告費効率は露出回数の増加に連れてよくなる。

第8章  海外およびわが国の広告管理システム・モデル
 媒体戦略・戦術をコンピュータを使って行おうとする各種コンピュータモデルが開発されている。
第1節 これまでのコンピュータ・モデル
1 LPI 2 LPⅡ
一定の制約条件の下で,ある目的関数を最大化,あるいは最小化しようとする方法を線形計画法(LP)という。
 ①市場および媒体情報の入手:まず人口統計特性別に読者,視聴者で,しかも見込み客である     audience marketを求める。
 ②媒体の質的価値:媒体の名声や編集内容などを評価し,REV(Rated Exposure Value)を求める。
 ③媒体計画における制約条件
 ・契約中おTVや雑誌などはそのまま採用する。
 ・広告主の伝統は採用する
 ・広告出稿量の最高/最低限度を守る
 ・料金の割引条件の考慮
 ・事情にかなった表現上の制約条件の設定
 ・特殊媒体の必要性
 ・マーチャンダイジング
 ④センシティビティ分析
 ⑤REU Valueと制約条件は主観的なものであるため,そのウェイトを変化させると,アウトプットに反応 が現れる。
LPⅡはLPⅠを改良したもので,目標志向的なモデルである。LPⅠの利点は,データや,アルゴリズムが比較的単純なので,低コストで媒体計画が立てられるということであり,このモデルの欠点は重複や累積が組み込まれていないこと,アウトプットは,メディア・スケジュールの形では出てこないということである。LPⅡは上記の欠点を保管する目的で開発された。

2 AD-ME-SIM モデム
これは、J.Walter Thompson Co.とDennis H.Genschが開発したもので3つのステップからなる。
1)オーディエンス・データの作成:オーディエンスの人口統計的諸特性とそれに対応した閲読,視聴傾向といったオーディエンス・データの把握をする。
2)オーディエンスのウェイトづけ:オーディエンスのうちターゲット・オーディエンスであるかどうかを把握して,ウェイトづけをする。
3)媒体評価:4つのインプットデータの統合をする。
 ①銘柄媒体のウェイト②広告のタイム,カラー,スペースのウェイト③頻度分布のウェイト④選択した銘  柄媒体の割引料金
次の5つの代替案をアウトプットする。 
 ①媒体スケジュールによる銘柄媒体の到達②銘柄媒体の頻度③コマーシャルの到達④コマーシャル  の頻度⑤インパクト・ユニット
3 MEDIACモデル
4 広告の媒体計画をコンピュータによるオンラインシステムで処理しようとするものである。この利用者は希望する広告のリスト,予算,それに媒体と訴求対象についての諸々の客観データおよび主観データを用意すると,市場反応を最大にするメディア・ミックスとキャンペーン期間の媒体計画表を入手することができる。MEDIACモデル展開のステップを述べると,ある想定される媒体選択計画から計算を始める。そして,次々とその中で一番低い媒体価値のものと比較しながら入れ替え作業を行う。これは予算の範囲内で投下資本当たりの反応の大きい媒体戦略を見つけていく方法である。

第9章 広告表現戦略と広告制作プロセス
 広告表現は広告を製作することで,広告主の意図を全て集約し伝えるので,広告媒体と共に重要な柱である。そして,表現戦略にあたってまず,作成しなければならないのが,コピー・プラットホームである。
商品の特質と利便,広告のポジショニングとコピーフォーマットに至るまでの広告表現戦略における必要事項を一覧表にする。
1 プロダクトプロトファイル
 1)目的 2)商品情報 3)購入状況 4)プロダクト・ヒストリー
2 消費者情報
 1)人口統計的情報 2)サイコグラフィックス 3)消費者特性
3 コピー・プラットホーム
 1)広告に関する問題 2)商品差別化特性 3)見込み客 4)競争他社 5)商品の利便性と訴求ポイン ト 6)広告目標 7)商品ポジショニング 8)表現戦略
コピー・プラットホームのフォーマットは企業によって異なっている。また,この中で企業のスローガンや考え方に対して相反する言葉を用いてはならない。この中には,消費者情報も記入する。それは,企業の生存に関わる最重要要因であるので,十分なスペースを確保する。市場分析・消費者分析・消費者への考慮条件の面から記入する。消費者のニーズに的確に反応しなければならない。次に,外部環境情報を把握すべきである。特に法律関係として法規,倫理などからコピーを書くための注意点をチェックする。商品と社会・文化の関わりを考えておく事は必要である。経済情報はマーケティングや広告活動に最も影響を与える。今日の経済環境をよく見極めて,広告制作が出来れば,内需拡大にも大きく貢献する事が出来る。次に,商品のポジショニングをすることが重要で,生活者とのポジショニング,競争市場におけるポジショニング,社会におけるポジショニングがある。その目的は,生活者と共感し合えるように,商品を個性化することにある。特に,競争市場におけるポジショニングは広告商品のマーケットシェアが業界でどのあたりに位置付けられているかを把握することであり,競争市場におけるポジショニングは大気汚染や水質汚染,騒音,悪臭など社会に迷惑をかけていないかを明らかにする。ポジショニングが終わると,いよいよコピーアプローチ段階に入る。
 
第2節 印刷広告の表現
1 広告コピーの構成要素
 見出しは本文の内容を集約的に表現する比較的大きな活字で組まれた短い語句である。その目的は,①興味を抱かせる②本文の閲読を促す③見込み客の拾い上げ④本文を読まない人に対しても短いメッセージを送るなどが挙げられる。本文は広告コピーのなかで,主張内容をもっとも詳細に表現したものである,広告主のイメージを創成する機能もある。シグは広告主を明示した部分であり,トレードマーク(商標とも言われる)・ロゴ・住所・電話番号などがそれにあたる。
2 印刷広告の製作手順
 広告アプローチとフォーマットが決定すると,まず表現アイディアをラフ・スケッチの形で視覚化する。これを広告主に提示し,承認されたものが製版され印刷される。
第3節 放送広告の表現
1 ラジオCMの製作
 この場合は,表現アイディアをまとめて元原稿をまず書く。次にタレントやスタジオの選定,音楽の手配をしてラジオスクリプトを基に録音・編集する。
2 テレビCMの製作
 テレビCMを製作する際はまず,広告主がマーケティングポリシーや広告ポリシーを決定し,広告会社側との企画会議で,それについてのオリエンテーションを行う。広告主は広告会社によってプレゼンテーションされたストーリーボードや絵コンテの代替案の中からひとつを選び,製作依頼をする。広告会社または製作会社のプロデューサーは製作の総責任者であり,スタッフ・タレントの決定,制作費予算の見積もりをする。
出典:清水公一(2004),『広告の理論と戦略』,創成社,195-278ページ。

投稿者 02tsukazaki : 2005年05月04日 21:50

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