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2005年05月21日

媒体計画についての研究(広瀬 2002)

 この論文は媒体計画を過去の論文から検索し,各媒体の研究テーマにおける媒体の系譜を記している。また,今までの研究を振り返って今後議論の余地があるテーマについても書かれている。

1 媒体計画の基礎理論についての研究
2 媒体特性についての研究
3 媒体選択についての研究
4 研究の傾向

1 媒体計画の基礎理論についての研究
 媒体計画の基礎理論は媒体スケジュールと媒体効果の理論拡張の研究に分けることが出来ると記されている。前者において媒体目標の効果測定に焦点をあてた研究は,「複数の広告媒体を用いた場合においてのモデル適用度の変化の検証」(36ページ)などが記されている。後者の理論拡張は「情報源効果の枠組みから広告メッセージと媒体イメージとの関係に焦点を当てている」(37ページ)研究が挙げられている。媒体の効果にあわせて広告目標は変わり,それは単純な媒体接触だけでは判断出来ないので「媒体接触と広告効果の関係には,まだ多くの課題が残されている」(37ページ)としている。

2 媒体特性についての研究
 この分野の研究はテレビ,新聞,ラジオ,交通広告,その他の媒体に分けることが出来る。さらにテレビは「一般的な広告媒体としての特性を探ったものと,社会学的な視点から見たテレビの特性についての研究とに大別できる」(37ページ)としており,前者には「テレビCMの提示方法の違いについて考慮した研究」(37ページ),「テレビ番組のイメージとCMとの関係」(37ページ)「CMの秒数と再生率との関係に焦点を当てた研究」(37ページ)があると記している。後者の社会学的な視点からは,沖縄にCATVが導入された時における地域社会への影響を記している。新聞についての研究は注目率を取り上げたものが最も多く,ラジオについての研究は他の媒体との相互作用や比較ついての研究が多いと記している。交通広告の研究で初期は「国鉄時代に車内広告の特性や課題について」(37ページ),最近では「スペース要因が注目率に強い影響を与えていることなど,様々な媒体特性が明らかにされている」(37ページ)があると記されている。その他の媒体研究はインターネットについてのものがほとんどである。媒体特性の研究は物理的な要因に焦点を当てたものが多く,ある特定の媒体が注目されると,その媒体の研究がまとまって行われるが,系統が行われているわけではないとしている。「消費者の心理的な要因を考慮すれば,既存の媒体についても研究の余地が残されている」(38ページ)

3 媒体選択についての研究
 この分野の研究は「メディア・ミックスの枠組みについての研究,複数の媒体を選択することによる広告効果の違いについて論じたもの,特定の広告目標に対して効率的に予算を配分する方法について探った研究」(38ページ)などに分けることが出来ると記している。媒体選択についての研究は複数の媒体別のデータ収集が難しいとされているが「自社や関連会社のデータを用いた研究が多く,興味深い成果が見られる」(38ページ)としている。

4 研究の傾向
 媒体研究に関する研究を年代別で見ると,70年代は媒体選択,80年代は媒体計画の基礎理論,90年代は媒体特性についての研究が各年代ごとに多く見られる。しかしこれは,研究の動向にすぎず,参考文献をレビューして媒体研究の系譜をまとめようとしてもほとんど出来ないとしている。また,米国の研究動向を反映させた研究,マス媒体(研究成果が公開されていないだけかもと記す),既存理論のニューメディアへの応用研究が少ないので,今後研究の余地があると記している。
 最近のインターネットに代表されるようにニューメディアは次々と生まれているが,既存媒体の議論は十分には行われていない。媒体計画についての研究は机上の理論と現実とのギャップを埋めることが極めて困難であり,理論的な背景の有無で全く意味が違ってくるとしている。すなわち「蓄積された理論と実践のギャップを埋め,効果的な媒体計画を考えるためには,これまで以上に産学共同の研究が必要となるだろう」(39ページ)ことが指摘されている。

出典:広瀬盛一(2002),「媒体計画についての研究」『日経広告研究所報』,36(3),36-39ページ。

投稿者 : 2005年05月21日 17:57

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コメント

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投稿者 tsukazaki : 2005年05月21日 21:50

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