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2005年05月20日

広告倫理についての研究(疋田 2002)

 広告倫理に関する広告は,広告の社会的責任,広告規制,広告表示,公共広告等,その対象や研究は多岐にわたる。だが実際には広告倫理を研究している論文を検索してみると,数%にとどまり,数字の上では無視しえるテーマとなってしまうものの,この論文では「系譜」という視点からは興味深い論点がある広告倫理に焦点をあてている。

1)広告倫理研究が少ない理由
2)九十七年以降に研究・論文が集中している理由
3)広告倫理研究の課題について
4)広告の本質研究についての系譜

1.広告倫理研究が少ない理由
 広告倫理をテーマとしている研究の論文の数は 2000年1月時点で0.3%にとどまり無視しえるようなテーマであるが,テーマに含まれる意義や重要性といった点からいえばかなり重みがあり,重要なテーマでありながら研究が少ないといえる。この少ない論文の多くは1997年以降に集中しており,その理由として水野由多加は「我が国では商品・サービスの購入予定者に対して『虚偽,誘導,不公正』にあたる広告物に関する自主規制を含めた規制の研究や昨今では人権に配慮した表現製作が職業倫理として自覚されることなどに関心が焦点付けられる。そのことの重要性はもちろんであるが,一方商品・サービスを購買予定しないにもかかわらず広告に広く接する人々への悪影響に関する広告倫理が忘れられているのではないだろうか」(39ページ)と指摘しており,一方で現在は広告規制や広告の法規というテーマが多く扱われ広告倫理が隠されているとも述べられている。

2.九十七年以降に研究・論文が集中している理由
 広告倫理の研究についての論文が九十七年に集中している理由として「近年ではまた再びサブリミナル(潜在意識への訴求を目的とする)広告への関心が急激に高まっており,そうした倫理的な問題点の存在をこれまで指摘されてきていた特定の広告のみならず,広告全般について本格的な論及と検討がなされるべき時期に今や到達している」(39ページ)としている。またIT技術の進歩により情報発信者と受信者の区別ができなくなってきており情報をめぐる人々の守るべきルールも今日の広告倫理への関心を高める要因となっているとの指摘もある。ただ集中的に論文が発表されたといっても,その数は六本と少なく広告倫理についての研究はまだまだこれからであるといえる。

3.広告倫理研究の課題について
 広告倫理の研究には「広告活動は企業の経営,マーケティング活動の一環として行われている状況に鑑み,企業の経営活動倫理という視点から把握してゆこうという立場」(39ページ)が現在主流になっており,現実への適用を重視したものとなっている。検討すべき問題として,ある広告を倫理的であるかをどう判断するか,非倫理的な広告が判別されてもその広告が社会に与える影響を明確にできるか,非倫理的広告が明確になり悪影響であると判断されてもそれが排除可能かどうかの3つが挙げられる。より広い視点からの広告論理の検討が必要で法的視点だけでない視点,発信者からだけでないとらえかた,広告と報道とは全くの別物かという課題が指摘されている。これらの諸研究で挙げられている課題,および調査データは相互に関わり合いをもち広告倫理の研究領域もふまえているようにみえる。だがそのことが広告倫理を研究の対象にすることをなくしてしまい研究の厚みを増すことも困難にしているといえる。

4.広告の本質研究についての系譜
 九十七年以降,広告倫理についての研究には系譜らしきものがみえるが,それ以前の研究とつながりがあるのかといえば,一見みられないようにみえるが,九十七年以降の研究で,主張されたものの中には広告は資本主義経済の中でわかれる生産者と消費者をつなげるものであり無機質な生産方法が行われることで広告もまた悪徳的なものになりやすく,広告の倫理化運動の対策としては決定的なものはなく洗練された生産関係の確立がなければならないというものや広告は表現的に勧告や助言の形をとり,その背後に正義がなければならない。利益を得るために行うのではなく,「全社会の福祉と厚生の増進のために用いられるべき本質と使命を有している」(41ページ)と結論づけられており両者の主張は研究者当人は意識していなくとも,考察方法や焦点が過去の研究者と似ており,九十七年以降とのつながりを指摘することができるといえる。

出典:疋田聡(2002),「広告倫理についての研究」『日経広告研究所報』,36(2),38-41ページ。

投稿者 02taku : 2005年05月20日 17:45

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コメント

「,」を「,←全角」に直してください!!
引用部分で「~~。」みたいに閉じカッコの中の句点はいらないから外してね!

投稿者 tsukazaki : 2005年05月20日 23:58

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