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2005年05月19日

流通国際化と海外の小売業(岩下 1997)

目次
 第1章 マーケティングの国際展開(曽我信孝)
 第2章 流通の国際化と流通政策(坂本秀夫)

 第1章 マーケティングの国際展開 曽我信孝
 この章では,1980年代後半から始まる日本企業の国際展開について書かれている。日本企業多国籍化の要因は,EUやNAFTAなどのブロック経済化による現地法人設立の必要性と,低い生産価格を求めた発展途上国への進出などがあげられる。次に,国際マーケティングの展開ということで,価格政策の重要性が述べられている。国際価格設定における主要な要因として,為替レートの変動やとダンピング提訴があり,それらの解決のためには,日々の為替相場を綿密に分析し,価格修正することが大切であるとしている。続いて生産のグローバル化ということで,国際市場支配のための生産の国際化要因を3つに分類している。まず第1に,大規模市場の競争の激化による現地生産,第2に価格の国際競争力を前提としたマーケティング政策として生産国際化,最後に国際分業を前提とした生産の国際化がある。国際分業を前提とした生産の国際化には,安価な生産価格と国際的に多様化するニーズに対応するための製品ラインの拡大戦略などが含まれる。さらに国際的ニーズは,現地特有の規格や文化に影響を強く受けるため,製品政策の現地化が必要であり,その方法として研究機能の現地化があげられている。最後に国際販売チャネル政策について述べられており,主なものとして,輸出先の国で構築されたチャネルの強化や,販売会社の設立,現地販売会社の買収,海外販売会社との提携などがあげられている。
 第2章 流通の国際化と流通政策 坂本秀夫 
 この章では,流通の国際化が進展している状況のなかで,流通国際化に関する実態面と政策状況を分析し,その上で国際的視点からの新たな流通政策を提示している。
流通の国際化を大手小売企業の国際化を中心に,商品調達・輸入,海外出店,海外流通業の日本進出,日本と欧米の流通業の関係・交流と4つの側面に分けて分実態的に分析がなされている。
次に,流通政策が国際化に対してどう対処すべきかを既存の研究を分類,整理することによって,新たな道筋を見出そうとしている。まず流通政策は大きく「市場原理重視型流通政策」,「社会政策組込型流通政策」,「街づくり視点重視型流通政策」の3つに分類される。この中で,国際流通政策を流通政策に組み込んでいたのは,②の保田芳昭氏の所説のみであると述べられており,この国際流通政策を発展させることが重要であり今後の課題でもあると述べられている。
続いて,国際流通政策と切り離せない問題として,規制緩和の問題があげられている。規制緩和の本来の目的は,①国民生活の向上,②産業構造の転換,③国際的調和にあるという前提を把握した上で,従来より政府が実施してきた流通政策(市場開放政策,輸入促進政策など)の動向を分析,把握している。さらにより重要な問題として,貿易黒字を解消するためにのみ行われる規制緩和,大店法の規制緩和等を批判し,国際流通政策のあるべき姿として,「①国内の流通諸矛盾をを海外に移転させてはならないこと,②海外小売業の日本進出を容易化する,政策的な環境整備を行うこと,③輸出依存体質を是正する環境整備を行うこと」(53ページ)の3つを提唱し,結論としている。

出典:曽我信孝(1997)「マーケティングの国際展開」『流通国際化と海外の小売業』出版社,3-21ページ。
坂本秀夫(1997)「流通の国際化と流通政策」『流通国際化と海外の小売業』出版社,27-52ページ。

投稿者 02kayasi : 2005年05月19日 23:44

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コメント

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投稿者 02daigo : 2005年05月20日 18:00

出典の字が間違ってますよ。

投稿者 Baba : 2005年05月20日 21:18

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