« 東京都市圏小売システムの発展における主要傾向(田村 2002) | メイン | アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定の理論(D.A.アーカー,J.G.マイヤーズ 1977) »

2005年05月11日

アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定の理論(D.A.アーカー,J.G.マイヤーズ 1977)

12章 表現戦略とクリエイティブ・スタイル
13章 クリエイティブ予算設定とコピー調査
 

12章 表現戦略とクリエイティブ・スタイル
  この章では,特定の広告表現の開発に関わる意思決定に着目し,表現戦略とクリエイティビリティとの関係について述べられている。広告戦略では,さまざまな表現代替案の様式を作り出し,洗練するときに適切に設定された目的がいかに重要な役割を果たすかが明らかにされる。広告の目的・表現戦略の重点は,①銘柄知名度を上げ,試用購買を促進する。②既成の銘柄の場合には,競争品の間でその銘柄を際立たせることが出来るような商品の特徴を強調したり,顧客を引き止め,引き続き使用を続けさせることに大別される。
広告目的は,代替案の無限の集合を,適度に小さな集合へ縮小することが出来,同時に,その部分集合内から新しい代替案を示唆する際にも役に立つ。(475ページ)操作的には,広告のストーリーがどのように展開し,基本的なアイディアがどう組み込まれ,どう提示されるかを厳密に記述したコピー・プラットフォームの開発が第一ステップとなる。製品特徴をどのような特定の形で際立たせたらよいかを記述するのである。(475ページ)
 メッセージを提示するためにスポークスマンやパーソナリティを用いる場合は,情報源の①信頼性、②魅力,③力などを考慮にいれる。①はスポークスマンがどの程度専門家とみなされるか,信じられるか,不公平でないか,によって得られる。例えば,医者は医薬品を勧めるためにはうってつけである。②は,受け手が情報源をどの程度自分と同一視し愛好するかに関わる概念である。③は,送り手が正ないし負の制裁をどの程度与えうるかということである。
 メッセージの設計に当たっては,注意を情報源自体(エトス),情動とムード設定(パトス),推理と論理(ロゴス)のどれに集中してもよい。(527ページ)
 広告主は論議の一面だけを示すべきか,二面的に議論すべきなのか?一般に,教育程度の低い人や製品に対し好意を抱いている人には一方的なメッセージが,教育程度の高い人や,製品に対しまだ好意を抱いていない人には譲歩を含んだメッセージが効果的である。(485ページ)ユーモア訴求は,気晴らしになり,対抗議論を妨害できるので有効である。恐怖訴求は,生み出された恐怖が受け手に動機付けを与えるほど十分大きく,かつ回避や敵意をもたらす程強すぎない時に有効である。
 クリエイティブ・スタイルという概念は,あるクリエイティブ・グループ,個人,代理店によってとられるアプローチの本質的性質をさす。それはある程度までは,特定の製品ないし市場特性に作用される。(514ページ)
 クリエイティビリティの心臓部を成すものとしてアイデアの算出が挙げられるが(515ページ),一般的に数百の可能なアイデアが創出されてはじめていくつかの理にかなった代替案が作成される。広告表現の製作にはクリエイティブ・アイデアが印刷,電波など最終的な広告として開発されていく過程が含まれる。その際,よいレイアウトを作るために,写真,トレードマーク,ヘッドライン,コピー,など基礎的要素や広告サイズの考慮が必要になる。
 テレビコマーシャルの製作の第一段階は,一連の小スケッチに,アクションの記述と,語りや歌の言葉がつけられた「ストーリーボード」の開発である。それが承認されると,製作スタジオで最終的なコマーシャルが製作される。(528ページ)

13章 クリエイティブ予算設定とコピー調査
  この章では,クリエイティブ努力に関連した予算意思決定(533ページ)について主に述べられている。
 ひとつのクリエイティブ・キャンペーンの開発に要するコストは,人件費,資材費,間接費など,個々の広告の製造に関わる支出(532ページ)と,いくつかの代替案の選択にコピー・テストが使用されている場合には(533ページ)、その費用が含まれている。Grossモデルは,クリエイティブ予算の規模を決めるための,厳密で,分析的なアプローチを提供している。このモデルで重要な鍵となる仮説は,全てのクリエイティブ努力がどれも同程度の効果をもたらすことは不可能であるということ,さらに,ある特定のキャンペーン目的と,この意思決定に基づく危険性に応じて最もふさわしいコピー・テスト法を選択する事が可能であると示唆している。キャンペーン代替案の増加につれて,製作及びテスト.コストが増大する(534ページ)。しかし,同時に高い収益を生むキャンペーン発見の機会もまた増大する。Grossモデルは,広告キャンペーンの代替案がいくつ作られるべきかという問いに答えようとしているのである。
 広告キャンペーンの効果は,コピー・テストの質(その妥当性と信頼性)によっても決定される(545ページ)。重要な3つの要素として
①操作的な目的がなければならない。
②テストされる被験者は、訴求対象母集団を代表するものでなければならない。
②結果のバイアスをもたらすようなテスト状況に対する被験者の反応を最小化しなければならない。が挙げられるが,問題もあり,①の場合はその目的を代表されるような,測定可能でかつ有用な変数が存在しなければならない。しかし目的を開発することは決して簡単な課業ではない(547ページ-566ページより)②の場合は,理想的には,被験者はランダムに選ばれ,標本サイズも,統計的にも信頼される結果をもたらす大きさをもっていなければならない。しかし,実際にはランダム標本をとることが経済的に不可能なことが多い。また,回答者を集めにくいことからくるバイアスが,大きな問題となるテストもある。③の場合は,テスト環境や測定機器に対する回答者の反応である。回答者は,テストされる状況になると,普段とは異なる行動を取る傾向がある(547ページ)。
コピー・テストとは,基本的には何らかの形で,広告を回答者に露出し,その反応を測定する事に係わるものである。反応測度は,例えば注意,理解,態度変容あるいは購買といった種々の構成概念を代表する。その目的は,広告のどの部分が最も注意をひき,容易に記憶され,感情変化を引き起こすかを決めることである(555ページ)。コピー・テストは,実験室環境を用いて行われるもの,シュミレートされた自然な環境を使用するもの,全く自然な市場テストを使用するものに分けられる。「主観的な」状態を測定することのできる「客観的な」反応記録機器には,アイ・カメラ,ポリグラフ,瞳孔反射計,タキストスコープなどがある。
コピー・テスト方法や広告調査方法を概観すると,あらゆる状況に適応した普遍的な方法や測度変数はありえないという結論にいたる。しかし,目的を明確にしておかなければ,悪いコピー・テスト結果が出たとしても,それが戦略のまずさに由来するのか,あるいは実践のまずさによるものなのかを判断する事が出来ない(563ページ)。戦略的な問題点は,まず戦略的な調査を通じて答えられるべきであり,その後初めて,戦略実践のインパクトを評価するためにコピー・テストが役に立つのである。

出典 D.A.アーカー,J.G.マイヤーズ著;野中郁次郎,池上久訳(1977)『アドバタイジング・マネジメント:広告意思決定理論』,東洋経済新報社,12-13章(462-571ページ).

投稿者 02tsukazaki : 2005年05月11日 21:39

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~t020026/blog/mt-tb.cgi/35

コメント

コメントしてください




保存しますか?


 
Copyright© 2005-2006 Baba Seminar. All rights reserved.