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2005年04月26日

日系百貨店の台湾進出―その成功要因と小売技術移転―(陳 2002)

要約
 
 この論文は,日本の百貨店の台湾市場への参入とその成功要因を明らかにしている。ここでは日台の百貨店の変遷について述べた後,日本の百貨店と台湾の日系百貨店の経営における特徴を比較している。両者の比較により,日系百貨店は品揃えや仕入れ方法においては現地適応化を行い,接客を含めたサービスや,POSシステムを導入するなどの情報システムにおいては標準化を行っていたことが明らかにされている。その後,日系百貨店の成功を目の当たりにした現地百貨店が,POSシステムの導入や店舗の大型化,大規模駐車場の設置,サービス水準の向上などの点で,日系百貨店の手法を模倣している状況にあることを述べている。そして,日系百貨店の成功要因は「よきパートナー選択と立地選択,テナント確保と管理,質の高いサービスへのニーズの高まり」(16-17ページ)にあるとしている。

ケーススタディの結果、次のことが述べられている。台湾における日系百貨店(太平洋崇光、新光三越、大立伊勢丹、大葉高島屋、廣三そごう、漢神百貨店の6社)は品揃えにおいては「現地百貨店の平均的品揃えによく似ている」(11ページ)とあるように現地適応化を行なっている。また,仕入方法についても,「百貨店は建物を提供して入居するテナントの選別・管理を行なうが,テナントがどのような商品をどのように販売するのかに関しては,一切感知しない」(11ページ)というように販売リスクを負わない現地方式を採用している。しかし,一方ではPOSシステムの導入や独自の販売員教育,「文化催事・商品の包装・友の会組織・設備の充実・買い物コンサルティング・無料駐車場」(12ページ)などの各種サービス,立地においては標準化を行い,外商については日本流を捨て去るというように,日系百貨店はすべて標準化して台湾市場に参入したのではなく,現地適応化を同時に実行したことが明らかになっている。

 論点は次の通りである。この論文では,日系百貨店の成功は現地適応化と標準化を行い、日本式システムの移転に成功したこと,台湾経済の発展によるものと述べられているが,日系百貨店の成功はこのような要因のみで説明し得るものなのだろうか。

 結論は次の通りである。「日本の百貨店は日本流経営方式・ノウハウを台湾での子会社に様々に工夫を重ねながら移転してきた」(16ページ)が,このことを可能にした背景には適切な合弁相手企業の選択により,「好立地の不動産や大型店舗用ビルの低コストでの利用が可能になった」(16ページ)ということ,また,仕入れ方法について現地適応化した結果,日本では負担となっていたコスト要因の大幅な削減にも成功したこと,そして台湾消費者の生活水準の上昇により,生活の豊かさや,ニーズにあったサービスを求める気運が高まっていたことがあると述べている。今後の課題としては,他国において同様の戦略が適応できるかということ,コンビ二エンス・ストア及び量販店の急速なシェア増加や高級感を打ち出したショッピング・センターの出店に対してどう対処するかということを指摘している。

出典:陳 玉燕(2002),「日系百貨店の台湾進出―その成功要因と小売技術移転―」『流通科学研究所モノグラフ』No.003。

投稿者 02takenaka : 2005年04月26日 16:15

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