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2005年04月26日

世界消費者とのコミュニケーション

目次
1.グローバル広告と文化
 1)言葉の壁
 2)その他の文化の壁 
2.グローバル広告を展開するための予算設定
 1)売上パーセンテージ
 2)競争的パリティ(competitive parity)
 3)目的と任務 
 4)資源分配
3.創造的戦略
 1)標準化vs適応化 
 2)標準化のメリット
①規模の経済性,②一貫したイメージ,③グローバル消費者セグメント,④相互利用
 3)標準化への障壁
①文化的差異,②広告規制,③市場の成熟,④NIHシンドローム 
 4)広告コピー作成のためのアプローチ
①標準化のプロトタイプ,②地域アプローチ
4.グローバルメディア決定
 1)メディア・インフラストラクチュア 
 2)メディアの限界
 3)グローバルメディアを背景とした最近の発展
5.広告規制・制限
 1)その内容及び現状 
 2)マーケターがとるべき対処法
6.広告代理店の選択 
7.国際広告の調整
 1)広告の報奨金 
 2)広告マニュアル 
 3)グローバルミーティングと汎地域ミーティング
8.その他のコミュニケーションの方法
 1)セールスプロモーション
 2)ダイレクトマーケティング 
 3)イベントスポンサー 
 4)トレードショウ
9.グローバルな統合的マーケティング・コミュニケーション

 インドでチョコレートの人気を高めるために,イギリスのチョコレートメーカーであるCadburyはインドの独立記念日である8月15日に合わせて広告を打った。その広告はインドの地図と共に“Too good to share”(分けるなんてもったいない!)と示した。パンパースブランドでおなじみのアメリカのおむつメーカーP&Gは,アメリカで放映したCMを日本語に翻訳し使用したが,そのコピーは日本人を困惑させた。日本人にはなぜコウノトリがおむつを運ぶのか理解できなかったし,欧米と違ってその鳥が赤ちゃんを運んでくるものだとは考えられていなかったからである。(そのかわりに大きな桃が川に流されながら赤ちゃんを運ぶ)

1では,広告が直面する文化差異について焦点をあてる。

1.グローバル広告と文化
 広告とは文化現象の延長である。先に述べたようなP&Gのように,その広告が地元文化に受け入れられなかったとき,その広告キャンペーンは失敗に終わる。しかし,ぴったりマッチした時は絶大な効果を発揮する。多くの場合,広告は言葉よって形成されるため,まずは言葉の壁について見ていきたい。
1)言葉の壁
 言葉とは国際的な広告主がまず初めに克服しなくてはならない障害である。
翻訳以外で有効なのは適切な解釈であり,国によって言葉,単語を変える場合もある。
翻訳のミスは大きくつあり,1つは単純な不注意,多義的な単語,熟語である。例えば,embarrassmentはスペインでは「妊婦」を意味したりする。同じ言葉を使ったつもりでも現地のスラングに対応できない場合もある。この解決策はどこにあるのだろう?…対処法にプロモーションキャンペーンに現地の広告代理店や翻訳家を用いることが挙げられる。
別の策に,単純に現地の言葉に翻訳してしまわない!というのもある。英語は世界中で使われているので,全てのマーケットに対して有効である。
2)それ以外の文化の壁
 サウジアラビアでは,女性がCMに出演する場合ベールを被らなければならないのでヘアケアのCMが役に立たない例や,キャノンが中国で台湾や香港を国として扱った広告を打った(これは中国人にとって無礼な行為に映った)例がそれである。

2.グローバル広告を展開するための予算設定
 次にお金の,いくら使うか?どの予算編成上のルールを使うか?異なる市場にどうやって資源分配を行うか?などの問題が浮上する。企業によって決められたそれぞれのルールある。以下4つ予算決定基準を挙げておく。
1)売上パーセンテージ
 企業が売上の何パーセントを広告費に充てるか?という問題であり,パーセンテージは過去および予想売上収入を基に算出する。
2)競合的パリティ(conmpetitive parity)
 その原則は非常にシンプルである。ベンチマークとして競合メーカーの広告消費額を使い,簡単にその競合相手の予算に合わす事ができる。このアプローチの理論的根拠は競合相手のまとまった考え方が最適な条件としての消費額として表れているはずであることである(負けないためには相手に合わせてしまうことも一理ある)。しかし広告学者によって模倣であると指摘されることもある。
3)目的やタスク
 目的とタスクはもまた重要なルールであり,このコンセプトは非常にわかりやすく,最初の手順としてゴールを決定し,次にその達成のための任務を決定することである。この方法にはしっかりとした費用と目的の関連の理解が必要である。
4)資源配分
 本社の求める資源を要求する。子会社のキャンペーンの貢献度に応じて資源を配分する例もある。

3.創造的戦略
1)標準化vs適応化
 マーケタ-が戦略を立てている際に直面する難題のひとつに広告テーマの決定がある。複数市場で同じ製品を販売する企業にとってどの程度,広告方法を標準化するのかしっかり決めることが必要である。標準化するということは,一つあるいはそれ以上のコミュニケーション・キャンペーンの要素を同じにすることである。
2)標準化のメリット
 標準化・適応化の問題は激しく物議をかもしてきた。標準化のメリットは大きいが,必要ならば微調整は現地の規則に応じるか,より現地の顧客に魅力ある広告を作成するべきである。
①規模の経済性
標準化が推奨される要因の一つに,規模の経済性があげられる。規一による単一のキャンペーンは人目をひくし,更にそれぞれ個々の市場に対して広告を打つのに比べると格段に安くあがる。またブランド認知度や同じポジショニングテーマなど一貫したイメージを植え付けることにも有効である。
②一貫したイメージ
同じ製品を複数市場でセールス展開する場合,一貫的なブランドイメージを構築する事は非常に大事である。それは旅行なども含め世界中を股にかけたグローバルな消費者に対して商品を売り込む際にも重要だ。
③グローバル消費者セグメント
「一つの地球」という考え方は,しばしばグローバル又は汎地域キャンペーンのメリットをもたらす。文化間をひとまとめにする考えは,エリートや若者という単位でくくる場合,見事に的中する。
④相互利用(cross-Fertilization)
多くの企業は地球規模であるという優位を使おうとする。マーケターは彼らの子会社に他の市場で成功したアイディアを適応させるように誘導する。一度成功したものが他の所でも応用できないか考えるのである。

3)標準化への障害
①文化差異
「一つの地球」といえども,文化の違いは存在する。それらはライフスタイルや利益,慣習などである。欧米と違い性の描写の広告がアジアでは避けられる傾向があり,同じ広告を用いていても,国によってブランデーの捉え方が違っていたりする例がある。
②広告規制
現地における法規制は標準化にとっての弊害となりうる。対アジアに統一のキャンペーンをしても,例えばマレーシアでは白人が登場するCMは規制の対象になる。
③市場の成熟度
マーケットの成熟度が違うとそれに応じて異なったアプローチが要求される。新規参入する場合には,まず現地の人々の懐疑心を取り払うこと,ブランド認知を構築すること,その商品の利便性を学習させることが必要である。
④Not Invented Hereシンドローム
現地の広告代理店は標準化を受け入れない場合がある。外からのものを受け入れるに当たって長い時間をかける必要がある。

4)広告コピー作成のためのアプローチ
 「自由放任主義」または「郷に行っては郷に従え」とでもいうべきか…全てのマーケットにはその現地に根付いたベストの方法があり,現地の市場に任せ本社が決定を下す必要がない場合がある。
①標準化のプロトタイプ
広告の指針はその実行に関係のある子会社に与えられるが,その指針(ガイドライン)は企業のウェブサイトやマニュアル,VCRテープなどを経由して本社から伝えられる。
②地域アプローチ
自由放任主義と中央本部の決定との間の妥協点を模索するアプローチの方法もある。

4.グローバルメディア決定
 その企業がビジネスを行おうとする国で広告のためのメディアを選択する事は大きな問題である。国によってはこちらの方が広告を製作するよりも重要なこともある。(日本の場合はこちらに当たる)
1)メディアのインフラストラクチュア
これの程度は国によって様々であり,国がマス・メディアのアクセスを規制している場合もある。ラジオ,テレビ,映画などのスタンダード・メディアは多くの国で確立しており,ケーブルやサテライト放送などのニューメディアも成長してきている。
2)メディアの限界
スタンダード・メディアがない国では,その国のマーケタ-は新たにそれに代わるものを創造しなければならない。例えばタイでは利用者への接近性とリーチに近いという点で,悪名高いバンコクの渋滞をメディアとして利用した。屋外の広告や交通情報のラジオ,トゥクトゥクなどもメディアになる。
3)グローバルメディアを背景とした最近の発展
メディアのコストも国によって様々であり,それらも考慮する必要がある。
 ・マス・メディアの自由化と商品化
 ・ラジオや紙からテレビ広告へのシフト;テレビは新たな方法を提供してくれる。テレビショッピングが好 例である。
 ・国際メディアや地域メディアの発達
 ・携帯電話で送るメッセージ
 ・メディア規制の進展

5.広告規制・制限
 ブラッド・ピットを用いた広告をマレーシア政府は取りしまった。欧米人の顔はアジアの人間に「我々の国の男はハンサムじゃない?」というコンプレックスを与えるからだ。また,宗教を背景とした規制も多く,広告主は外国市場の規制に戸惑う。
1)その内容及び現状
・有害製品や薬の広告;日本では薬やタバコ,酒類の広告ルールは厳格である。
・広告比較;競合相手の広告をけなすと問題になる場合がある,アメリカではありふれた光景であるが,中国では禁止されており,日本では慣習的にタブーとされている。
・広告メッセージの趣旨(中身);内容がグロテスクであったり,危険なものを連想させる場合,市場から徹退させられることがある。
・子供をターゲットにした広告;国によっては放送時間が制限されたり,両親の指導のもとという制約がついたりする。

2)マーケターが取るべき対処法;
これらの規制に対して,どのように対処するべきか??
・規制と未解決の法律を見守る
・キャンペーンを中止する
・運動団体の活動をする
・法廷で戦う
・マーケティングミックス戦略を適応させる

6.広告代理店の選択
 マーケターにとって選択の自由は多くある。
1)市場の適応範囲
2)品質
3)国際キャンペーンの専門的知識
4) 信頼の創造
5)サポートサービスの充実と範囲
6)グローバルvsローカル・・望ましいイメージ
7)代理店の規模
8)対立するアカウント:ここには2つのリスクがある 
①多くの内密な専売データを保持していること, 
②代理店がその優れた才能を競合相手に向けてしまう恐れ

7.国際広告の調整
1)広告の報奨金
小さな企業では広告の責任を現地に委任することがある。しかし多くの販売者と関わっていくうちに,広告の取り組み方が変化する事や広告コピーに一貫性がなくなってしまう可能性がある。そこでマーケターは金銭的な励みとなるものを販売者との調和と,その広告レベルを維持するために定める。
2)広告のマニュアル
冊子やビデオテープを通じて国際広告を本社から子会社へ指導することは一般的である。
3)グローバルミーティングと・汎地域ミーティング
国際広告を調整するために執り行うがそれらは非常に非公式である。国際広告に関わる全ての国の重役やキーパーソンが参加する

8.その他のコミュニケーションの方法
 多くの企業にとってメディア広告はその一部に過ぎない
ここではつの方法について言及する
1)セールスプロモーション;様々な奨励手段がある。例えば,初期参入段階ではサンプルやクーポン・ボーナスパックなどを用いて再購買(リピート)を促すべきである。
 ・文化理解;ある種のプロモーションは他国では全く効果がない場合がある
2)ダイレクトマーケティング;顧客と直接接する事が出来るので,one to oneの関係を築くことが出来る。ダイレクトメール,訪問販売,インターネット,カタログ販売などが含まれる。
3)スポンサー;国際的なスポーツ人気に後押しされて,多くの多国籍企業はマーケットシェア争いの際 の強みとして使っている
4)トレードショウ;B to Bマーケタ-にとって重要なツールである。直接的な影響と間接的なものがあ る。訪れた顧客がその企業の製品に興味を持つきっかけになる。

9.統合的なグローバルマーケティング・コミュニケーション(GIMC)
 最近の代理店とクライアントは国内だけでなく海外市場に対してもIMC(統合的マーケティング・コミュニケーション)の価値を認識している。IMCの目標はマス・メディア,スポンサー,販売促進,販売時点の展示などの様々なコミュニケーションのツールを調整することである。
5カ国のIMCの予算割合では,インドが15%,オーストラリアが22%,ニュージーランドが40%,イギリスが42%という結果になった。
GIMCは更に一歩進んだ所にある概念で,水平方向(国単位)・垂直方向(プロモーションツール)の両方からグローバルコミュニケーションを統合する役割を果たす。
広告代理店は国境を越えた様々なコミュニケーション方法を統合,調整しようとするであろう。GIMCをブランドの部分あるいは全体としても利用したい企業は,その上記の2つを調節する体系・システムを持つべきである。国を超えて広告代理店は各国のコミュニケーションを調節し,統合しなければならない。
出展:Kotabe Masaaki and Kristian Helsen (2004),“Communication with the World CONSUMER”,GLOBAL MARKETING MANAGEMENT

投稿者 02tsukazaki : 2005年04月26日 14:56

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コメント

誤字脱字(全角・半角も含め)や文献の出典書式などの不備があります。また,改行・階段に関して規則的ではなく,読みにくい箇所があるので改善してください。そして,自信のない訳語はそのまま英単語で書くのではなく「訳語(word)」の形式にしてください。
ちょっとおおざっぱすぎます。

投稿者 Baba : 2005年04月26日 21:54

パッと目に付くとこは修正しました。
もうちょっと修正するので、時間ください。

投稿者 tsukazaki : 2005年04月27日 15:55

n)の部分は数字+全角)に修正するように。また,重複したコメントも早々に削除してください。

投稿者 Baba : 2005年04月30日 10:30

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