各章内容
序言 マクドナルド化するワイン
経済のグローバル化の波はフランス地域主義の代表であるワインの世界にも影響を及ぼし始めた。マクドナルドやコカ・コーラに代表されるグローバル化と,ワインに代表される地域主義との対立の構図が描き出される。
第1章 ロバート・モンダヴィ,ナパ・バレーの先駆者
イタリアの移民から,カリフォルニア・ワインを代表する生産者となったロバート・モンダヴィの半生と,その成功要因について,本章で分析されている。
第2章 世界最大のブドウ園,ラングドック
ボルドー,ブルゴーニュに比べて知名度は劣るが,フランス南西部ラングドック地方は,世界最大のブドウ園である。本章は,このラングドック地方についての現状分析である。この地方の小村アニアンヌにモンダヴィが進出計画を発表した。
第3章 エメ・ギベール,古き良きフランス
アニアンヌにブドウ園を所有し,伝統的な手法でワインを生産するエメ・ギベール。彼こそが,モンダヴィの進出計画に反対する代表的人物となった。
第4章 モンダヴィのアニアンヌ上陸,困難だが将来性ある事業計画
モンダヴィは周到な調査の末,アニアンヌへの進出・事業計画を発表した。この計画が実現すれば,ワイン製造者から地方自治体に至るまで,この計画に関係する者すべてが勝者となるはずだった。
第5章 事件は熟成す
しかし,反グローバリゼーション運動家,環境保護主義者,共産党,農村移住者,狩猟家となど,モンダヴィのアニアンヌ進出計画に反対する勢力が台頭し始めた。
第6章 政治家の介入
ラングドック地方を代表する政治家で社会党のジェルジュ・フレッシュを筆頭に,右派,左派を問わず,この地方のほとんどの政治家が,モンダヴィの計画に賛成していた。しかし,2001年の地方議会選挙で,現職で計画推進派の社会党アンドレ・ルイズが敗れ,計画反対派の共産党マニュエル・デイアズがアニアンヌの町長に当選した。反対はディアズの当選は,モンダヴィの計画に決定的な打撃を与えた。
第7章 モンダヴィ事件その後:ジェラール・ドパルデューが村にやって来た
モンダヴィはアニアンヌ進出計画をついに断念した。その後,このワイン生産地に進出してきたのは俳優のジェラール・ドパルデューだった。
第8章 失敗の要因:文化の違い
モンダヴィの進出計画失敗の根底には,米国文化とフランスの文化の相違があった。
結論 地域共同体主義,フランス的例外
者トレスは,モンダヴィのフランス進出計画失敗を描いた本作の締めくくりとして,グローバル化の波に抵抗したフランス地域共同体主義について分析する。