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2005年04月26日

岐路に立つ電子小売業田村(2001)

要約
現在,ネット通販の潜在市場が大きく形成されてきている。この潜在市場を現実化するために必要な要因を,消費者調査から導き出す。それが,この論文の目的である。
従来,品揃えの広さ,商品の安さ,探索の容易さが店舗流通に対するネット通販の優位性と考えられていた。しかし,調査の結果,こうした要因は新規に顧客を獲得したり,反復利用者を増やす要因とはなっていないことが明らかにされた。また,身元情報の安全性や苦情処理体制といった信頼性が,反復利用を促す重要な要因となっている事も明らかにされた。
このことから,ネット通販で成功するには,ただ単に店舗をデジタル化すればいいだけではない。安全性,信頼性の問題を解決し,ネット通販の店舗流通に対する競争優位や,店舗デジタル化のもつ経営的な意味を再認識することが重要であることが示されている。

理論的検討は次のとおりである。情報機器,ソフトの低廉化により,インターネットの一般家庭への急速な普及が進んだ。この家庭の情報化に伴い,ネット通販の潜在的な市場が形成されている。
 この潜在市場を現実化するためには,インターネットの普及以外の条件が満たされる必要がある。その条件とは,より多くの消費者がネット通販を利用するようになるという事,そして利用した人がそれに満足し,反復的に利用するようになることである。
 ネット通販を利用したいと思う人は,ネット通販のどこに魅力を感じているのか。ネット通販を利用しない人は,ネット通販のどこに問題を感じているのか。ネット通販経験者のなかで継続して利用する人と利用をやめてしまう人に分かれてしまう要因は何か。以上のことが消費者調査を基に分析されている。

実証分析は以下の通りである。この論文では消費者が4つのタイプに分類されている。まず,ネット通販非経験者については,利用したいという意思を持つ人(獲得者)と持たない人(非利用滞留者)に区分がなされ,ネット通販経験者についても反復して利用を続けている人(反復利用者)と何らかの理由で利用をやめた人(離反者)に区分がなされている。
そして,ネット通販と店舗での買い物の比較において,消費者がどういったところに差を感じているかを分析し,ネット通販の競争優位についての調査が行われている。ネット通販での買い物における価格や製品選択幅,苦情処理などの質問項目について,店舗での買い物と比べ,全く違うから全く同じまでの5点尺度で回答してもらっている。
 そして,獲得者と非利用滞留者について,先程の質問項目の平均スコアに有意な相違があるかないかを分析。獲得者と非利用滞留者の意見の相違は,ネット通販非利用者を獲得者と非利用滞留者に振り分ける要因を示していると考えられる。さらに,反復利用者と離反者の平均スコアについても比較・検討することで,ネット通販利用者を反復利用者と離反者に振り分ける要因が明らかにされる。

結論は以下の通りである。従来,ネット通販企業はネット通販にかかわる消費者行動を考慮していなかった。情報技術を利用し,店舗をデジタル化すればネット通販事業で成功が約束されていると考えられていた。
しかし,従来言われていたネット通販の競争優位を信じ,情報技術を流通システムに応用するだけでは成功しない。消費者はネット通販に何を求めているかを把握し,さらには店舗流通に対してどのような競争優位を持っているのかを再認識する。それこそがネット通販事業において成功するために必要なことである。

この論文から得られる示唆は以下の通りである。この論文では,ネット通販において,新規獲得者を誘引する要因や,反復利用を促す要因が明らかにされている。しかし,これらの要因は店舗流通においてもできることを,IT技術によってより進歩させただけである。もっとネット通販が店舗流通に対して競争優位を持つためには,IT技術の潜在能力をはっきり認識し,消費者がネット通販に何を求めているかを認識する必要がある。


出典 田村正紀(2001),「岐路に立つ電子小売業」『流通科学研究所モノグラフ』No.001。

投稿者 02daigo : 2005年04月26日 01:25

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コメント

途中で終わっているようなので,アップし直してください。
また,文末は現在形で終わり,過剰な1行開けはしないように。

投稿者 Baba : 2005年04月26日 02:07

 
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