産学連携ワークショップ

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買物時間と購入確率の関連性と売場戦略 関西大学商学部商学科 データマイニングラボラトリ 安松谷高志さん

効率良い売場づくりの基準を求めて

皆さんは、これまでにスーパーマーケットで買い物をしたことがあると思いますが、実際に買い物をしていて、欲しい商品が直ぐに見つからず店内をうろうろした経験や、逆に欲しい商品を直ぐに手に取り、そのままレジまで直行した経験はないでしょうか?長い時間をかけて商品を購入していただくほうが売上増加につながるのか、それとも、短い滞在時間でも、長い場合と同等の売上金額を得ることができるのでしょうか?もしかすると、短い滞在時間の方が売上増加につながるかもしれませんね。

このような疑問を解決するために、私はRFIDデータと、顧客の購買履歴データの両方を利用して分析を行いました。RFIDデータは、利用が始まったばかりの最新のデータで、買い物カートにセンサーを取り付けることで、顧客の店舗内の巡回行動を位置情報として把握し、その情報をXY座標として蓄積したものです。それらのデータを利用して、買物時間と商品購入確率の観点から分析を進めていくうちに、各売場には、いくつかの特徴があることがわかりました。例えば、売場によっては、長く滞在させることで売上が増加する売場や、短い滞在時間でもある程度の売上が得られる売場などがあり、現実には、そのような売場の持つ特徴を考慮した売場作りを行う必要があります。しかし、これらの点は、実際の売場作りには、まだ反映できていないのが現状です。

産学連携ワークショップでは、これら分析方法の説明と、得られた結果を利用して、実際に顧客がある売場で滞在した時間と、その売場で理想とされる滞在時間との乖離から、本来もっと長く滞在してほしいのに実際には滞在されていない売場、短い滞在時間でよいのに実際には長く滞在されている売場など、改善すべき売場を明確にしました。そして、それらの売場を対象に、理想とする滞在時間に近づけるように売場の改善案を提案しました。

最新のRFIDデータを利用した分析は、ほとんど前例がなかったため、目的の設定から分析方法を適用するまで手探りで行うことが多かったですが、さまざま角度から分析を行うことで、最終的に売場の改善案といった施策までを提案することができました。

 

研究発表を終えて

今回はスーパーマーケットにある買い物カートに取り付けられた赤外線タグにより、何千人もの顧客の店内行動を把握する事ができました。今までブラックボックスとなっていた顧客の動きに焦点を当てる事で、お店の見えなかった問題点が浮かび上がってきます。素通りされている売場、購入確率の低い売り場など見つかった売場の問題を改善していくことで、より顧客の需要を喚起する売場にしていけるのではないでしょうか?消費低迷の昨今、価格戦略だけでなく「売場を創る」という事が重視されており、顧客動線を紐解いていく事で新たな売場戦略が生まれてきそうですね。

【DSI産学連携ワークショップ】

菱食株式会社 次世代事業推進本部の穐吉貴則本部長(株式会社シー・エム・シー社長兼任)、コロンビア大学教授 Rajeev Kohli教授をお招きし、マーケティングとデータマイニングの活用に関する講演をいただくと共に、出席頂いた企業様に対して、関西大学商学部 矢田研究室の学生が研究発表を行いました。

開催日:
2010年3月9日(火)
場所:
サピアタワー9階
主催:
関西大学DSIプログラム
共催:
株式会社シー・エム・シー
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