日々雑記


仏像修復

2023-9-1

色々あって、8月はお休みさせて頂きました。

昨日は仏像修復。
とはいえ、こちらはプチお手伝い。
丸頭の鉄釘(近代~)が効いておらず、しばし脱落の末、遂に留まらなくなった。応急修理である。

接合面を清掃のあと、剥離剤を塗布して接合(本格的修理には分離可能)。鉄釘は除去し、空いた孔には竹釘・・・。
気心知れた仏像修復者なので安心。一昨日は久しぶりに梅田で一献傾けていた・・・。

ふと、御堂の周囲を見ると厨子内に古い仏像。
流石に関西だと、妙に納得。

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収蔵品目録

2023-9-2

神戸市立中央図書館へ。『東京国立博物館収蔵品目録』(1952年)を閲覧。

今や『東京国立博物館図版目録』や『画像検索』など充実のサービスながら、東博資料の全貌を知るには隔靴掻痒の感。
大昔、何らかの関係で調べる必要があって東博資料館で閲覧したことがある。他大学か奈文研閲覧室か…と思っていると、神戸市立中央図書館。
タイトルは、東京国立博物館編『収蔵品目録 絵画・書跡・彫刻・建築』。新しいバージョンもあるが、こちらの収蔵先は僅少。

便利な時代になったものだとつくづく実感。

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仏像の梱包

2023-9-4

仏像を須弥壇から降ろすには一寸した工夫が必要なので、その立ち合いと若干のお手伝い。

無事に降ろして、次は梱包。
よく耳輪と頬の間に薄葉紙を入れる業者もあるが、個人的にはちょっと避けたい。
開梱する時にどこを触ればよいのか分からなくなってしまう。たまに事故った話を聞いたこともある。耳出し優先。
そりゃ、全てお任せ(保険有)で運送業者に丸投げする館もあるが、作品の取り扱いを知らずして展示は出来ない。だって学芸員でしょ。
業者にしてもアドバイスが欲しいでしょうし、重いのか、軽いのかで扱いも異なる。
あと、仏像の取り扱いは礼節をもつことも(せめて事前事後の礼拝は忘れずに)

無事に終了。夕刻、最後の仏像を運び出し、礼拝を終えて御寺を後に。

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免許更新

2023-9-5

久しぶりの免許更新で光明池へ。

数年前、高速入口で後部座席者のシートベルト不着用で捕まり、ゴールドからブルーへ変更。

「こちらの講義もこんなのかなぁ」と思うほど退屈。
自己診断シートも「遠距離で自動車を使うことは少ない」って、仕事で遠距離で走らざるをえない人もいるでしょ。
講習を聞きながら教本をみると、大八車の標識。
「〈自転車以外の軽車両通行止め〉自転車以外の軽車両(リヤカー・馬車・荷車等)のみ通行できない」。
馬車!!街中で見たことないわ!もう21世紀なんですが・・・。

1時間の講習を終え、ようやく免許証交付。

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岩波仏教辞典

2023-9-7

もう20年ですか・・・と素直に驚く。

前回、初めて執筆させて頂いたが、文章は短く、端的に表すのはなかなか難しい。
確認・修正のお話があったのはこの頃(2020-12-19 緊張と難渋)、コロナ禍以前。

岩波仏教辞典の良いところは、執筆者が冒頭一覧になって、一見すれば誰がどの項目を担当したのか分からない。
あくまでも辞書であり、執筆者を見てイレギュラーな個別案件についての電凸の心配はない。

前回より200項目以上を増補。案内をみると、新加項目の例として『仏像図彙』(土佐秀信)が掲げられているが、誰が担当したのだろうか。

11月21日発売。

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口頭試問

2023-9-9

80歳を過ぎた恩師が某大学(「授業外の学習」)で話をすると聞き、これは聞かねばと、恩師に聴講許可を乞い快諾後、すぐさま某大学の知己の先生に聴講をお願いすると、「来るんだったらちょっと喋ってよ。先生(恩師)からも依頼があったから・・・」と。

恩師とは、これまでいつも仏像調査現場での質疑応答。別大学であったため教室での講義を聞いたこともない。今回、是非とも拝聴したいと思っていたのだが、一転、口頭試問を受けるような塩梅に。
「ちょっと喋ってよ」どころか、恩師から「ハセさん、その推測は一寸難しいかも。」と指摘されれば、目も当てられない。

何はさておき“口頭試問”に受からなければ・・・。
資料・パワポを丁寧に作成。久々に緊張の面持ち。

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沖縄

2023-9-11

土曜日に大学図書館で雑誌を館外貸出。夜に返却しようと出向いたら既に閉館。翌日は休館。
というわけで朝から大学に出向き、そのまま関空。夏季休暇中なのでJTA005便で那覇。

相変わらずの暑さ、日差しも厳しい・・・。

ホテルにチェックイン後、旭橋にある県立図書館へ。
与儀公園の時はちょっと不便で、バスに乗ったり、壺屋やむちん通りを歩いたり・・・。
『沖縄のガラス・玉等製品関係資料調査報告書』を閲覧(明後日のため)。
どうも全県調査していないようである。残念。

おとなしくホテルで過ごす。

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会議

2023-9-12

朝から県立博物館・美術館で朝から今年第1回目の会議。

会議が少し遅れるというので、しばし新メンバーの沖縄県立芸術大学の学長氏とご挨拶&雑談。
気さくな方で正論をズバリ。一言一句、重みが感じられ、大いに好感。
ご専門は彫刻(木彫、塑造、乾漆)。ご出身は東京藝術大学大学院美術研究科。上手く協働できると確信。
会議は、再興作品の選定と人材養成について。もちろん東京藝術大学と沖縄県立芸術大学の連携。正しい選択。

夕刻、円覚寺最後の住人(円覚寺住職の子:現住職・美術家)のアトリエ・自邸(自坊)で与那原町へ。 遅まきながら円覚寺仁王像完成の祝宴。
関係者など、一堂に介してあれこれと夜遅くまで談笑に及ぶ。

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琉球勾玉

2023-9-13

旧友が琉球勾玉の件で来県すると聞き、那覇空港で合流。到着口で「宮●組 ○○様」ってプレート作っておけばよかった・・・。

そのまま彼が借りたレンタカーに同乗し、うるま市へ。途中、沖縄そばを食し時間調整のために「勝連城跡」へ。
以前来た時は「世界遺産」登録前だったので、適当に車を止めて見学したのだが、今は駐車場+ガイダンス施設も出来た。

面会。主役である旧友の会話をサポート。どうやらご挨拶と明日のスケジュール確認のようである。夕刻に辞して那覇へ戻る。

那覇到着後、いつもの居酒屋で一献。
これまであまり飲まなかった“泡盛”も。“カラカラ”を筆頭に泡盛一式が並ぶ。氷の入ったペールも鎮座するものの、どうやって飲んでいたのか思い出せない。
深夜近くまで痛飲。よもや那覇で旧友と飲むとは・・・。

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畑治郎右衛門

2023-9-15

気になる資料があって大学図書館。

廣瀬都巽「居函私考及香呂函・三衣筥」『考古学雑誌』第17巻11号(1927年11月)。
醍醐寺蔵「牡丹蒔絵居筥、香爐筥」の外箱に以下の墨書銘。
寛政四歳正月吉日
香呂筥 圓明院什物
居 筥
  大佛師畑治郎右衛門ヱ申附令作之
             佛子淳果記
寛政11年(1792)製の資料。
これ以前からそうだといえば、そうなのだが、仏師が工芸品(燭台など)も制作していたことに改めて驚き。

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飛鳥史学文学講座

2023-9-18

恒例の飛鳥史学文学講座の準備。

作製したパワーポイントが昨年に迫る90枚超え。
あれこれとレジュメと照合させていくうちにミス発見。
「享保4年(1719)」の下に「享保9年(1719)頃」。なんでやねん!
パワーポイントの修正は当日朝でも可能だが、レジュメについてはもうすぐ印刷段階。
大急ぎで計3ヵ所の訂正を乞う。

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曲玉買入禁止

2023-9-20

伊波普猷『古琉球』(29~31頁)に次の古文書が掲載。
   口上之覚
當島往古より女上下至迄かはら玉はき申候処至近年大和人宮古人右かはら玉過分持渡貳拾五づつ貳三石にて売取申候に付石物費罷成其上不考にて掛に請取代受払之時分差迫迷惑仕方も有之候 右之通にては永々相保申間敷與奉存候節御法度被仰付可被下候以上
頭貳人
首里大屋子三人
五月二十五日        與人十人
目差拾四人
右被申出候通相違無御座候間御法度被仰付可然と奉存候、尤當所にて申渡候得往古より用来儀に候得は難及候間奉得御差図候此上は宜敷御披露願上候以上
  月  日       宇江城親雲上
富盛親雲上様
池城親雲上様
此表書之通遂披露之節御法度被仰出候間向後相傳候様可被申渡置候以上
伊佐親雲上
八月十八日         富盛親方
八重山島在番
   宇江城親雲上
かはら玉(珈玻羅玉)とは曲玉(勾玉)のこと。
この古文書の発給時期は康煕32年(1693)。日本では元禄6年。
こんな時期、京都はもとより日本全国各地を探してみても、勾玉なんか造っていないのに・・・。

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授業開始

2023-9-21

今日から秋学期開始。

午後、一番北の校舎で授業、その後は一番南の校舎で授業、再び北の校舎で授業。
坂を上り下りする木曜日の午後。

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山形

2023-9-23~26

2年ぶりの山形。さっそく鶴岡市・善寶寺へ。

畑治郎右衛門や福嶋長蔵などは僅かながら経歴が知られるが、中村宗保(范宗保:四条烏丸東)をはじめ、全く素性が分からない。
畑が棟梁と考えて、知り合いの京都仏師に声を掛けたとも思えるが、その繋がりは如何に・・・。

本尊群前の風神雷神像。「これも修復?」と問うと「柱から外れないんです。」と。
羅漢像のいない”お立ち台”を眺めながら、副棟梁で彫刻担当の劔持嘉右衛門かとも。

文化7年(1810)に大岩川村(温海町)で生まれた劔持嘉右衛門は、16~25歳に江戸で宮大工のもとで修業した後、26~32歳には京都で仏師・畑治郎右衛門のもとで彫刻技術を習得している。その後帰郷し善宝寺工匠に。
恐らく五百羅漢像造立の話を聞いた時、「私の師匠で、京都で一、二を争う腕のたつ仏師がおります。こっち(出羽)でもよく知られています」と畑を紹介したのだろう。
久しぶりの山形駅前。既に十字屋は閉店し、今はホテルに変貌。

翌日もあれこれと他所で見学(調査)。
なんで、山形に畑の作品が集中しているのかよく理解できないでいる。かなり曹洞宗の寺院が多いが、既にこの時期(康敬の代)には「曹洞大仏師職」竹内右門は東北地方から撤退したのだろうか。
あるいは渡辺康雲のように「後は頼むわ~」と言われたのだろうか。

さて某大学(東北芸術工科大学)。まだ夏季休暇中(明日から秋学期)で学生もまばら。
いつもは文化財保存修復研究センターでの訪問だけに、校舎・教室に入るのは初めて。
仄聞していた「愛がたりない だからこの大学がある」の扁額も拝見。

学生に混じって恩師の講義を聴講。
メインの講義内容の前に2コマの講義。こちらも有益至極。普段、大学の授業で話していることについても深い内容。
メインの講義内容前の前座としてこちらのミニ講義。
下らぬ話をして久しぶりに怒られるとも限らない。
メイン講義の時間が惜しいのでさっさと終える。「面白いね(興味深かった)!」と恩師からお褒めの言葉。

今回のメイン講義。
至福・充実至極のひとこと。

聴講しながら昨夜の懇親会では、群像表現の統一性というのがキーワードながらそう簡単ではないことを理解。
過日来、他大学(複数)のグループから東大寺大仏殿四天王像の問い合わせがあったが、素地像の持国天頭部や増長天頭部にも確認できるのか、帰阪して再度確認してみたいと思ったり。

講義がすべて終了し、カーテンを開けると、朝日連峰をバックに広がる山形市の街並みと大学のシンボルである野外能楽堂。

知己である芸工大の卒業生とも久しぶりに再会、色々な想いを抱きながら帰阪の途に。

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見学会

2023-9-28

とある授業で、見学会(振替)を3回入れた。そのうちのひとつに「テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ」。
ただ、何の事前学習なしに見ても面白くない(事前学習なしに見て、感動や疑問をもって自分で調べてくれればよいが、それはまずあり得ない)。

そこで本来は振替休講となる曜限に事前学習(講義)を行うことにした。
東京展の出品リストを見ながら、講義は「ターナー」と「ハンマースホイ」。
授業でその旨を伝えたところ、反応芳しく、初回の見学会も事前学習(講義)を実施することに。

全授業終了後、さっそく準備に取り掛かる。

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灯台下暗し

2023-9-29

芸術の秋。

あちこちで既に仏像関係の展覧会が開催中。和泉市久保惣記念美術館でも既に「宗達展」が開催。
駅前の案内所などでポスターをみていたが、もう始まっていたとは。
団家本・藤井家本など「源氏物語」各図や西行物語絵巻断簡、東博の「龍樹菩薩像」(~10月15日)など、宗達を見る(考える)うえで必見の展覧会。

そろそろ、「だんじり祭り」も試験曳きなどが始まるので(住民はそっちが主)、ゆっくりと拝見しに行こうと思う。

なんだか、日々慌ただしいながら、少し充実した秋にしたいものである。

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