日々雑記


菱田春草展

2021-11-2~3

卒論指導のためにどうしても飯田市美術博物館「菱田春草-故郷につどう珠玉の名画-」見に行かねばならない。
意を決して飯田へ。

午後遅く飯田市美術博物館着。閉館近くまで作品見学。
《寡婦と孤児》をはじめ《微笑》《水鏡》《菊慈童》《王昭君》《賢首菩薩》などほぼ主要な作品を網羅した展示。

意外に思ったのが、まくりの状態であった「雨中美人」が屏風仕立てに改装。
右隻3扇の女性のみが着色途中。モデルは妻の千代。真夏に春草はあれこれを指示を出して素描を行ったが、あまりの暑さのために千代は脳貧血をおこして倒れてしまう。
「雨中美人」が製作途中で行き詰り、急遽「黒き猫」(重要文化財‼)を仕上げた。
《曙》は、明治34年(1904)にニューヨークで描かれた作品。ちょっと新鮮。

帰るのもおっくうになって、飯田で宿泊。
翌日は春草の生誕地(公園になっていた)をみて、帰阪。

左は春草通りの家へ借金の取り立てに向かうチンピラか?いやいや生誕地を見に行く大学のセンセ。

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知のナヴィゲーター

2021-11-4

授業再開。

初年次授業(必修科目)で「知のナヴィゲーター」という科目がある。
いわゆる大学版「読み・書き・そろばん」(現実は、「読む」「調べる」「書く」「発表する」)。

文学部各専修教員が担当するが、いつかの会議で専修教員数に応じたクラス配分が決定された。うちは3名で、その折に隔年担当になったと記憶。
他教員も来年度は”お休み”と思っていたところ、来年度も担当とのこと。

内容は専修に特化したものはご法度で、かつて担当した折には「レジ袋は無料とすべきか、有料とすべきか」の発表(中国からの留学生もおり、有料・無料の大激論となった)をさせた。結果的に、今ではコンビニで「袋、要りますか」と必ず問われる有様。

既に他の先生が初年次授業(必修科目)を担当しているので、急遽小生が「知ナヴィ」の担当に自己決定。

問題はどのクラスを選択しても金曜日・1限の固定授業。
春学期だけとはいえ、9:00に授業開始だと、6:00には起床しないと無理。

来年度の金曜日は早起きになりそう。

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見学会

2021-11-7

大学院の授業。
事情あって興福寺・東大寺見学会に変更。
シラバスでは近世仏像だが、受講生は日本の仏像に関心ある中国留学生1名。
留学時代のよき思い出となるようにと。

興福寺五重塔初層の仏像、国宝館、東大寺南大門、大仏殿のコース。授業の成果もあって各所で質疑応答。

興福寺五重塔の仏像(応永33年)は初めて見たが、誰による制作なのだろうか。彩色は『大乗院寺社雑事記』に南都絵所の吐田座と芝座が争ったことが記されているが。

二月堂大湯屋で休憩し、裏参道を回って大仏殿横に出て近鉄奈良駅で解散。

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聚楽第行幸図屏風、再見

2021-11-9

尼崎市立歴史博物館で会議。

会議終了後、第1回特別展「花開く江戸絵画-城下にぎわうころに-」を見学。
清原雪信の作品や犬追物屏風を見つつ、とある屏風に見る。「これ、どこかで見たことのある屏風や・・・」と細部を眺めていると、旧職蔵の屏風(「聚楽第行幸図屏風」)であることに気づく。
屏風装を改めて本紙を張り替えたために、本紙の端が不定形になっている。なんか、扱うのがちょっと怖いような・・・。

宇野千代子氏の論考では、六曲一双として制作された後、右隻が失われ、左隻の第1・4扇も失われ、第2・3隻と第5・6扇を現状の二曲一双にしたものと指摘している。修復は2018年度とのこと。
改めて、画面を見ると当時の思いが蘇ってきた・・・。

その後、大学へ向かう。

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ちょっと多忙

2021-11-10

現在、校務にて絶賛多忙中。

来年度の授業担任者・時間割編成に始まり、新規非常勤講師の履歴書・業績書提出依頼、カリキュラムマップの確認、学生面談などなど。
たぶんまだあるのだが、いくつかは忘れている・・・。

これに授業もあり、まったく勉強(研究)どころではない状態。

いつもこととはいえ、今年もたいへんな状況。

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忖度の美術史

2021-11-11

"近代絵画の父"と称されるポール・セザンヌ。

以前、入門書から専門書まで読んではみたものの、婉曲難解過ぎてよくわからない。キレ気味に「セザンヌ」はヘタであると考えると、これまで難解だったことがストンと落ちた。

今日の入門ゼミはこの話題から。
「絵がヘタなセザンヌ像」を隠蔽するため忖度して婉曲・難解な記述になったと。
第1回印象派展に出品した「モデルヌ・オランピア」(画像)だって、さすがの印象派仲間からも理解できずにいた。

ドガやシスレー、マネだって1回や2回はサロンに入選している。その上での印象派展である。
エコール・デ・ボザールで学ぼうとして父親にパリ行を認めさせるために描いた「春・夏・秋・冬の壁画」に「Ingres」とサインしたのも「(アングルに代表される)古典主義に対する皮肉を込めた作品」ではない。まだエコール・デ・ボザールにも入学していない(その後受験するも不合格)青二才が皮肉もなにもあったものではない。
印象派仲間からも不思議がられ、第3回印象派展以降は出品していない。

それでも描き続けたセザンヌは、画商アンブロワーズ・ヴォラールに見出され、56歳(1895年)で初の個展開催。ナビ派からも評価され、1898年は2回目の個展が開催。1906年には亡くなるが、1907年、サロン・ドートンヌの一部としてセザンヌの大回顧展が開かれ、今日の名声に繋がっていく。
諦めずに続けていけば、時代が追いつくこともあるのだろう。

ちょっと忖度しすぎじゃない、日本の西洋美術史は。

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焼継ぎ・金継ぎ

2021-11-12

夕刻、同僚の先生が来室。

雑談あって「センセ、金継ぎの話をされたんですか。学生から『その話はハセセンセから聞きました』と言われました。」と。
確かに文化財修復の内容で、陶磁器では金継ぎという方法があると話したことがある。念のため先生配布のレジュメを見ると、金継ぎの用語はあるものの、講義の方向が全く異なる。
「そんなん、阪急京都線と千里線が淡路で交差するのと同じで、まったく話の内容が違うじゃないですか」と。

雑談しながら、馬蝗絆から茶器の金継ぎまで話題が及ぶ。
そういえば、遺跡出土陶磁器の金継ぎはみたことがなく、ほぼすべて(鉛)ガラスによる焼継ぎ。

久しぶりの雑談で心和む。
写真は長野県小布施町「古陶磁コレクション了庵」の焼継ぎ。

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ネーミングが悪い

2021-11-15

東京の上娘からSoup Stock Tokyoから「アートから生まれたスープ」のフェルメール編、ゴッホ編が出たとのお知らせ。
ゴッホ編は「ゴッホの玉葱のスープ」だそうである。

むっ?激マズ・スープなのか?と返事。
また、なんで?と不審がる上娘。

ゴッホの悪癖。(1)料理が激マズ、(2)汚部屋、(3)金銭感覚ゼロ、(4)議論すると止まらない。

このうち激マズ料理については、Martin Bailey『Studio of the South: Van Gogh in Provence』にVan Gogh's soup, 'I don't know how he made the mixture – without doubt like the colours in his paintings.と記されている。ゴッホのスープは、何を入れたのか知らないが、間違いなく絵具を混ぜたようなシロモノであったと。

不審がっている父に対して画像が送られてくる。なんだか晩秋にふさわしい温まりそうなスープ。買ってみたらと再度返信。

ゴッホとの共同生活を始めたゴーギャン。掃除、料理、テオからの送金(生活費)の管理のほぼすべてを任され、ゴッホの話相手も承る羽目に。
ゴッホの「耳切り事件」の翌日、ゴーギャンはアルルを離れる。

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相談会

2021-11-16

昼休みに文学部専修分属相談会(専修別)。うちは参加者ゼロ。
安堵、安堵・・・。

希望専修の開講科目を受講し、何なら授業終了後も質疑応答や相談を受け付け、各教員はオフィスアワーも開いているのだから、何も特別に開くことはないのだが、今の学生は、こうした機会がないと不安であるらしい。
正直に言うと、学生の半分以上は指定校等の推薦入学なので一般入試の学生とは異なる(気概の問題)。

冷静に考えると、専門授業は2・3年の2年間しかない。4年次になれば、就活等の進路や卒論で忙しい。さっさと決めないことには後々支障もきたそう。
個人的には春学期終了後に分属してもよいほどである。

来週の水曜日にも開催とのこと。

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悪癖

2021-11-18

初年次生教育の悪癖。

相談会を開き、学生も専修分属(の希望)がほぼ固まってくると、今度は学びの扉、知パスなどの初年次生教育(必修科目)の授業を欠席しがちとなる。
特に秋学期は、“保険”みたいなところがあって、第1希望は春に履修、多くの学生が単位習得済となるので、万一、不可になっても希望専修に進むことができる。
入学時は、高校の時間割のような1時限から5時限まですき間なく履修し単位習得に熱心だが、秋の時点でそういう意識は希薄になりがち。

いっぽうで、当初希望した専修に疑問をもつ学生は熱心に受講しているので、分属希望専修の入力後も、学びの扉、知パスなどは予定終了とはならない。

分属というのは、面接会場の右側に座るか、左側に座るか、中央に座るかの違いぐらいに思っておけば、大丈夫である。(関大の学生は、習性でつい後ろのほうに座りがち)

就活に至っても文学部の「専修」に拘るのは愚の骨頂だと思うのだが。

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スーツ

2021-11-19

卒論ゼミで、卒業アルバムの写真を撮影するということで、久々にスーツ姿。

夕刻の大学院授業で、院生が「ど、どうしたんですか?」。
「いや、学部の卒業写真撮影で・・・」と。

普段はジーンズにジャンパー姿。教室に入るとジャンパーを脱ぎ、セーター姿で講義。
以前、朝に新今宮駅前で煙草をふかしていたら「にぃちゃん、仕事あるか?」と、手配師風の人物に声を掛けられたこともある・・・。

ちょっとは、世間様から「大学のセンセ」とみられるような服装をしないといけないのか・・・と思いつつ、授業進行。

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ご法度

2021-11-21

朝より推薦等の各種入試。面接(集団)担当。
当り前だが、政治・思想・宗教・信条等の質問はご法度。

ペアとなった面接官の先生が「将来について・・・」と質問された。
ところが、最初の受験生が大阪府知事の名前をあげながら、人を助けて、多くの人からも共感されるような人間になりたいと。えっ~!

集団面接なので、波及していくとマズい。
かつてプレスチューデントの自己紹介で、いつの間にか、ラーメンが好きかうどんが好きか、蕎麦が好きかと、自己紹介ならぬ好きな麺類対決になったことがあるので、こちらは回答をガン無視して、別の質問を投げかける。
そのほかは、つつがなく終了。

こっちがハラハラするような回答もご法度である。

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重要文化財の売却

2021-11-22

重要文化財 西脇家本「拾遺古徳伝 巻第八」がオークションにかけられ、2億4390万円で落札とのニュース。
報道だけではよく分からないが、所蔵者は事前に文化庁へ売却意向を伝えて不調に終り、オークションに出したのであろうか。

文化庁では、未指定であれ重要文化財であれ「文化財」を購入(買取)している。
こちらも何度か関わったことがあるが、価格折衝で不調に終われば、こういう流れになるのだろうか。

酒井家蔵「件大納言絵詞」(国宝)は、昭和57年度(1982)に32億円で出光美術館に売却されている。この時の真相は明らかではないが、噂では、事前に文化庁へ売却希望を伝えたが、“お話にならない”価格が提示され、出光美術館へ行ったとも。

最近では活用ということもあって、色々と国が買っている
文化庁をすっ飛ばしてオークションに出品するのはよろしくない傾向で、ちょっと心配。
悪しき前例にならないとよいが。

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もう12月

2021-11-25

朝、至急の書類を届けに某市へ。
間に合った・・・。

安堵しながら大阪まで戻り梅田に出ると、阪急のイルミネーション。
行き交う人のなかで立ち止まりながら見上げる。

なぜか、ずっと仕事が溜まている。色々なことがあり過ぎて、どれから処理していけばよいのかわからなくなる。泣きそうな気分。
ジングルベルならぬ最終周回のジャンは何時なるのだろうかと。

再び梅田駅に向かい大学へ。

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街角点描

2021-11-27・28

九州国立博物館「手わざ-琉球王国の文化-」展へ。

仁王像や破片などの木彫品を確認した後、絵画や染織、陶器などを見る。木彫品以外の作品を見るのは初めて。
「集積再興事業報告書」の分担執筆も締切が過ぎているにもかかわらず、他分野の作品に関心を寄せる。

その後、久しぶりに”街角点描”。
意外だったのは、”穴場的存在”の北九州・若松。
戸畑から渡船(約3分)にて若松。小学生の頃は、教科書の写真に載るぐらい「若戸大橋」は有名であったが、今はどうなっているのだろうか。
その後、観光地となった門司レトロ街。下関にわたり宿泊。翌日帰阪。
久しぶりの息抜き。

「GALLERY」建物点描(旧 街角点描)も久しぶりに更新。
山形3 山形4 山口2 福岡2 福岡3 福岡4

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