日々雑記


ゼミ旅行

2019-11-1~2

島根へゼミ旅行。久々の出雲。

松江に到着後、島根県立美術館。
島根県立美術館から見る宍道湖に沈む夕日は美しく、「日本の夕陽百選」にも選ばれている。
開館20周年記念「黄昏の絵画たち」展。

ところが、受付をしている間、ロビーから見える「うさぎ」に気づき、「ウサギ!」と俄然関心を引く。いきなり屋外彫刻。
籔内佐斗司《宍道湖うさぎ》(1999年)。
こんな作品も造るのかと、軽い驚き。
「黄昏の絵画たち」展、和洋合わせて9章219点の作品。
夕日の絵をいっぱい見たという印象。章立ても内容的にももう少し絞ったほうがよかったかもしれない。
再び松江から山陰線で出雲市、宿舎に着く頃は既に黄昏。

翌日は出雲大社と古代出雲歴史博物館。
引いたことはなかったが、出雲大社のおみくじは「吉」「凶」とか書かれていない。読みながら「これはいい事だろう」と推測するしかない。(「引越し」「仕事」などの項目はある)

神迎祭は11月6日。翌日から13日までが「神在祭」。十九社の前で「これが神様のウィークリーマンションです」と迷解説。神祜殿(宝物館)では心御柱が展示。

その後、古代出雲歴史博物館。この秋をもって改修工事のためしばらく休館。翌年1月からは東博での「出雲と大和」展で宇豆柱や加茂岩倉遺跡や荒神谷遺跡の銅製品が並ぶ。

「ぎりセーフやな」と《出雲国大社之図》を指さす教員。
不思議そうな学生に、7日から八百万神が集まって縁結びの会議をする光景を描いたのがこの浮世絵。ということは12月に出雲大社に来ても、翌年の11月の会議になりますよねと。
あとは一畑電車と北松江駅復元模型で楽しんだり色々。

その後帰途。新大阪にて解散。

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太公望

2019-11-4

かなり以前、S先生の調査に同行したことがある。その折、先生がおっしゃったのは、確か「大学を退職したら、『漁師』になりたい」と。
当時は「何をおっしゃっているのですか!」と思ったが、後に著書に触れると、当時おっしゃった意味が非常によく理解できる譬えであったと実感する。

彫刻史の研究は「漁師」と似ている。
初めは、a.「魚の図鑑」を見て関心を引く、次にb.水族館などで魚の生態を学ぶ、次の段階ではc.自分で魚を釣り上げて、これはどんな魚なのか(種別や調理法)を調べ(考え)て、養殖や生態を考察する・・・。至極、名言。

彫刻史の授業をしているが、これはあくまで「魚の図鑑」レベル。彫刻(仏像)に関心があるといえどもそれでも水族館レベル。魚を求め磯から磯へ移り、これは「黒鯛?それとも別の魚?」などと釣上げた魚を考えるレベルではまったくない。同じ魚をみても、違いや価値を考えることもないので楽。

こちらが日々悩んでいることがよくわかる名言と改めて実感。
もっとも現状は釣り堀レベルで、磯釣りなどは想像すらできないのが実情。

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ドタバタ

2019-11-7

いつものように午後から3コマ連続授業。
今日の3コマ目は「雪舟筆『天橋立図』」。
やや簡略に概説を述べて終え、「質問はありませんか?」と。2、3の質問が出て対応し、「他に質問はありませんか?」と再度、乞う。
「では、ないようなので早いですが、今日はこれで終了。」

ここからが猛ダッシュ。
授業後の片付けをし、部屋のカバンを取って関大前駅、天下茶屋でラピートに乗り換えて関西空港へ。ぎりぎりセーフ。
幸いにも出発(ANA 1739)が10分ほど遅れ、ちょっと学生に申し訳ない感じもしたが、結果オーライ。

“定刻”通りに那覇空港へは23時直前に到着。
空港到着後、ゆいレール(最終ひとつ前)で23:27に「県庁前」駅に到着し、ホテルに向かう。
ゆいレールは「たこだ浦西」まで延長。
日付も変わった頃、ホテルの一室で、駅前で買ったコンビニ弁当と缶ビールを食し、ベットに倒れ込む。

疲れた・・・。

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調査

2019-11-8

9時過ぎに県庁前で車に乗せてもらい、本部町の「美ら島財団」本部へ。渋滞もなく昼前には本部町。

車中、何から話せばよいのかと思案しつつ「琉球新報」掲載の寄満にあった「十二神将像」の話題。不肖ながら、初めて見る像である。
「あれって(元々)どこにあったのですか?」「陶芸家が造ったものです。現代作品です。(入っていた)桐箱はまったく焼けてしまいましたが、さすがに焼物ですから・・・。」などと。
そうなんだ・・・。

午後から調査。搬入口付近では学生?がイルカの骨を洗浄中。骨格標本にするらしい。
こちらは仏像のX線撮影・CT撮影と詳細調査。普段はイルカなんかの健康診断用。もちろん文化財(仏像)のために線量と照射時間は大きく変更。

懸案の某仏像背面。以前の話では舟形光背が台座から取れない(ので背面は想像による造形)と聞いていたが、案の定、あっさりと光背は台座から離れる。
X線撮影。その後、計測、観察。

その後ワーキング会議、既に16:00を過ぎた頃に終了。
首里まで送ってもらい、ホテルへ。

往復の道中、お互い口には出さずとも、次の「再興事業」への意志は強い。 とはいえ、30年後にはこちらは「卒寿」、鬼籍入りなのだが。

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帰阪

2019-11-9

朝、那覇空港に向かい、ANA1734便にて帰阪。
ゼミ生のお土産(タコライス・沖縄そば・ラー油)を買い、ゲートへ向かう。

機材はA320neo。
座席前面にはパーソナルモニター。
今回も青い海、白い海岸とは無縁。今回も上空から見るだけ・・・。沖縄本島北部がよく見える。
昨日はあそこで仕事していたんだ・・・。

2本ほどプログラムを観ていると、はや和歌山上空。
関空ターミナルでお昼を食して大学へもどる。

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皇陵巡拝会

2019-11-10

秋晴れの下、祝賀御列の儀。しかし大学では行政書士試験、こちらも大学。
沖縄で仕事している間にも、大学用務や授業準備など絶賛増殖中。

過日の泊園記念講座で、大正期の皇陵巡拝会や皇陵参拝団について触れ、皇陵参拝団が道標石碑を建てた例として堺東の石碑などを示した。

講座でご一緒した小倉先生が京都でも見つけたとの報告をいただく。
あつくあつく感謝。
「右 清和天皇火葬塚 参道」​
「左 後一条天皇陵・陽成天皇陵 参道」​
「昭和四年十一月建之 大坂 皇陵巡拝会」​

もらえるかどうかわからないが、次回のサバティカル(無ければ、定年後)は皇陵巡拝会や皇陵参拝団の石碑探訪にしようか。
傍目からみると、徐々に右傾化のようにもみえるが、あくまで皇陵をめぐる歴史研究。

「先生の横顔」の原稿は、現在、「趣味(兼実用)は各地の神社仏閣、展覧会巡り。」と〆ているが、「趣味は皇陵参拝、展覧会巡り。」とでも訂正してみようかと悪乗りも。

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大遠征

2019-11-13

夏過ぎに高校から「出張講義」の依頼がきた。静岡・富士宮市の星稜高校からのご依頼。

新大阪から「こだま」に乗って新富士駅へ向かう。
「のぞみ」だとあっという間に過ぎる光景をゆっくり眺めながら新富士駅。
そこからタクシーで、快晴なら富士山がよく見える道路を通り、星稜高校へと向かう。
あいにく新富士駅に着くころから雨。富士山は三合目辺りから頂上までは雲に隠れて、まったく見えない。残念。

星稜高校では1・2年生を対象に「大学進学情報会」として、30ほどの全国各地の国公立・私立大学からの先生を招へい。
それぞれ教室があてがわれて50分×2コマのミニ講義。まるで大学進学のコミケ。

遠方組からなのか対応が実に丁寧。関西の高校とはちょっと違う。
終了後、先生が「私が(講義内容に)たいへん関心がありましたので」と本音がチラリ。
そうでしょう、そうでしょう。日本美術史は大人の科目。
22時前に帰宅。次回の「出張講義」は大阪。

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大人の科目

2019-11-14

とある授業。昨日のことを講義のマクラにしながら思い出したのは、生徒さんからの質問。「文学部では、“美術”も扱うのですか?」と。

因みに受講生に高校の選択科目(美術、書道、音楽)を問うと、半数が美術。
・・・とはいえ、ほとんどが実技一本。美術“史”は文学部の範疇ではないといった風。
鑑賞教育や日本史、西洋史のなかで位置づけが出来ていない証拠。
むしろ「哲学」「宗教学」(失礼!)と同様に高校の科目では括れない「芸術学」のほうが高い関心。

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近世の仏像

2019-11-15

朝から某市へ仏像の見学。教育委員会の方と3カ寺ほど巡る。

ほぼ近世の仏像。時にあっと思う像もあるが、じっくりみるとやはり近世の制作。巧い。
仏像の台座側面に「願主 京都住人 佛繪師 山本善右衛門」。「この名前、記憶にあります。調べます」と。
仏師の名前もあったが、既に教育委員会の方が「近世仏師事績データベース」で確認済。
鎌倉時代の作品などもあって、大いに関心を引く。

ちょっと気がかりであった仏師関係史料も、教育委員会の方の尽力によって所在がわかり、ひと安心。
午後遅く、大学へ向かう。
あれこれ、記憶を辿ると山本善右衛門は京都「下長者町浄福寺東江入ル町」の住人(『京都御役所向大概覚書』)。

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置物と仏像

2019-11-19

大学院の授業。置物と仏像(信仰対象物)の違い。

講義しながら、とんでもない回想。
幼い頃、奈良に住んでいたにもかかわらず、東大寺南大門前のお土産屋で吊るされていたビニール製の鹿が欲しかった。ようやくのこと、買ってもらって一日中遊んでいた。

いま、ビニール(木)製の鹿の製造者が春日大社の篤信者であることが判明したら、ビニール(木)製の鹿のみかたも大きく異なっていたのではないだろうかと。
研究対象が置物なのか信仰対象なのかは、造形だけではわかりにくい。制作者の想いや履歴まで含めて考えないと、置物か信仰対象なのかの判断は難しい。
明治を境に置物と化した仏像。

脳内で整理出来ていないこと、制作者の経歴(篤信者の判断)が出来ていないことを正直に吐露。
置物と仏像(信仰対象)は意外と難しいことを話す。

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上京

2019-11-20

所用にて上京。

少し時間に余裕があったので、東京ステーションギャラリー「辰野金吾と美術のはなし」展を見る。

辰野金吾と松岡寿との縁など、没後100年特別小企画展ながら充実した内容。
会場に居並ぶ石膏像3体。工部美術学校の教材である。松岡がスケッチした授業?風景(《工部美術学校画学教場》1877-78年頃)も並置。 ほぼその通りに展示。 ただ《シンバルを持つサテュロス》の左手はスケッチにはない。
こういう教材が残っていたとは、また所蔵者が「東京大学大学院工学系研究科建築学専攻」に驚く。

所用が終わり、最終近くの新幹線で帰阪。久しぶりに仏像談義。

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宿題

2019-11-21

某所で不動三尊像の調査。近世(17世紀初期)の制作。そう大きくもなく、特に変わった点もない。
不動明王像の調査が終了し、制多迦童子、矜羯羅童子を調査。

矜羯羅童子像を台座から抜くと、足ほぞに銘記「南都藤原大佛師法橋侍従」。ありゃ。

四天王寺や東大寺の記録にも登場する色々と課題が残る(調べないといけない)南都仏師である。

小さな仏像の大きな宿題を抱えたまま、調査を終了し帰途につく。
あれこれと断片的な事を思い出すと、ちょっと時間がかかりそう・・・。

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周辺機器更新

2019-11-23

個研のPCはWindow7。Window7からWindow10へのアップグレードが済み、スキャナーを使おうとすると、全く動かない。

品番を確認し、調べると「Window10」には対応していないと。
慌てて梅田へ出てスキャナーを買い、戻って接続作業。

スキャナーは以前のものより早いが、まだまだ操作に不慣れ。
遅くなった仕事を続行。 文字通り、本日は祝日ながら授業(準備)の日となった。
深夜に帰宅。

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京都

2019-11-24

2回生の見学会で京都国立近代美術館「円山応挙から近代京都画壇へ」展へ。

大乗寺《松に孔雀図》、《郭子儀図》を筆頭に学生と共にあれこれ作品を見る。
山元春挙《瑞祥》を見ていると、学生の頃の記憶がよみがえる。
奇しくも同じ科目の見学会。京都の某寺院(思い出せない!)の襖絵(山元春挙「山水図」)を指さして「これはなぁ、ロッキー山脈なんだ!」と。
当時は、はっ?ぜんぜんわからへん!と思ったが、今にして思えば、山本春挙は、明治37年(1904)にセントルイス万国博覧会の視察旅行を行っている。帰国後は《ロッキーの雪》も制作している。
《瑞祥》をみていると、後景の山は何となくアメリカ・モニュメントバレーの山。
ちょっと納得しながらも、学生に言うのもはばかられ「なんとなくアメリカの山っぽいですね」と。

2時間ほど迷解説を加えながら見学。
その後、細見美術館「カフェキューブ」でお茶して解散。
次回の見学会には、是非とも細見美術館「中村芳中」展も。

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仏像

2019-11-25~26

某所にて仏像調査。
簡易な報告があり、それを確認しつつ補訂。報告は詳細な点が記載されるも、一部では大雑把。丁寧に修正を加えつつ調書。

多数の仏像に混じって近世の弘法大師像。これは調書に記載されていない。
計測や形状を記述し、畳座をひっくり返すと、天保年の銘記。寺史の1頁を追加。

午後、休憩に外へ出ると紅葉。紅葉も今日あたりが最後かも。
日没まで調査。終了後は真っ暗。

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通し矢

2019-11-28

学生の発表で舟木本「洛中洛外図屏風」。
発表後、受講生から質問。「位置関係が全然わかりません」と。

きっとそうだろうと思い、PCでGoogle Mapを大写し。
「ここがJR京都駅、ここが阪急河原町駅。五条大橋はここ。方広寺はここで、この下に三十三間堂、清水寺はここ・・・。」と位置関係を説明。

きっとそうだろうと思ったのは、地方の学生だろうなと推測。
ぜひとも関西にいる間、色々と実際に現地に赴いてあれこれ見てほしいと思うのだが。

舟木本「洛中洛外図屏風」の三十三間堂の 「通し矢」の的の位置は今とは逆
経験上、55m(1間=1.8m)ほどだと思って説明したが、実際は約121m。訂正。

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お願い

2019-11-29

宇治・萬福寺へ。ひさびさ。

副所長氏と談話。もう長きにわたってお付き合いさせて頂いている。 黄檗様彫刻は大きな展開を持つ彫刻。目視観察だけでは分からないことも多くあると。

文華殿では新館も出来、旧館の前には河口慧海の銅像も立つ。高山先生も鬼籍に入られたとの由。
長い歳月を感じざるを得ない。
「隠元禅師中国時代の事蹟」展を見る。

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LINE

2019-11-30

午後から大学。色んなことが過重積載。
12月に3回生向けのガイダンスを行う予定が1月頃に延期。
慌てて予定表を作り連絡。
3回生全員とはLINEで繋がっているが、学生同士の会話に教員が立ち入るのもはばかられ専ら緊急連絡用。便利な時代になったと実感。

さっそく秋学期定期試験の作成依頼がくる。
早くも師走である。

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