研究内容については,研究内容のところを見てください.下記はコンピュータシミュレーションによって試作実験がいかに効率よく行えるようになるかだけを説明しています.
超高周波工学研究室の関連分野についてのページで本研究室の大まかなイメージができるようになったと思います。本ページでは、超高周波工学研究室で行っている研究について簡単に説明します。おそらく、学生諸君は、超高周波工学研究室の研究室名からは想像できない研究をやっていることに気が付くでしょう。
マイクロ波・ミリ波・光波は電磁波であり、電界と磁界の2成分からなる波です。そして、それらはMaxwell方程式で関係付けられています。マイクロ波・ミリ波・光波の回路は、簡単に言うと波を制御する回路であり、従来それらの設計・開発は図1のようなものでした。この設計では、要求された回路特性を出すために何度も設計・試作を行わなければならず、開発コストと開発期間に問題がありました。更に、この回路設計はかなりの技術的な経験を必要とし、若手技術者がすぐにできるものではありませんでした。

一方、近年のコンピュータの急速な発展・普及に伴い、数値解析技術はさまざまな分野で応用されています。我々の研究分野もその一つです。具体的には、Maxwell方程式を基本とする電磁界シミュレータ(数値解析)を用いたマイクロ波・ミリ波・光回路の設計・開発が盛んに行われています。これは、従来の試作・実験過程をコンピュータによるシミュレーションで置き換えたものであり、一般にCAE(Computer Added Design)と呼ばれています。CAEを活用することで、試作品の失敗やそれに伴うやり直し、試作の試行錯誤などを減らすことができ、開発コストと開発期間の改善できるようになりました。しかし、現在の電磁界解析技術では解析で評価できない問題点がまだ多く残っており、電磁界シミュレーションで得られた回路特性と実際に製作した回路の特性は必ずしも一致しません。そのことから、図2の赤い破線部分である試作品の最適化(要求を満たすように微調整する過程)が必要になり、技術的な経験がなければ効率のよい最適化ができません。この最適化の過程をできるだけ少なくするには、回路を設計どおり製作する技術と、現在の電磁界解析では評価できない問題を解決した高精度な電磁界シミュレータが必要不可欠です。そのような理由から、超高周波工学研究室では、高精度な電磁界シミュレータを実現するための研究を行っています。

また、現在のマイクロ波・ミリ波・光回路の設計は非常に高度な技術と経験を必要し、若手技術者は簡単に行えません。そのため、若手技術者でも簡単に設計できるシステムの研究・開発が世界中で行われています。図3がその概略図です。シミュレーション結果や技術者の経験をデータベースとして保存し、利用する形になっています。現在、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムなどを用いたシステムが考えられていますが、まだ実用できる段階ではありません。超高周波工学研究室では、高精度な電磁界シミュレータを実現するための研究を行いながら若手技術者でも簡単に設計できるシステムの実現を目指しています。

マイクロ波・ミリ波・光回路の設計は、「複雑」です。また、近年、情報工学やデジタル分野の技術が応用されつつあります。そこで、実際に現在の設計理論を習得し、電磁界シミュレータを駆使した設計と実験を行いながら新たな設計手法の開発も行っています。
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