超高周波工学研究室は、名前の通り『 かなり高い周波数を使用する工学分野 』の研究を行っています。具体的には、マイクロ波・ミリ波帯、更に光波の領域までの電磁波を取り扱っています。

 マイクロ波・ミリ波が生活のどこで使われているのか知っていますか?数例ですが、図1にその製品を示します。携帯電話無線LAN電子レンジ空港のセキュリティチェック図書館の本の不正持出しチェックの他にも、ICカードを用いた非接触システム車の衝突防止システムカーナビ衛星通信など探せばたくさん出てきます。また、光波を使用した代表的な例に光ファイバ通信があります。最近、ユビキタス社会(簡単に言うと、いつでもどこでも情報を入手したり電子機器を操作できる社会)という言葉を良く耳にしますが、携帯電話や無線LAN、光ファイバはユビキタス社会を支えていく上で必要不可欠なものです。

          

 また、近年、文献や雑誌で高速ディジタル回路という言葉をよく見かけます。一見、『 ディジタル回路 』に『 高速 』が付いただけで、マイクロ波・ミリ波回路の設計とは無縁のように思いがちですが、実は、無縁ではないのです。ディジタル信号というと図2のような波形が思い浮かんできますが、あくまで理想的な波形です。

   

図2のディジタル信号は、基本周波数の正弦波とその奇数倍の周波数の正弦波(高調波)で構成されています(図3参考)。これは、図2の時間波形をフーリエ変換することで確認できます。

   

図3では、基本周波数と3、5次高調波を用いてディジタル信号を作っていますが、基本周波数と3、5、7、9、11次高調波を用いてディジタル信号を作ると図4のような波形になります。かなり理想的なディジタル信号に近づいたことが分かります。

   

ディジタル回路のクロック周波数が高くなればなるほど、伝送容量が増え、高速処理が可能になります。しかし、ディジタル信号を構成する主な周波数成分がマイクロ波の領域に近づいていき、回路設計では信号の反射、減衰、放射、クロストーク・ノイズ(線路間の誘導結合や容量結合の影響により生じたノイズのこと)などの問題を考慮しなければいけません。これらは、回路を集中定数回路的に扱う従来の設計を用いるとかなり複雑な問題になります。そのため、ディジタル回路設計分野でもマイクロ波・ミリ波回路の設計で使われている電磁界シミュレーションおよびその設計技術を応用しなければならない状況になっているのです。

 以上をまとめますと、マイクロ波・ミリ波・光技術は通信以外にも、調理、計測、センサ、医療などの幅広い分野で応用されています。更に、近年、ディジタル回路の設計でもそれらの技術が必要になっています。超高周波工学研究室では、そのような『 超高周波エレクトロニクス 』に関連する研究を行っています。


 

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