関西大学システム理工学部 機械工学科

ロボット・マイクロシステム研究室

汎用性の高いロボットハンド


概要


各家庭への生活用品の搬送やコンビニエンスストアへの商品輸送では、需要に合わせて商品を運ぶため、必要な数量を1つの箱に詰める作業があります。これらの箱詰め作業は人によって行われており、コストを下げるためロボットハンドを用いた自動化が求められています。自動化に必要な技術には、物体認識、把持技術、およびそれらを制御するシステムがあります。このうち把持技術には、高度な物体認識、センサ、制御を要せず、複数の形状・姿勢の物体を把持することが求められています。従来研究されている多指ハンドは,高度な作業ができますが、構造および制御が複雑かつ高価なため箱詰め作業に適していません。そこで本研究では多様な形状・姿勢をした対象物を把持できるロボットハンドを目指し、現在は2種類の真空グリッパを開発中です。1つはタコの吸盤を模倣したフレキシブルハンド、もう1つは接触すると開くマイクロバルブをもつグリッパです。(お問い合わせはこちらから)

Suction cups

箱詰め作業用ロボット

タコの吸着機構を模した真空グリッパ


タコは吸盤機構は図1のように吸盤と漏斗部とで構成されています。図2にタコの吸着動作を示します。まず漏斗部の筋肉を使い漏斗部が対象物に張り付きます。次に密閉した空間ができたところで吸盤の筋肉を使い吸盤内部の空間を広げ負圧を発生させます。このようにして外部との大きな差圧により高い吸着力を実現しています。そこで本研究では、薄膜状の吸盤をもつグリッパを提案しました(日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会 Robomec2013にて発表 5月23日)。吸盤内部は真空ポンプとつながっており、吸盤内部を減圧できます。吸盤把持対象物に密着させ吸盤内部を減圧すると、大気圧との圧力差により対象物を把持できます。

一般的な真空吸着と異なり吸盤内部の排気系と大気が膜によって遮断されているためリークがありません。したがって吸盤が対象物に接触していなくても、全ての吸盤内部の圧力を下げることができます。これにより凹凸のある対象物を把持できます。さらに吸脱着の制御は1つの真空計と1つのバルブの切り替えだけで済みます。また排気系が大気とつながっていないので、ごみが排気系に詰まることもありません。ハンドをシリコーンゴムなどの柔軟なエラストマで作製することにより、曲面をもつ対象物の把持も可能となります。

ハンドを対象物に接触させると、エラストマ製の薄膜と対象物の間にわずかな空間(吸着部の空間)ができます。吸盤内部の圧力をポンプによって下げると、薄膜が吸盤内部側に凹みます。密閉空間の体積が増えるのでボイル・シャルルの法則より圧力が下がります。ただし薄膜の復元力があるので密閉空間の圧力は吸盤内部の圧力よりわずかに小さくなります。

図3のように吸盤型フレキシブルハンドは吸盤にあたる薄膜部分があり、吸盤内部の圧力を下げることで膜が凹みます。ハンドが物体の形状に追従できるようハンドは内部にガラスビーズが充填された柔軟な構造となっています。またガラスビーズが排気流路や吸盤部分に入らないよう,それぞれにフィルタがあります。

図4~6にグリッパによる把持の様子を示します。真空ポンプによって発生する大気との圧力差(ゲージ圧)は80 kPaです。平面を把持した場合は0.35 N(3.5 kgf)まで把持できることを確認しております。また曲率半径38 mmの瓶(0.8 kg)を30度傾けた状態での把持にも成功しています。また一部の吸盤による物体把持も可能です。

特許出願中

Suction cups

タコの吸盤 [Ref.1: William M. Kier and Andrew M. Smith, Integr. Comp. Biol. 42: 1146-1153, 2002]


Suction cups

タコとグリッパの吸着機構 [Ref.2: Frank W. Grasso, Sensational Sucker (Scientific American October), 日経サイエンス 2011年1月号 p.76-77, 2010]


Suction cups

グリッパの構造と対象物の吸着

瓶の把持(高速,重さ 0.8 kg,曲率半径 38 mm)

瓶の把持(重さ 0.8 kg,曲率半径 38 mm,初期姿勢 30度)

平面物体の把持(重さ3.5 kg)

一部の吸盤による物体の把持(重さ0.12 kg)

接触すると開くバルブをもつ吸着グリッパ


対象物に接触することにより開くマイクロバルブもつ真空吸着グリッパを開発しています(図7)。マイクロバルブは通常時は閉じており、対象物と接触すると開くため、凹凸のある対象物の把持ができます。各バルブは自律的に開閉できるので吸脱着の制御が容易となります。またハンドがシリコーンゴムなどの柔軟な材料で作られているため、曲率半径の大きな対象物にも対応できます。さらにバルブ構造を小さくすることにより、高い凹凸、曲率半径をもつ対象物の把持が可能となります。脱着時は配管にあるバルブを切り替え、ハンド流路内を大気圧にします。配管にあるゲージ圧真空計を用い、ハンド流路内の圧力値を測定し吸脱着を判断します。したがってセンサおよびバルブ制御箇所はそれぞれ1つで済みます。本研究ではMEMS技術を用いマイクロバルブを有する吸着ハンドを作製し吸着実験を行っています。ゲージ圧が-80 kPaのとき、最大吸着力は0.4 N(40 gf)となります。また30 gの平面物体を把持、運搬することに成功しています。

特許出願中

対象物(30g)の搬送

Suction cups

接触すると開くマイクロバルブをもつフレキシブルグリッパ

Suction cups

グリッパの吸着原理

Suction cups

グリッパの最大吸着力測定

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