氏名 |
山本 幾生 |
専攻分野 |
哲学 近現代哲学 |
主な研究テーマ |
1)近年のめり込んでいるテーマは「実在と現実」。現実のこの生(生活)にリアリティを感じたり感じなかったりするのはどうしてなのか、また、虚構(小説、童話、VR等)は、通常、実在から排除されるが、実在と共に私達のこの現実の生を形作っているのではないか、こんな問いが研究の出発点です。
2)いつも気になっているテーマは「無」そして「意志の否定」。これは東洋哲学(インド、中国、日本)でも研究されるテーマですが、私は西洋哲学の伝統の中で研究しています。 |
二回生以降に展開される
授業内容 |
担当の授業科目は毎年固定しているわけではありませんが、08年度は全学科目で「哲学を学ぶ」、そして専門科目で「哲学倫理学基礎演習」「哲学演習」「卒業演習」を担当しています。
専門の授業では、哲学という学問の基礎的事項・基礎的概念を解説しながら、哲学の基礎的問題、たとえば「自己と他者」、「存在と認識」、「言語と世界」、「実在と観念」、「存在と無」、などに関わる問題を扱うことが多いです。
そして、これらの問題に対する伝統的な考え方(思考様式)を把握しながら、それを現代哲学の動向(19世紀から20世紀)のなかで批判的に吟味し、どのような新しい考え方がでてきているのかを受講生に考えてもらうことを目指しています。授業形態としては、テキスト読解、発表、ディスカッションが中心になります。
私の授業は、皆さんが自分のテーマを見つけて自分で考えるための、材料提供とアドバイス役といったところです。 |
推薦図書 |
蔵書を見るとその人のことが分かると言われます。一般的な入門書や概説書のたぐいは早めに卒業して、著者の生が脈打っている書と出会って下さい。これはもう、宝探しみたいなものです。
〈読み物としても読みやすい哲学関係の入門書〉
○野矢茂樹 『哲学の謎』 講談社現代新書(1286) 1996年。
○冨田恭彦 『哲学の最前線−ハーバードより愛をこめて』 講談社現代新書(1406) 1998年。
○新田義弘 『哲学の歴史−哲学は何を問題にしてきたか』 講談社現代新書(977) 1989年。
○トマス・ネーゲル 『哲学ってどんなこと?−とっても短い哲学入門』 岡本裕一朗ほか訳 昭和堂 1993年。
○トマス・ネーゲル 『コウモリであるとはどのようなことか』 永井均訳 勁草書房 1989年。
〈私が惹かれた専門の原典〉
○ハイデガー 『存在と時間』『形而上学とは何か』 (『ハイデッガー全集』創文社)
私が哲学という学問領域にどっぷり浸かるきっかけとなった書です。
○二一チエ 『権力への意志』 (『ニーチェ全集〈12〉』ちくま学芸文庫)。
何の疑いもなく生きている(哲学している)、そうした生(哲学)を、その奥底までざっくりと抉り出しており、随所でうなってしまった書です。
○ディルタイ 「外界の実在性論考」 (『ディルタイ全集』第3巻、法政大学出版)。
実在と現実という問題を生のリアリティから今日のバーチャル・リアリティへ向けて考えるきっかけとなった論文です。縁あって訳者になっています。
○ウィトゲンシュタイン 『哲学探求』『論理哲学論考』 (『ウィトゲンシュタイン全集1・8』大修館書店)
考えるという人間に課せられた営みを教えてもらった書です。 |
講義「学びの扉」のテーマと内容 |
《シリーズ1》古典と私
講義テーマ:「自己の死」(ハイデガー『存在と時間』)
「誰でも必ず死ぬ。自分も例外ではない」。それでは、どうして、未来のいつ来るとも知れない自分の死について、自分も必ず死ぬのだということを分かっているのでしょうか。この、なんとも奇妙な問いに答えているのが、ハイデガーの『存在と時間』です。〈私〉が学部生のときに出会った〈現代哲学の古典〉です。
授業では、私が古典と出会った学部生(何十年前や?)のときの思い出話から、まず、〈出会い〉そして〈問いと答え〉ということについて考えてみます。そして、ハイデガー『存在と時間』の内容を参考にしながら「自己の死」について考えてみます。
《シリーズ2》現代と私
講義テーマ:「VRを哲学する」
VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)は、コンピュータ技術が飛躍的に進歩した現代を特徴づける装置の一つです。もちろん「仮想」には、夢や童話や小説などの「虚構」も入るでしょう。そして虚構は現実と何の関係もないものだと、普通、考えられています。しかし本当にそうでしょうか。虚構やVRは、私たちの現実の形成に関わっているのではないでしょうか。VRを哲学してみましょう。
授業では、VRとはどのような装置なのかを紹介し、VR以外に私たちにもっと身近な夢や小説や童話などの虚構について触れながら、まず、そうした虚構とVRとの違いを考えてみます。そして、私たちの現実はどのように形成されているのかについて考えてみます。 |
リレー講義の参考文献 |
《シリーズ1》古典と私:授業中に名前の出てくる古典です
ハイデガー 『存在と時間』 ちくま学芸文庫(ほかに岩波文庫など)
フッサール 『現象学の理念』 みすず書房
フッサール 『純粋現象学および現象学的哲学のための考案(イデーン)』 みすず書房
ライプニッツ 『形而上学叙説』 中公クラシックス
九鬼周造 『偶然性の問題』岩波書店 (『九鬼周造全集』第2巻)
《シリーズ2》現代と私:授業内容についての参考書です
○このテーマについて私自身の考えを著した書
山本幾生 『実在と現実 リアリティの消尽点へ向けて』 関西大学出版部 2005年。
また、ショーペンハウアー(1788-1860)という哲学者の文脈でごく簡単に纏めたものとして 「バーチャリティとリアリティ」『ショーペンハウアー研究』4号 日本ショーペンハウー協会 1999年。これは次のURLで読めます。
http://www.schopenhauer.org/organ/beitraege.html
○このテーマを考えるきっかけとなった哲学者(ディルタイ)についての紹介書
西村皓ほか編 『ディルタイと現代』 法政大学出版局 2001年。
(ディルタイは19世紀後半から20世紀初頭に活躍したドイツの哲学者です。)
○VRについての紹介書と哲学的な書
荒俣宏 『VR冒険記−バーチャル・リアリティは夢か悪夢か』 ジャストシステム 1996年。
マイケル・ハイム 『仮想現実のメタフィジックス』 田畑暁生訳 岩波書店 1995年。
○哲学の分野での実在性の問題についての簡単な紹介
バートランド・ラッセル 『新版・哲学入門』 現代教養文庫(A013) 社会思想社 1996年。 |
新入生へのひとこと |
大学生である四年間を楽しんでください。それには大学でしかできない自分の研究テーマをみつけることです。どの専修に行くにしても自分が一番やりたいテーマを見つけてください。これは!というテーマにのめりこむと楽しいものです。 |