関西大学文学部総合人文学科
哲学倫理学専修

Kansai University Faculty of Letters Course of Phirosophy and Ethics

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関西大学
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学びの扉

■ 学びの扉(木岡 伸夫)

氏名 木岡 伸夫
専攻分野 風土学
主な研究テーマ 1.《風土の論理》:自文化中心的な西洋形而上学をのりこえ、過去になかった「地理哲学」の地平を切り開く試み。風土学の基礎理論。
2.《風景の論理》:風景の概念のもとに世界経験を包括し、その生成変化を構造論的・弁証法的にとらえる。風土学の認識論に相当する。
3.《邂逅の論理》:風土に住む主体が、異なる風土といかに出会うことができるかを追究する。風土学の実践論(倫理学)に相当する。
 以上の三部から成る風土学の理論を仕上げることが、私の研究者としてのライフワークである。
二回生以降に展開される
授業内容
2008年度は、以下の三科目を担当する。
◯「倫理学特殊講義a・b」:
「風土の論理」を、「歴史的考察」(前期)、「理論的考察」(後期)に分けて展開する。
◯「専門演習」(3年次):
学生諸君が2年次までの蓄積をもとに自己の研究テーマを探り当てるための助言を行う。研究発表と討論のほか、学生の関心に応じて講義やテクストの講読を交える。
◯「卒業演習」(4年次):
卒業論文のテーマは自由。諸君が選んだこだわりのテーマに全力で立ち向かえるよう、私も全力で付き合うつもりである。
以上のほか、1年次向けの「環境の倫理」(共通科目)、「知パス」(「環境思想の古典を読む」)を担当。大学院(M)自由科目「人間環境学研究」(「都市の風土学」)は、学部生の聴講も可能。
推薦図書 ○J-P・サルトル『実存主義とは何か』、伊吹武彦 他訳、人文書院、1996年。
第二次世界大戦が終わった1945年10月に行われた講演「実存主義はヒューマニズムである」を含む一冊。既存のあらゆる思想に死亡宣告を下すことによって、哲学が生まれ変わろうとする瞬間を生き生きと伝える。読みやすい現代哲学の入門書としてお薦めしたい。

◯アンリ・ベルクソン『創造的進化』、真方敬道訳、岩波文庫、1979年。
生きることの意味を根本から考えたい諸君に、「生の哲学」の最高の作品として推薦する。本書が打ち出したエラン・ヴィタール(生の飛躍)の思想は、生命進化の問題への回答であるのみならず、われわれが日々刻々に生きてあることの意味を凝縮したキーワードである。『思想と動くもの』(講義のテクスト、次ページ参照)と読み合わせてほしい。

 ○野田又夫『哲学の三つの伝統』、紀伊国屋書店、1984年。
  ギリシア、インド、中国でほぼ同時期に始まった哲学の営みが、結果的に西洋文明の独占的な世界支配を許したのはなぜか。デカルトなど近代の啓蒙主義哲学の研究をリードした著者は、三つの地域の「論理」がもつ違いを明晰判明に解説する。著者の言うとおり、西洋哲学の厳密論理が、はたしてもっとも優れているのか。賛否はともかく、日本の哲学のゆくえを考える上で、大きな手がかりを与えてくれる。

◯島岡由美子『わが志アフリカにあり』、朝日新聞社、2003年。
「飢えた数億の人を救うために自分に何ができるか」を一生のテーマとしてアフリカに渡った日本人青年の志と生き方を、伴侶となった著者が驚くべきエピソードの数々とともに紹介している。主役島岡強は、NHK・BSの『遠くにありて日本人』のシリーズ(2004年放映)にも登場した(恩師が本書をプロデュースした縁から、ここに挙げておきたい)。
講義「学びの扉」のテーマと内容 哲学倫理学専修では、5名のスタッフが登場して、2つのシリーズにわたって講義を行う。第1シリーズは、《古典と私》。それぞれが、どんなきっかけで哲学の世界に入ったのかを、テクストにまつわる思い出を中心に語る。第2シリーズは、《現代と私》。これまでの研究生活をつうじて、現在の研究テーマにたどり着いた経緯を明らかにする。
私自身のテーマと内容は、次のとおり。

○シリーズ1:《古典と私》
テーマ:「直観と現実世界」(テクスト:ベルクソン『思想と動くもの』)
複雑を極める哲学者の理論の底には、かぎりなく単純な直観がある、というベルクソンの主張と向かい合ったときから、私の哲学が始まった。激動する1960年代の現実社会とのかかわりを振り返り、「哲学とは何か」という問題に自分なりの答えを示したい。
○シリーズ2:《現代と私》
テーマ:「風景としての世界」
普遍性を追求するはずの哲学は、誰もが経験する「風景」を問題にしてこなかった。それはどうしてか?風土による経験の異なりをテーマとする風土学に、私がいかにして出会ったか、それをどう展開しようとするのか、を説明する。
リレー講義の参考文献 ◯アンリ・ベルクソン『思想と動くもの』、岩波文庫。
第1シリーズ《古典と私》で紹介するテクスト。収録された「哲学入門」「哲学的直観」など、分量は短くても内容の濃い論文(多くは講演原稿)から、「具体的なもの」に生涯こだわりつづけたベルクソンの生き方を読みとることができる。

 ◯オギュスタン・ベルク『日本の風景・西欧の景観』、篠田勝英訳、講談社現代新書、1990年。
第2シリーズ《現代と私》で取り上げる「風景」のテーマに関する基本文献。日本と中国、西欧における風景への視線の違いを、豊富な事例から説き明かす。風景画や建築についても、比較文化論的な視点から新鮮な見方が示されている。

◯木岡伸夫『風景の論理――沈黙から語りへ』、世界思想社、2007年。
 風土学の第一弾として、本書を上梓した。哲学が「風景」を問題にしなかったことへの歴史的批判、基本風景・原風景・表現的風景からなる風景経験、風景の変容に関する「形の論理」など、現時点で考えられるトピックを盛り込んだ(新入生には、少し?難しい)。
新入生へのひとこと どのコースに入って何をやるかをすでに決めている人も、これから考えようとしている人も、自分が本当に取り組むべきテーマを見つけたい、という思いはおそらく共通でしょう。私の本当の問題は何なのか?――たぶん考える人の数だけ、答えがある。そして自分自身以外に、誰もそれを教えてくれる者はいないはずです。
よくある質問――「高校で倫理を選択しなかったのですが、哲学倫理学専修に入ってもやっていけるでしょうか」。ああ、何たること!こういう質問をする人は、何か決まった問題があって、それに「正解」を出すのが哲学(倫理学)だと思っているのです。そうではない。大切なのは、自分が何をやりたいのかにこだわり、自分の問題を見つけ出すこと。そのうえで、自分のテーマを、自分の頭で考え、自分の言葉で表現する諸君の努力を、われわれスタッフは応援します。ちなみに、先輩たちが取り組んだ卒論のテーマを見てごらん。こんなに自由にテーマの選べるコースが、他にありますか?
エライ人が書いた本の難しげな理屈を受け売りすることが、哲学ではない。他人のお仕着せでない自分の問題にこだわり、それを考え抜く責任をもつことだけが、哲学倫理学専修に入るための唯一の条件です。
 
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