国際投資論:2003年度秋学期・後期:関西大学「学生による授業評価」アンケートに対するコメント


はじめに

 「学生による授業評価」アンケート結果については,すでにウェブページに掲載していますので1),ここでは集計結果をどう見るか,集計結果と自由記述をふまえて今後の授業改善にどう生かしていくかについて述べます。なお,シラバスなど基本的な情報についてはウェブページ2)を参照してください。

学生が授業の企画・実施・伝承に参画する国際投資論

 シラバスによると国際投資論は「学生参画型,すなわち教員の教育的配慮のもとに,受講学生が主体的に,授業の企画・実施・伝承に参画する授業をめざします。したがって,毎回の授業への出席はもちろん,授業外での相当量の学習・活動が必要です」。この点でレクチャー中心の授業形態(講義)をとる他の多くの専門教育科目とは大きく異なります。しかも決して「ラク」ではなく間違いなく「しんどい」授業です。授業中には授業への積極的関与が常に求められますし,授業時間外では授業準備や毎回の個人課題があるからです。学ぶことは本来「うれしい」ことですが同時に「しんどい」ことでもあるのです。「あの授業はしんどい」との評判がある関係でしょうか,履修者数は62名と専門教育科目としては少人数です3)。このうち今回のアンケートに回答した学生は36名で,回答率は58.1%です。

9割近くが満足, 8割が「触発されてさらに深く学習したい」,9割以上が「知識が深まった,能力が高まった」

 授業による成果はどうだったでしょうか。集計結果によれば,設問10では「強くそう思う」61.1%,「そう思う」27.8%となり9割近くの学生が満足していることがわかります。また,設問11では「強くそう思う」40.6%,「そう思う」40.6%となり8割の学生が「この授業に触発されて,さらに深く学習したい」とし,設問12では「強くそう思う」52.8%,「そう思う」38.9%となり9割を超える学生が「この授業を通じて,知識が深まった,能力が高まった」と感じています。この授業は,ほとんどの学生にとって充分な成果があったと言えます。

 掲げたグラフに見るように,この国際投資論は事前に興味があったかを問う設問14以外は,全て4.1以上と高い評価となっていますし,設問14以外は全学平均や学部平均をすべて上回っています。こうした評価を裏付ける自由記述を紹介しましょう。「しんどいこともあるこの授業。前期よりも難しい内容ではあったが,一冊の教科書を班で分担したことによって全部のそれぞれの授業につながりを感じることができたのがよかった。毎回毎回がステップアップになるような授業でよかったです」。「しんどいことが楽しい授業だと感じる。こんな感覚は今までの勉強ではあまり感じたことがない。どちらかというとスポーツに近い気すらする。一生懸命日々練習。大会に出て,その結果に喜んだり悔しい思いをしたりするのだ」。

高い評価は学生参画型と学生に向けられたもの

 専門教育科目としては少人数という条件に恵まれているので,評価が平均値と比べて高くなるのは当然ですが,自由記述の結果もあわせて考えると授業形態としての学生参画型の有効性を示しているものと思います。ここで忘れてはいけないことは,この国際投資論は学生参画型なので学生が中心となって授業をつくってきましたから,これは教員とともに授業を主体的に担ってきた学生に対して与えられた評価だということです。その点で,今年度も「学びに生きる」すばらしい学生たちに出会えたことに感謝しています。自由記述からも学ぶ主体者としての自信と責任感に満ちた姿が浮かんできます。「国際投資論は学生参画型授業。最近先生のコメントで,聞くほうも相手が発表しやすい場を作らないとね,ということがあった。まさにそうだと思った。企画者が必死になって授業を作り,ほかの学生は参加してるだけのように感じる。確かに学生による授業はインパクトもあって頭に入るし気付きも多い。でもみんなで作っていかないとね!って感じた」。

学生とともに授業を常に改善し続けていく

 もちろん,高い評価を得たからといって改善の余地がないわけではありません。授業はいくらでも改善できるはずで常に改善し続けていく姿勢が大事だと思います。改善点は少なくありませんが,特に学生参画型という授業形態を理解するには時間がかかるが,そのための時間は限られていることがあります。学生参画型は授業形態に過ぎませんし,国際投資論についてのあるまとまった学びを1セメスターで実現しなければならないからです。とはいえ担当教員としては今後,学生参画型に馴染めない学生に対しては特に個別に声をかけていくようにしたいと思っています。一方で,学生のみなさんには履修登録時にシラバスをよく読むこと,国際投資論のウェブページをよく閲覧して,授業開始前に理解を進めていくことを求めたいと思います。

 また教室の問題も改善しなければなりません。この授業では,グループディスカッションなどを行う関係上,机や椅子が可動式であることが必要です。50名以上収容できるそうした教室はほとんどありません。現在は,小さなテーブルがついたイスが配置された第2学舎C棟2階の多目的室で授業を主に行っていますが,このイスも使いやすいとは言えません。この点については学部事務室などとも相談しながら改善を図っていきたいと思います。

 なお,アンケート集計結果は手元に届いたのが授業終了後の2月末でしたので間に合いませんでしたが,すでに自由記述については当該授業で公開・配布し,1月15日の第13回(最終回)の授業にディスカッションを行って改善策を検討したことを付記しておきます。

 これからも,感謝の気持ちと謙虚さを忘れずにかつ勇気をもって,学生とともに授業づくりと「学びの旅」を続けていきたいと思います。


1) アンケート集計結果はウェブページ「2003年度国際投資論(中南米経済論)「学生による授業評価」アンケート集計結果」(http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/iiku/iiku2003anq.pdf)に掲載しています。自由記述についてはその全てを「2003年度国際投資論(中南米経済論)「学生による授業評価」アンケート自由記述一覧」(http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/iiku/iiku2003voice.html)に掲載し,その中で特にコメントが必要なものについてはコメントも付しています。
2) http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~shin/iiku-index-j.html.
3) 授業が5限(16時20分から17時50分まで)に行われていることとも原因のひとつであると思われます。

(掲載日:2004年3月10日)


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Author: Shin Hasegawa
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