第1回宿題(メタファーの例)★とコメント
★ 乾さん、織田さん、中村さん、永濱さん、藤田さん、文山さん、増田さん、神保さん、伊藤さん
全般に大変面白く、皆さんの用例を分類して一般化するだけでも論文になりそうです。面白そうな例を挙げます。
・彼の寒い言動にその場の空気が一瞬にして凍り付いた
クラスでも取り上げられていましたが、
センスがない/つまらない←寒い
静まりかえる←凍り付く
という両者に関係があるのかどうか、(<<面白くないことは寒いことである>>のようなメタファーが存在するのかどうか)それから、英語ではどうなのかといった視点でこれから考えていって欲しいと思います。
「首を長くする」「目が点になる」などの身体動作の場合、「肩を落とす」同様、メトニミーとの境界例となります。メトニミーに関してはまた後ほど詳しく。
It’s raining cats and dogs. は多分、成句/慣用句(イディオム)だけで、メタファーではないでしょうね。<<激しいことは犬や猫である>>といったメタファーはちょっと想像つきませんし、他に類例も見つかりません。類例が見つかるということがメタファーであるかどうかを検討する際に重要になります。
「あなたに溺れる」
「溺れるのは川は池ですからこの表現は字義通り(literal) ではありませんね。しかし、この意味を一言で表すのはなかなか難しいですね。
自分の意志でコントロールできなくなってしまう
もがけばもがくほど悪い状態になってしまう
どんどんだめになっていく私
っていう感じでしょうか。
「星がささやかな幸せを祈っている/歌っている」
星は歌いませんからこれは擬人化ですね。チカチカ輝く様子にあたかも応援してくれているような印象を受けた、ということでしょう。光や輝きの表し得るもの、という視点も面白いのでは。
「旗のついていない白いポールはまるで夜の闇につきささった巨大な白い骨のように見えた」
これはイメージメタファーですね。絵で描いてみましょう。どんなところが似ていて、どんなところが無視されていますか?また、「骨」ということで表される雰囲気は何ですか?
メタファーを使用するとこっそり持ち込まれるイメージというのがあります。
例えば、板東眞砂子の小説の例では、
(ちょっとうろおぼえ:第2次世界大戦の時に、軍人上がりの人が)
「敵は、どんどん飛行機をふやしてきておるんや。蠅が一杯出てきたみたいなものや。蠅が一杯でてきたらどうするか。はえたたきをたくさんつくるしかない。そのために我々は(軍需工場で)はたらいとるのや」
「蠅が増えたらはえたたきを増やせばいい」という論理は納得できないではありませんが、その裏にこっそり、「敵機」=「蠅」というイメージがもちこまれています。
「後ろ髪をひかれる」
ここにもメタファーが感じられますね。前後が行動と静止に対応していると考えるのか、それとも、後ろ髪を引く、ということで単に前に行動を止める、という意味になっているのか。前後や上下と対応する軸概念に関しても触れます。
「お互いがお互いを無視し合うような静かな戦争が始まる前は、激しい夫婦喧嘩が続いていた。」
対立関係・仲が悪いこと ← 戦争
戦い ← 戦争 とすると 「戦争は戦いの一種である」とも言えますからちょっと都合が悪いです。でも、スポーツ、戦争、決闘、いがみ合いなどお互いをお互いに喩えることは良く行われます。カテゴリー関係とメタファーの関係も重要です。
注意を引く ← {瞳・目・心}を奪う
奪う、に所有するようになる、の意味があり、注目を浴びることは、関心を引く、関心を自分のモノにする、のように所有と捉える部分があるようです。
「腹がたつ」
これはメタファー?境界例ですね。
立つ、が上に行くを意味して、程度があがることを意味しているのかな。
「彼の言葉が身にしみた」
深い感銘を受ける ← 身にしみる
しみる、表面、うわべ、トラの皮をかぶった、そとづら、裸の自分、芯まで腐っている等々、表面と内面のメタファーは面白いですね。しみる、ということは深いところに達するということで、より重要な影響を与えることになるわけですね。
「子は鎹」
「鍵」
かすがい、は何かをつなぐもの
鍵は何かをひらけるもの、小さいがとても重要なもの
ボトルネックとか、関所とかに近い感じもします。
イメージメタファーとの関連で たとえば、「ピストン輸送」などというと、ピストンの具体的なイメージは失われていますが、いったり来たりする部分は残っています。こうなると、かなりスキーマ化されています
ツインタワー、双子の赤字、などというと、双子や人間というところは無視されていますが、2つのよく似たものという部分が残っています
リンゴの頬、雪の肌 これは 色が中心ですね。それ以外に「密かにひっぱりこまれるものはありますか?
例えば、小麦色の肌、とか、リンゴの頬とか、もち肌とか、食べ物の用語が身体部位に使われやすいのはどうしてでしょう? それから男女と関係ありますか?
心が躍る・声が弾む
動きに力がある様子元気のいい人の状態に対応するわけですね。
「誰だって握られたくないしっぽのひとつくらいはもっているだろう」
隠しておきたい秘密・弱み ← しっぽ
分析するのは難しいですが、ひとことでわかる面白いメタファーですね。
心 ← 天候
(騒がしい曾孫がやっと寝付いた)
―急に静になったなぁ
―まこと、嵐が去ったねぇ
―いやいや、台風の目やろ
周囲を巻き込んで暴れる ← 「嵐」
騒ぎが収まったと思っても← 「台風の目」
再び起こる
ほんとによくできた実例ですね。このような組み替えの例も日常会話でよくあります。
彼女の口は機関銃だ
言葉←弾丸
口←機関銃
連続で長期間打ち続ける(しゃべりつづける)という意味ですね。
様態が似ているだけでなく、迷惑、被害が及ぶというところもこっそり持ち込んでいるようです。
彼女の声がシャワーのように響く
だったら爽快かも
彼女は初恋の相手とゴールインした
恋愛メタファーも後に取り扱います
私に春は来ない
彼との関係を白紙に戻す
増田さんのはおもしろですが長いので後で良かったらファイルで送ってください。心←天候のメタファーの一種です。
思い出が色あせる
気が重い
燃える
A男はB子の足だ
ハートに矢が刺さる
人生はしかれたレールだ
弁護士の卵
これは何メタファー?鶏メタファー?
氷のような女
John Searle という有名な哲学者の有名な例に、
Sally is a block of ice.
というのがあります。
雪、というとき、冷たいのと白いのと両方言えますかね。
だから逆に 「雪のような女」とはいわないかな。
白には、純粋、無垢というニュアンスがあり、モラルメタファーに関連しています。
飛び続ける、羽根を休める
飛ぶ、ということが調子がいいってこと? 高いから? 早いから? 自由だから?
地に足をつけて、という表現がある一方、地べたをはいつくばって、というのもあり
足が地に着いていないというのもあれば、現実のくびきを解き放たれて、というのもあります。>現実と理想のメタファー
車を満タンにするとか
フォードを買うとか
どんぶりを平らげるとか
ワシントンは爆撃の中止を命令した
漱石を読む とかはメトニミーです。
現代社会はジェンガのようだ。
ジェンガをインターネットで引いてしまいました。モト領域の知識がないとメタファーは理解できないものですね。
恋とはタバコのようだ
(火をつけるまで味はわからない)
気に入りました。w 「そのこころは?」メタファーといえますがうまくできてますね。吸い終わったらどうするのか、とか、銘柄は何に対応?とか、フィルターはとか、メンソールは?とかあるんでしょうが、(「見た目はいいけどまずかったとか」)どこまで拡張できるか、構造の問題、創造的な拡張の問題は大変面白く、かつ重要な問題です。
英語はテレビのリモコンだ
(必要なときにでてこない)
こっちも面白いけど、↑に比べるとちょっと比喩らしさがいまいち?
だとしたら、その違いも面白いです。
愛は共同でつくる芸術作品だ
恋愛や関係は共同作品と捉えられることがあるようです
君がほほえむと周りが明るくなるよ
「微笑することで、その空間が明るくなることは、まずない」
とありましたが、たまにはあるわけですね。
佐々木投手の最大の武器はフォークボールである。
相手にとって脅威になるもの ← 武器
スポーツは戦争である、というより大きなフレーム(領域)との関連でも捉える必要がありますね。
彼の考えには共産主義の思想が根付いている
両手に花
花は、きれいな人や魅力ある人やこと、成功を意味しますが、
右手にはトロフィー、左手には美人の新妻の彼は両手に花だ と言えますか?
金メダル二つとったら両手に花といえるのかな?
ナカイ君とキムタクにはさまれた女性は?