「マルチメディアと図書館」研究グループ

研究例会報告


テーマ:「高度情報化社会の中の大学図書館員のキャリヤ形成−国立大学における人事政策の現状−」

発表者:平元 健史(関西外国語大学国際言語学部教授)

日時:2008年5月31日(土)14:30〜16:30

会場:大阪市立大学梅田サテライトキャンパス


今回は2008年3月まで国立大学法人の図書館の要職を歴任された平元健史氏をお招きし、高度情報化社会における今後の大学図書館員のキャリア形成を、主として国立大学の立場からお話いただいた。以下はその概要である。

大学図書館はひとつの文化装置であり、文化装置というものは社会状況に大きく左右される傾向たある。近年の図書館は構造改革路線と規制緩和政策の真っ只中に位置している。国立大学設置法の廃止により、同法第6条の法的根拠を失った国立大学図書館は、学内組織改革の流れの中で、組織統合と縮小の対象となることもある。例えば、すでに米国では清算されつつある情報部門と図書館部門の一元化を、無原則的に適応した大学図書館の今後を観察していく必要がある。統合をするにしてもしないにしても、図書館サイドが十分なポリシーを持って主張すべきは主張した上で臨む必要があるだろう。

国立大学法人化後は、新規採用制度の変化、任命権の学長への移行、それに伴う幹部人事の多様な選択肢などにより、図書館の人事政策も大きな変化に直面している。その中で図書館が有能な人材を継続的に確保・育成し、大学における図書館の存在感を高めていかなければ、図書館の衰微は避けられない厳しい状況に立たされていることを強く認識すべきである。

国立大学図書館の人事政策の新しい動向として、次の3つを見ておきたい。

国立大学図書館職員のキャリアシステムの確立に向けては、抽象論の議論から制度論への議論展開の必要な時期に来ている。図書館界、図書館情報学研究者、文部科学省情報課の一体となった取組みが必要である。法制化は規制緩和に逆行するという論については、規制緩和ではなく育成事業であると答えたい。国立大学自体も大きなところから小規模なところまで事情は様々であるが、それらの事情を汲み取りつつ、具体的な制度設計を真剣に議論すべき時期が来ている。

上記の発表を受けて、制度化の具体像や国立大学全体における位置づけ、中四国の現在の状況、国立と私立の関係などについて質問があり、討議が行われた。図書館員自らがその持てるコンピテンシーについて説明責任を果たさなければならない、そして政策展開、事業展開の行政能力を発揮していかねばならないという、これまで大学図書館を牽引して来られた氏ならではの言葉を深く受け止めたい。

(文責:村上泰子)