「マルチメディアと図書館」研究グループ

研究例会報告


テーマ:「北摂地域の電子環境下におけるビジネス支援サービスについて」

発表者:村上泰子(関西大学文学部)

日時:2007年12月15日(土)14:30〜16:30

会場:関西大学第一学舎5号館


ビジネス環境の変化の中で、公共図書館のビジネス支援サービスが注目されている。就業継続希望者も転職希望者も起業希望者も、それぞれには業務改善、企画開発、スキルアップ、市場調査、出資者探索、許認可情報、法務・税務知識などのニーズを抱えている。

他人との差別化を図るにあたっては、インプット、プロセス、アウトプットのそれぞれの段階において、効率的・効果的な展開が必要である。図書館はそのいずれの段階にも関与しうるが、その中でも特にインプットに関与するものである。情報のインプットにおいては、日本ではネットの情報が主となりがちである。(ビジネスに関わる人々が時間に余裕のない場合が多いことからくるものであろう。)

公共図書館でビジネス支援を行うのは、外発的必要性よりもむしろ内発的動機が大きい。図書館の存在意義を高める意図がある。しかしながら、実際に人々がよく利用するのはインターネット検索が65%、大型書店が44%に対して、図書館は14%から21%という数字もある。このような中で、大阪府下でビジネス支援を行っていくベースとして、実際にどのような情報資源を提供しうるのか、インターネットや書店に伍して人々を満足させられる状況はあるのか、調査を試みた。

インターネットを通して、豊中、吹田、茨木の3市について、新聞とデータベースについて調査した結果、市立図書館で提供されているのは、新聞は主として5大紙が提供されており、そのほかは日経金融、日経産業などの提供がある。データベースの提供は吹田市立図書館の「ちさと」分館が最も多く、日経テレコン21と朝日・毎日があった。そのほかCD-ROMで提供されているものもある。内容はおおむね新聞情報である。

公共図書館の連携協力先として大学図書館が考えられるが、地域の大学図書館は相互貸借や閲覧において協力関係にあるが、データベースについては、特に有料の契約データベースはID、パスワードによって制限がかけられており、自由に使える状態にはない。

地域のビジネス支援施設として、商工会議所やインキュベーションセンターなどが考えられるが、これらとの連携も十分には行われていない。

図書館から外に向けてアピールし、図書館に人を呼び込み、さらに利用者がかける時間と費用と得られる質を総合的に判断しうるような情報提供も求められるであろう。図書館が今後は北摂地域の公共図書館の状況についてさらに調査を進めていきたい。

(文責:村上泰子)