「マルチメディアと図書館」研究グループ

研究例会報告


テーマ:「Web2.0とウェブ・アクセシビリティ」

発表者:村上泰子(関西大学文学部)

日時:2007年6月30日(土)14:30〜16:30

会場:大阪市立大学梅田サテライト会議室


今回は、村上が「ウェブ・アクセシビリティ」の現状と課題について報告した。

ここでいう「ウェブ・アクセシビリティ」とは、情報のアクセスにハンディを持つ、高齢者や障害者などにとって、ウェブを通じて提供される情報がどの程度アクセスしやすいかを意味するものである。

まず、障害者の情報入手先について、内閣府共生社会政策統括室や総務省情報通信政策研究所が実施した調査を用いて、インターネットを「利用して困ったことがない」割合が他メディアに比較して少ないこと、地域格差が大きいこと、障害の種類によって、利用に困難を感じる点が異なることを示した。

ウェブアクセシビリティの現状に関する実態調査事例として、自治体サイト調査、教育委員会・教育センター調査、世界20カ国調査の例を紹介した後、国立大学図書館協議会が1997年と1998年に作成した報告書と米ウィスコンシン大学が2005年に実施した図書館のオンラインデータベースのアクセシビリティ調査を取り上げた。国立大学図書館協議会の報告書は当時の分析としては、非常に多岐に亘り、また新しい技術動向にも対応した検討がなされていた。しかし、それが実態に反映されたか、という点に疑問が残った。ウィスコンシン大学の調査は、各データベースがウェブ・アクセシビリティの指針にほぼ合致していたものの、文書フォーマットの問題などから実際には使いにくいこと、指針に合致していることが、必ずしも利用しやすさに繋がっていないということが指摘されるものであった。

実際にいくつかの検証ツールを用いて、報告者の所属する大学図書館を例に検証を試みた結果を紹介した。検証レベルの設定により異なるが、最も基礎的なレベルはほぼクリアされていた。ただし、検証レベルを上げると、とたんに問題点が噴出する。一方、国際標準ガイドラインであるWCAGの完全自動化チェックは難しいとの声もある。

最後に、Web2.0の技術をはじめとする現在利用可能な技術とアクセシビリティについて、CSSの可能性と問題点、Javascriptの問題点とそれへの対応、WAIによるAjaxへの対応指針などについて報告した。

(文責:村上泰子)