「マルチメディアと図書館」研究グループ

第64回研究例会報告


テーマ:「ISI(Institute for Scientific Information) 、LC(library of Congress)、NLM(National Library of Medicine)の見学の報告」

発表者:慈道佐代子(京都大学附属図書館)

日時:2002年9月28日(土)14:30〜17:00

会場:大阪市立大学医学部分館


Thomson ISI(東京事務所)棚橋氏のご尽力を得て、ISI本社(Philadelphia, Pennsylvania)とデータ作成編集室(Cherry Hill, New Jersey)を見学した。

1957年、ソ連は人工衛星スプーニクの打ち上げに成功した。いわゆる米国を襲った「スプートニク・ショック」である。この遅れの原因を徹底的に究明され、『ワインバーグ・レポート』で「科学技術情報の流通体制に問題があった・・・」と報告された。ソ連に追いつき追い越せと図書館関係予算が増額された。このような背景のもでISI社(Institute for Scientific Information)は、1958年Garfieldによって設立され、設立と同時期に目次速報誌を創刊、次々と各分野に拡大していった。1964年には『SCI』を創刊し、その後も『SSCI』、『A&HCI』等研究者のニーズに沿ったツールを創刊していった。

ISI社のvisionは、高品質で学際分野の研究情報を提供すること、書誌計量学と科学界の情報流通のパイオニアにある。提供されている2次資料は、常に3つの改善:「データの質の改善-品質保持」「製作工程の改善-速報性」「作業効率の改善-コスト」を念頭に作成されている。データ量は2001年で約4千万件、平均の処理日数は5.8日で、『A&HCI』は特別な処理をしている。それは全文を読み、明確な書誌として存在するもので引用リストにないものをリストアップしていること、ポートレートや挿絵も同様にリストアップしている。作業は、経験を積んだスタッフで進められており、平均16年である。作業工程は、まず到着した雑誌の背をカットし、スキャナーで読み取りテキスト化することから始まる。データの確認、項目化を経て採取したデータは『SCI』、『SSCI』、『A&HCI』に分けられる。作業中チェックを繰り返され、正確率は99.97%を誇っていると説明があった。但し出版社の誤りは直さない方針であるとのこと。製作工程は、ISI社独自の開発により相当オートメ化が進んでいるようだ。万が一のために、作業中2度その段階のデータをOptical Discにして、アイルランドにあるISI社編集室に送られている。

現在のスタッフ総数は約850名、この人数で全世界をシェアしていること、主題検索ではみられない引用検索を利用することにより、異なる分野にまで広がる引用の流れから、学問の広がりをみることができるCitation Indexの生産現場を見学することが出来、月並みな表現であるが良かったと思う。

(文責:慈道佐代子)