「マルチメディアと図書館」研究グループ

第59回研究例会報告


テーマ:「CALIS(China Academic Library and Information System:中国高等教育文献保障系統)について

発表者:呑海沙織氏(京都大学附属図書館)

日時:2002年2月2日(土)14:30〜17:00

会場:大阪市立大学医学部分館


中国の高等教育は1980年代後半に大きな転換点を迎え、教育が経済発展戦略の基礎に位置付けられ、様々な法整備等も進められた。そうした高等教育の変化は、学術図書館における豊富な資料への要請を生む一方、現実の図書館単館は極めて貧困な状況にあることへの認識を増した。そして図書館コンソーシアム形成の動きが活発化するに至った。

CALISは1998年に中国に生まれた全国規模の学術図書館コンソーシアムであり、中国政府からの助成金を主たる財源としている。総合目録データベースの作成・提供、ILLから資料の共同分担収集にいたるまで、取組みの範囲は非常に幅広く、電子ジャーナルのライセンス契約にも取り組んでいる。CALISのライセンス契約の特徴は、単にアクセス権を取得することにとどまらず、国内ミラーサイトの設置に取り組むなど「所蔵」への移行にある。

一方大学間の格差等の問題も山積し、民営的運営導入も視野にある中で、継続的、安定的に有益なコンソーシアムを形成していくことができるか、注目される。

なお、詳細については『情報の科学と技術』52巻5号(2002)「中国における学術図書館コンソーシアム」(p.272-277)を参照されたい。

(文責:村上泰子)