「マルチメディアと図書館」研究グループ

第43回研究例会報告


テーマ:「国立国会図書館関西館(仮称)における図総研(仮称)の計画について」

発表者:北克一(大阪市立大学)

日時:2000年6月24日(土)15:00〜17:00

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


<はじめに>

関西文化学術研究都市の国立国会図書館関西館(仮称:以下、関西館という)の開館が2003年にせまり、その中身について具体的な計画が大いに注目される。今回は中でも「図書館・情報関係分野の研究開発及び研修」に関わって、「図総研(仮称)の組織・運営に係る調査」のタイトルで今年3月に公表された報告書の検討である。

<関西館の基本計画>

関西館はその基本計画の中で「文献情報の発信機能」、「世界に開かれた図書館サービス」、「図書館協力」の3つを基本に、以下の5つの機能を果たすものとされている。

<図総研>

今回発表された「図総研」に関する調査報告書は、平成10年度から12年度の3か年にわたる調査研究プロジェクト「図書館情報学における研究開発・研修交流のあり方に関する調査」の最終報告書である。NDL図書館研究所が実施主体となっている。

第一に研究開発および研修事業へのニーズを知るため、「図書館職員への質問調査」および「関連機関ヒアリング」が実施され、質問調査からは研修テーマとしてレファレンス・サービスと資料保存へのニーズが圧倒的であったこと、ヒアリングからは電子図書館の国内研究開発でのリーダーシップ等、多様な要望が寄せられたこと、研修充実に組織的取組みを進めているのが国立大学図書館協議会であること、などが報告されている。

第二に研究開発の方向性とプロジェクトモデルが提示されている。当面はNDLが独自に企画したプロジェクトを実施し、実務的課題の解決に重点が置かれる。予算規模は人件費を除いて3か年で総額2億円程度と想定されている。

第三に研修事業の種類として、テーマ別研修、研修の支援・基盤整備、遠隔研修、特定対象者限定プログラム、海外向けプログラムなどが挙げられている。

その他、NDL人的資源の現状と問題点について触れられている。

<検討>

以上の報告書について主として次の点が指摘された。

研究開発プロジェクトについてNDLの独自性があるとすれば、それは「日本で最大の図書館現場を抱え、日本で最も複雑な図書館業務を行っているNDLは、研究の必要なテーマも多く上がってくること、そしてその研究成果物であるプロトタイプを試す場もある」という点であるだろう。しかしその具体例として資料保存分野しか挙げられていないのは残念である。

プロジェクトの予算規模が小さい。関西財界にアピールする研究課題の必要性が指摘されているが、現状の関西館の財界へのアピール度は極めて小さい。

参加者からは、報告書の中でナショナル・ライブラリーとしての機能が期待されていることが触れられてはいるが不十分で、関西という立地であれば国立国会図書館の分館「関西館」ではなく、独自のナショナル・ライブラリーとして立ち上げることができなかったのだろうか、といった指摘、等いくつかの意見交換があった。

(文責:村上泰子)