「マルチメディアと図書館」研究グループ

第35回研究例会報告


テーマ:「文部省地域電子図書館構想とその課題」

発表者:北克一(大阪市立大学)

日時:1999年6月19日(土)15:00〜17:00

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


<はじめに>

今回は、文部省生涯学習審議会を中心に進められている地域電子図書館構想の現状と課題について報告された。

<文部省生涯学習審議会>

文部省生涯学習審議会では、昨年9月に「社会の変化に対応した今後の社会教育行政の在り方について(答申)」(URL: http://www.monbu.go.jp/singi/syogai/00000217/)を、さらに同審議会社会教育分科審議会計画部会図書館専門委員会が10月に「図書館の情報化の必要性とその推進方策について−地域の情報化推進拠点として−(報告)」(URL: http://www.monbu.go.jp/singi/syogai/00000227/)をまとめている。後者の提言の中のひとつである「地域電子図書館構想」はLCのAmerican Memoryを範とし、郷土の歴史的資料や生活関連情報を主に生涯学習や教育利用の観点から体系的に電子化し、活用していこうというものである。文部省は既に1997年度から1999年度までの間に、年間約6億円の予算を組んで、社会教育施設情報化・活性化推進事業に充てており、その中に地域電子図書館構想に取り組むものが見られる。

<地域電子図書館構想>

社会教育施設情報化活性化推進事業の委嘱先14地域のうち、地域電子図書館構想と銘打っているものは5事業であり、その他のものは青少年教育施設や視聴覚センターや博物館等が中心となっているものである。これらのホームページを確認していくと、サーバを図書館が管理している実質図書館主導型のものは秋田県の事業(URL: http://www.manabi.pref.yamanashi.jp:8080/archive/contents.html)のように、学校図書館から公共図書館の資源を利用できるようにしているものが見られる以外は、計画の中に全く図書館が見えないものが殆どである。

<さいごに>

地域の情報化へ向けての取組みが始まったとき、ネットワークの維持管理、載せるべきコンテンツについての全体像の提示と提案、それを利用する人のリテラシー教育、に関して図書館が主導権を握れない現状が見えてきた、といえるのではないか、また、現在載せられているコンテンツについても十分に地域の教育に役立つ情報が提供されているとはいえないのではないか、といった課題が指摘された。

<質疑>

これまでにどれだけ情報化への取組みに対応できてきたか、という普段の力がいま試されており、これは大学図書館に関しても言えることではないかということから、地域を大学に置き換え、電子図書館構築における図書館主導性について議論が及んだ。

(文責:村上泰子)