「マルチメディアと図書館」研究グループ

第21回研究例会報告


テーマ:「電子図書館と著作権−−WIPO著作権条約の改正以後の動向を中心に(中間報告)」

発表者:村上泰子(梅花女子大学)

日時:1998年2月14日(土)15:00〜17:00

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


<はじめに>

今回は、1996年12月20日のWIPO著作権条約締結以後の状況を、法改正の視点と電子図書館との関わりを軸に、改めて検討した結果が報告された。

<WIPO外交会議>

WIPO新条約のための外交会議で討議された内容のうち、電子図書館と関わりの深いと思われるものとして、

の3点が挙げられ、説明が加えられた。

<日本の著作権法改正>

次に、WIPO新条約を受けて改正された日本の著作権法の改正点として、「送信可能化権」、「同一構内コンピュータ・プログラム配信についての権利」、「公衆への送信」に関わる用語、の3点が挙げられた。

<情報のデジタル化と著作権法>

今回の著作権法改正によって対応しきれていない点として、

の4点について検討された。

<電子図書館と著作権>

現在進行中の電子図書館プロジェクトにおける著作権問題への対処の仕方を見ながら、その問題点として、有効な著作権処理方法がとられていないこと、著作権の問題をバイパスできるもののみを取扱っていること、などが指摘された。

<図書館と情報のユニバーサルサービス>

情報化社会の図書館の役割と人に求められる能力について触れられたあと、図書館が情報のユニバーサルサービスたりうる要件について検討がなされ、電子図書館維持のための対価支払いが個人によってなされるか、社会的になされるかは、図書館がどの程度ユニバーサルサービスとして社会的合意が得られるかによるのではないか、との提起がなされた。

<質疑>

インタラクティブ送信、著作権のあるデータベース、放送の特権、同一構内におけるソフト利用など著作権に関する質問がいくつか出されたあと、主として電子図書館の進む方向について意見交換が行われた。

(文責:村上泰子)