「マルチメディアと図書館」研究グループ

第11回研究例会報告


「大阪市立大学学術情報総合センター見学会」

日時:1997年3月22日(土)14:00〜16:30

会場:大阪市立大学学術情報総合センター


見学記

平成8年10月にオープンした大阪市立大学学術情報総合センターは、総工費300億円、地下4階地上10階、延床面積37,434平方メートルの、キャンパスでも一際目立つシンボル的存在としてそびえ立っている。屋上からは通天閣や大阪ドーム球場など市街も一望できる。今回はこのセンターを同センターの北克一助教授の案内により見学させていただいた。

『図書と情報の館』を基本コンセプトとし、従来別々に存在していた、計算機センター機能、LL機能、図書館機能を統合の上、「図書館機能」「情報発信機能」「ネットワーク機能」「情報処理機能」の4機能に再編した。それぞれの機能に対して研究部門が存在しているのも大きな特徴となっている。

今回はこれらの機能のうち「図書館機能」と「情報発信機能」を中心に見学した。

機能からみた図書館

図書館機能の中でも特に強調されているのがネットワーク機能を利用して学内外に情報を発信することである。提供されている情報のほとんどをホームページ上で見ることができるので、ここでは主な特徴について簡単に紹介するにとどめる。

  1. 蔵書目録(OPAC)

    約180万件を目指しているが、現在は遡及入力は未実施。 データは貸出し対象図書40万冊と雑誌全点30万冊の計約70万件のみ。インタフェースにはNetscapeなどのビューアを用いている。館内の端末も専用端末は置かず、すべてパソコン上のNetscapeによる。

  2. 電子図書館機能

    学内で生産される紀要類の全文データベース、附属図書館所蔵の貴重図書全文データベース、マイクロフィルムの画像検索システム、阪神大震災画像データベース検索、などのサービスを提供している。

    貴重図書のうち「伏見屋善兵衛文書」ではクリッカブル・マップとの連携、文字の音声変換、など様々な試みを見ることができる。

    マイクロフィルムについては、WWWブラウザから検索されたマイクロフィルムの画像が動的にディジタル化され、ネットワークを介して提供されるという国内外初のシステムを導入している。

  3. CD−ROM

    学内利用のみ。現在25種類のCD−ROMが提供されているが、ネットワーク対応のCD−ROMについては高額なため、一般資料とのバランスを保つ必要がある、と補足説明された。

  4. VoD

    Video on Demandシステム。著作権処理されたビデオ(現在10本)について、ネットワーク経由で提供される。クライアントパソコン上にビューアさえあれば、MPEG1、MPEG2などどのような方式にも対応可能。

場所としての図書館

  1. 会議室

    最上階には大小様々な会議室(いずれも見晴らしが良い)が用意されている。

  2. 吹き抜け建築

    1階から7階までの中央部分が吹き抜けという贅沢な構造になっている。当初心配していたほど空気循環の悪さはない、とのことであった。

  3. AVブースコーナー

    このブースについては利用が少なく、同じスペース内に設置されているインターネット接続可能な端末が使用時間を制限しなければならない状況であるのとは対照的である。宣伝をする必要があると考えている、との説明があった。ビデオデッキなどの所有率が高いこと、ビデオや音楽などは1〜2時間通して視聴するものであり、家で落ち着いて視聴したいとの気持ちが強いこと、なども理由として考えられる。

その他

図書館内の蔵書検索はNetscapeを用いて行うようになっている。それしか動かせないように設定しているにもかかわらず、利用者によってシステムに勝手に変更が加えられることがあるとのことであった。定期的な初期化など何らかの対策が必要である。

建物が高階層構造のため、エレベーターに頼らざるをえない部分が大きい。特に開講時は学生によるエレベーター利用が多く、混雑と不便を引き起こしている。可能ならば6階程度にとどめておくのが理想であろう、と説明があった。

最近オープンした多くの図書館で聞かれる問題であるが、水光熱費など維持管理コストがかさむ点に頭を悩ませているとのことであった。

おわりに

センター自体が研究の実験室になるとともに、研究成果がセンターのサービスに反映されるという両者の関係は非常に挑戦的な試みであり、今後の取り組みに期待が膨らんだ。

(報告者:村上泰子)