W.マーケティング〜新商品開発の決め手〜

 

 

  1989年6月に独立した良品計画は、元の西友の無印良品事業部の「モノの実質」を追

 

  求する、商品開発に取り組むという姿勢を受け継ぎ設立され、多くの「モノの実質」

 

  にこだわる生活者の支持を取り付けた。その結果として、無印良品の価値は、普遍化

 

  し、今日に至っている。言うなれば、無印良品にとって、商品企画・開発こそが、ま

 

  さに生命線なのである。

 

 

  では、商品開発の決め手は、どこに、見いだすことが出来るのだろうか。それは、以

 

  外にも「一番良い情報はお客様からの商品に対する苦情」という所にある。客の苦情

 

  をひとつひとつ、潰していくことが商品の品質向上につながる。それが、次のステッ

 

  プとして、新しい商品の開発につながっていくのである。その商品開発において、客

 

  の苦情を記録する「消費者情報カード」、無印良品の支持者を対象とした「来店者調

 

  査」そして、不特定多数の人を対象とした「社外モニター制度」を導入し、より幅広

 

  い消費者の情報に接する機会を設けることによって、迅速なアクションに取り組んで

 

  きた。このように、無印良品の原点は、客により近い川下部分にある。その視点は、

 

  いわば、利用者の立場に立ったもので、その立場に立てば、NB(ナショナルブラン

 

ド)が、いかに、利用者の視点に立った商品づくりを進めていないかが分かる。

 

 

  クレームを活かす、無印良品の商品開発は、「直接、客の情報を商品開発に活かす」

 

  これが、本当のマーケティングであり、価格もさることながら、ブランドに「良品」

 

  を付けている以上、品質に見合った価格が生命線である。それだけに、その一点を追

 

  求する無印良品に、NBは太刀打ちできるものではない。

 

 

 

 X.ライバル〜GAPの進出〜

 

 

    無印良品のライバルの1つとして、衣料分野でのライバルといえる、GAPを取りあ

 

  げたいと思う。1995年、日本にアメリカのカジュアル衣料最大手である、GAPが進

 

  出してきた。小売流通業の最先端を行くアメリカで、しかも、商品の値頃感から消費

 

  者を引きつけ、急成長を遂げたGAPは、商品構成が、無印良品と共通する部分が多

 

  く、また、低い価格設定を打ち出してきた。無印良品を世界に通用する商品にするた

 

  めには、国際競争に打ち勝つことができるゾーンに無印良品の価格を設定しなければ

 

  ならない。そのためには、どのような改良がなされたのであろうか。第一に、良品計

 

  画は海外調達に早い段階から取り組み、今や無印良品全体の5割を海外調達に切り替

 

  えている。第二に、かつてあった、問屋ルートからの仕入れを、ほぼ全面的に、直接、

 

  メーカーからの仕入れ取引に切り替えている。第三に、全商品に関して、現金による

 

  買い取り制に踏み切っている。これなどは、良品計画が、いかに価格に見合った、商

 

  品開発や価格設定に取り組んできたか分かるであろう。このようにして、さらなるコ

 

  スト低減に向けての努力がなされた。無印良品の主力が、日常の消費財であり、この

 

  考えに立てば、仕入先のメーカーも多く、大量な、仕入れによるコストダウンを図れ

 

  ば、価格競争にも十分、太刀打ちできるということである。このように、GAPは無

 

  印良品の、良きライバルであり、良き手本になっていて、今後の展開が期待できる。