T.はじめに 〜無印良品の誕生〜
無印良品は、西友のプライベート・ブランド商品として1980年に誕生し、「わけあっ
て、安い」のコピーでデビューした。合理化と経済性を兼ね備えた商品のイメージを
たった7文字の行間に織り込んだこのフレーズは、「有り余るモノの洪水の中で、日
用品の素顔を見せ、生活を飾らないで楽しもう」という、無印良品が追い求めた商品
コンセプトを凝縮したものであった。
そして、1989年6月西友の無印良品事業部から独立し、現在の株式会社「良品計画」
が設立された。現在、無印良品を扱っている店舗は、直営店舗だけでなく、百貨店・
ショッピングセンター、そしてコンビニのファミリーマート、その他様々な場所で見
ることができる。そして、日本だけでなく海外にも出店している。日常的で、未だ人
気が衰えない無印良品の実績と成功要因について考えてみたいと思う。
U.無印良品の商品開発 〜ムダを省いた商品開発〜
無印良品の開発には三つのポイントがある。
第一に、素材の選択であり、日常的に見過ごしがちな、基本的なモノづくりの為の素
材を見直す。そして、品質は変わらないのに、見栄えの為に捨てられているモノを発
見する。例えば、均一の大きさで曲がっていない野菜は、本来の品質とは関係ない。
第二に、工程の点検であり、選び分けたり大きさをそろえる手間もかからない。そし
て、商品本来の品質に関係ないムダな作業を省き、必要な工程のみ選ぶということで
ある。第三に、包装の簡略化であり、モノの本来の形や色を重視し、過剰な包装をし
ない。商品は、成り立ちの理由が印字されているパッケージであっさりと包まれてい
る程度である。とにかくムダを省くということである。
無印良品は商品を見ても分かるように、シンプルで、なおかつ必要最低限のつくりを
している。色鮮やかな商品やブランド商品が当たり前となっている、主に無印良品の
客層の中心である20歳前後の人にとって、再生紙やクラフト紙などの色のない商品は
新鮮に見える。そして、戦後に生まれた人にとっては、再生紙やクラフト紙は、子供
の頃に使っていたという、一種の独特の郷愁の様なものを感じる。このように、若い
世代には新鮮であって、年輩の人たちにとって、一種の昔懐かしさ、郷愁を感じさせ
ずにいられない商品を扱っている、ここに、無印良品がヒット商品となる大きな要素
があるといえる。
無印良品の商品のキーワードは、第一に、暮らし易く・使い易く・着心地の良い・生
活者本位のモノづくり、すなわち、シンプル・イズ・ベターということである。第二
に、可能な限り、経済的で、環境に配慮したモノづくり。第三に、生活者とモノとの
共存、すなわち、さりげなく・おごらず・でしゃばらずということである。