安さでは勝っているマクドナルド、しかし、実際は品質や味を優先したモスバーガーの方が好きだという人がマクドナルドに勝らずとも劣らず多い。では、なぜマクドナルドが優位なのか？
まずあげられるのは、店舗数である。モスバーガーに対して店舗数は１０００店舗以上上回っている。モスバーガーは、その店舗数の少なさ故にせっかくのユーザーを逃してしまっているのだ。
さらに、立地の問題である。モスバーガーは今まで「２等地戦略」を行ってきた。しかし、現在、当時の２等地であった場所が３等地、４等地になってしまっている。さらに、フランチャイズが中心であるので店舗を移動させることも難しい。これもユーザーを逃す原因となっている。それに対してマクドナルドは、１等地に店舗が多くさらに、時代やお客にあわせてロケーションを変えている。
次にスピードの問題である。モスバーガーは質の良さとおいしさ、つまり「デキタテ感」を提供するために、オーダーをお客からもらってからつくるのでどうしても時間がかかってしまう。マクドナルドは客数の時間による変動に併せて作り置きをしてスピーディーに商品を提供する。この場合、「デキタテ感」が損なわれてしまうが、ファーストフード店にとってスピードは重要なポイントであるので、やはり、ある程度の品質と味を素早く提供できるマクドナルドが優位なのである。それに、単純に考えて、同じ時間の間に客の数の差が何倍も出てしまえばいくらマクドナルドが安いと言っても売り上げはマクドナルドが勝ってくるだろう。
次に、ポテトや飲み物などがその理由のひとつに挙げられる。マクドナルドでハンバーガーだけを単品で買うお客は少なく、多くはポテトや飲み物、その他の低価格どおりの商品まで連れられていっしょに購入するケースが多い。さらにこれらは原価率が非常に低い。したがって、ハンバーガーが売れれば売れるほど利益が拡大するのである。
さらに、「バリューセット」である。「バリューセット」は９ヶ月間で２億食という驚異的な記録を残したヒットメニューである。マクドナルドは８７年に「サンキューセット」で３９０円のセット、８８年に「サブロクセット」で３６０円のセットを投入してきた。しかしこれは、バリューセットに先駆けて試験的に行われてきたという理由だけではない。マクドナルドの狙いは、｢食事化」への誘導・定着にあった。ハンバーガー単体では、どちらかというと、おやつに近いだろう。そこで、先にあげた2つのセットメニューにより「食事」としてハンバーガーを食べるということを刷り込もうとしたのである。そして、94年に「バリューセット｣が登場し、大成功を収めたのである。