「マクドナルドと日本人」
７０年代の若者にとって、マクドナルドは「憧れ」であった。それは当時の日本人にとってアメリカは憧れであったからである。しかし、若者がかっこいいものとして受け入れたハンバーガーを全ての人が受け入れたのではない。大人は、「子供のおやつ」と見下していた、それが大人から見た当時のハンバーガーだったのである。
８０年代は、高度経済成長期に沸く日本人にアメリカへの意識が薄れ始めた年代である。高度経済成長は生活習慣の変化をもたらし、思わぬ時間帯に思わぬ年齢層の人々が食事を外でとるということを引きおこした。これは、人々が時間に追われ始めた事を意味し、時間の無い人々が何を求めているかを考えさせることになる。この問題をマクドナルドは、どこよりも「早く安い」を前面に押し出したことにより、大人にも関心をもたせたのである。
７０年代のマクドナルドは「食」としての意味合いが強く、８０年代になると「場所」としての意味合いが強くなる。それと共に朝食メニューやドライブスルーなど時代のニーズに応えるマクドナルドの動きも見られ、自分達のニーズに応えるマクドナルドに人々は、「憧れ」よりも「親しみ」を感じるようになった。親しみを感じることにより気軽に入れる空間へと変化し、集客力も自然と増えるのである。
８０年代の若者の子供である９０年代の若者にとって、マクドナルドは小さい頃から連れて行かれているため前の年代よりも自然にあるものと感じている。これは、「溜まり場」へとつながり、その時代に適した背景が見られる。
学歴社会・交通機関の発達は遠距離通学を生み出し、マクドナルドに立ち寄るという図式を作り出した。しかしマクドナルドは「食」としてではなく、あくまでも「場所」なのである。マクドナルドが彼らに何かを与えるのではない。彼らが何かを行いに行くのでもない。規則に縛られる若者にとって数少ない自由な時間を得るために行くのである。