I?modeの成功要因を考える際にはずすことのできない事柄、それは「e?mail」であろう。そもそも「e?mail」とはどういうものであるかというと、パソコンの端末同士で、「はがき、便箋をもちいずに自分の意思を液晶の文字にして送る」といったものである。これはパソコンによるインターネットによって発達したものである。
少し時間をさかのぼると、五、六年程前に「ポケベル」が流行した。当時、個人で携帯できる端末にメッセージを送れることで話題を呼んだ。ところが、受信はできても送信ができず、メッセージは家庭用電話機か公衆電話によって送信していた。ここで、PHSの「Pメール」が登場した。送信できる文字数は変わらなかったが、大きく変わった点は自分の所有する端末から1メール¥10で送信できるようになったことである。いわゆる「ポケベル+携帯電話機」であった。この時点で、電話料金の手ごろさ等から、携帯電話の普及率は、かなり低かった。
ドコモは、携帯電話を発展させた自動車電話にあまり力を入れてなかったが、経済社会が成熟してだんだんと「物」が充実してくると、「物」よりもコミュニケーションや情報などが求められるようになり、これからは携帯電話が売れると確信し、今までの売れなかった原因を徹底的に調べ上げた。ネットワークの作り方を全面的に整備し、料金体系を見直して保証金の廃止や、料金値下げを頻繁に実施し、端末機器を小型で軽量なものにする等、問題点をすべて解決した。その結果、携帯電話が急速に普及したのである。
J?PHONでは、「skyメール」登場し、今までのメールより大幅に送受信できる文字数が増え、さらに通話料、基本料金の手ごろさから学生等を中心に契約者数が一気に跳ね上がり、契約者数No.1の携帯電話メーカーになった。CMに藤原紀香を起用したのも大きなプラス材料となった。ところが、アンテナ数が少なかったために電話、メールがつながりにくいという欠点があった。それに対し、ドコモは、電波が強いが、料金が高かった。
ここで「I?mode」が登場する。今までにないまったく新しい携帯電話機ということと、NTTならほかの会社よりサービスがいいし、安心できるだろう。という固定観念の看板を背負ったドコモの商品であるということ。「I?modeメール」いわゆる前にも述べた「e?mail」が、個人の端末から1メール¥1から最大512文字の送受信が行えるようになったこと。インターネットが行えるようになったこと。等の理由によって、人々は、「I?mode」に飛びつき、またたくまに400万台を売り上げた。学生の間では、「I?mode」メールは常識になっている。パソコンから取り入れた画像を送受信でき、さらには「絵文字」を使えることによって、メールの面白みが増したこと。メールに着信メロディーをつけて送受信できること等、若者受けするシステムになっている。さらに、ビジネスマンにとっては、リアルタイムで経済情報を入手できる大きな強みになっており、「I?mode」は、既存のインターネットユーザーだけでなく、これまでインターネットを利用してなかった層にまで、インターネットを利用していることを感じさせることなく、インターネットの世界に取り込んでいるのである。すなわち、「話す携帯」から「見る携帯」に変わったのである。
さらに、ドコモは、全国カバーの統一ブランドで、エリアカバー率が高く、常に最も進んだ端末・サービスを提供し、次世代システムを含めた自社内でのR&D能力に優れており、「音声から非音声へ」「動くものすべてへ」「国内から海外へ」の3つの軸により更なる成長を目指している。ところが、「I?mode」の斬新性は高く評価されているが、基本的には、既存技術を多用しており、インターネットの世界標準に準拠して作られている。対応端末には、サイト閲覧やメールに適した大型画面、片手でも入力可能なキーなどインターネットを利用する上での利便性を高めるとともに、100g未満の重量など、携帯電話であることにこだわりを見せたドコモの発想と、それを実現する技術が導入されている。そしてそれが、携帯電話史上初のカラー液晶の携帯電話を生み出し、「かっこいい」「かわいい」携帯電話が登場したのである。ところがそれらの人気機種(特に折りたたみ式)は値段が高い。しかし、日本人の性格である「ブランド志向」により、多くの人々がそれを買うのである。
すなわち、社会のニーズにマッチしており、携帯電話が全世代に普及する前から携帯電話は必ず売れるという確信をもち、改善できるところは改善していったことである。そして「I?mode」という、ほかの電話会社に見られない斬新なアイデアを出しつつ、NTTが培った高いエリアカバー率が、NTTドコモ「I?mode」の成功要因といえる。
(NTT DoCoMo Annual Report 2000
ドコモ通信 秋号 vol.6
ドコモ通信 春号 vol.4
ドコモ通信 秋号 vol.2 参照)