品川哲彦『倫理学入門』、もくじと著者による解題 

 

 品川哲彦

『倫理学入門――アリストテレスから生殖技術、AIまで』

中央公論新社

2020年7月25日

ISBN978-4-12-102598-2

 

 

 まえがき i

 もくじ 

 第1章 倫理と何か。倫理学とはどういう学問か。     1

1 倫理と倫理学                 1

倫理と道徳とを区別する / ひとと「一緒」の二つの意味――共同体と社会 / 倫理と道徳は重なり合う / 倫理的判断の普遍妥当性要求 / 倫理について考える学問、倫理学が、なぜ必要か / 倫理学の三つの部門――規範倫理学、記述倫理学、メタ倫理学 / 善と正との違い、権利と義務の対応・非対応 / 倫理規範をグルーピングする

 2 法・政治・経済・宗教と倫理          10

law of nature――どう訳すか / 法は必ずしも倫理と一致するとはかぎらない――法実証主義 / 法と倫理についてのまとめ / 政治は力だ――パワー・ポリティクス / 政治は力か――言説空間としての政治 / 政治と倫理ついてのまとめ / 商品、財、経済的人間 / 市場での取引の背景には人びとの暮らしがある / 経済と倫理のまとめ / 神が命じるから正しいのか、正しいから神が命じるのか――プラトン / 宗教と倫理についてのまとめ 

 第2章  代表的な倫理理論                45

1 倫理を作る――社会契約論            45

 万人の万人にたいする戦い――ホッブズ / 労働から所有が発生する――ロック / 不平等の起源と一般意志――ルソー / 不平等は最も恵まれないひとの状況の改善に役立てられねばならない――ロールズ / 市場での契約こそが自由を実現する――リバタリアニズム / 倫理理論としての社会契約論 

2 人間の尊厳――義務倫理学             66 

自由は、理論理性では、したがって科学では証明できない / 傾向性の支配からの意志の自由すなわち自律――カント / 人間の尊厳と理性の事実 / 道徳はコミュニケーションによって基礎づけられる――討議倫理学 / 倫理理論としての義務倫理学 

3 社会全体の幸福の増大――功利主義         81 

最大多数の最大幸福――ベンタム / 他者危害原則――J・S・ミル / 行為功利主義と規則功利主義 / 倫理理論としての功利主義 

4 他者への共感――共感理論             95 

倫理の基礎は感情にある――ヒューム / 誰もが共感能力をもっている / 倫理は自然のなかに根ざしている――ヒトとチンパンジーの違い / 倫理理論としての共感理論 

5 善きひとのなるための修養――徳倫理学       105 

普遍的な原理と徳との違い / 徳の修得は技術の体得に似る――アリストテレス / 共同体と徳倫理学 / 近代の倫理理論と徳倫理学の反転関係 / 倫理理論としての徳倫理学 

6 付論。責任やケアにもとづく倫理理論               117 

今生きている者は未来世代にたいする責任を負っている――責任という原理 / 人間の傷つきやすさ――ケアの倫理 / 倫理理論としてのケアの倫理

 第3章 ひととひと                                      125

1 市場                      125

 一人前の職業人となる物語とその崩壊 / グローバリゼーションと倫理――自由と自己責任 / しかし、グローバリゼーションに合った別の倫理的な変化がありうるかもしれない / 市場だけで社会が成り立つわけではない

2 国家                      135 

再分配システムとしての国家 / 運平等主義とベーシック・インカム / 助けを必要とするひとを助けるひとも助けを必要としている――ヌスバウムとキテイ / 国家の構成員は、なぜ、どこまで、たがいに助け合うべきか / 移民――どう対応すべきか 

3 戦争                      149

 戦争にも倫理規範がある――開戦条件規制と戦時中規制 / 自国を維持するとはどういうことか――ルクセンブルクの例 / 自国民の戦災被害にたいする国家の責任 / 未済の過去は反復する / 他国民や戦争捕虜にたいする強制労働――ドイツの例 / 他国の民間人を強制労働させた責任 / 自国の過去を引き継ぐ責任

 第4章 ひととその体                   167

1 私の体は私である                   167

ヒポクラテスの誓い――西洋の医の倫理のはじまり / 実験医学の誕生――人体実験は許されるか / ナチスによる強制的な人体実験とニュルンベルク綱領 / インフォームド・コンセントの成立――世界医師会のヘルシンキ宣言 / インフォームド・コンセントの倫理的根拠

2 私の体は私のものか                  179

安楽死概念の多義性 / 死ぬ権利という概念は成立するか / 私の体は私のものか / 人格は体にスーパーヴィーンする

3 科学技術による子への操作               188

技術の制御しがたさ――生殖技術の展開 / 遺伝的条件による子どもの選別 / クローニング技術でひとりの人間を作ってもよいか――功利主義と討議倫理学による反論 / いったいなぜ、私は他者を必要とするのだろう――デカルトとフッサール / 他者としての子ども――レヴィナスとアーレント

4 これから生まれてくるひとのために         203

なぜ、未来倫理学が必要なのか / 正義と権利を基礎とする未来倫理学――アーペルとロールズ / 責任を基礎とする未来倫理学――ヨナス

 第5章 ひととひとでないもの                209

1 人間の外なる自然 209

環境と自然の区別 / 苦を感じるものを苦しめてはならない――功利主義の動物倫理学 / 生態系はまるごと維持されねばならない――レオポルドの土地倫理 / 自然物は原告になりうるか――ストーンの問題提起 / 自然における人間の位置――神学・形而上学を背景にした環境倫理理論 / 徳倫理学による環境倫理理論

2 ひとが造ったもの 222

機械化と失業――人間のために市場があるのか、市場のために人間がいるのか / AI搭載ロボットを兵士として用いてよいか、よくないならなぜか / 製造物にたいする製造者の責任 / AI搭載ロボットに子育てや介護を任せてよいか、よくないならなぜか / 人工知能の発達と再分配システムとしての国家

3 宇宙からの客人との対話         234

「宇宙人」を想定する哲学的意味 / 星界からの客人との対話

  第6章 倫理的な観点はどこからくるのか             253

審級――倫理的な是非を判定する場 / 倫理的配慮の拡大と新たな審級の決定  / AI搭載のロボットや宇宙人は新しい審級を形づくるか / 倫理的な観点はどこからくるのか

 あとがき     265

 参考文献     276

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