長谷川ゼミ・ラベルワーク合宿(1999年4月)


【日時】1999年4月10日(土)13時-11日16時(日)
【場所】関西大学100周年記念セミナーハウス高岳館
【参加】関西大学商学部長谷川ゼミ(3回生21名+4回生9名)
【目的】これまでの学生生活を振り返り,今後のゼミ活動の基本方向を発見・共有する
【方法】場("Ba")づくりラベルワーク
【スケジュール】
1日目:オープニングセレモニー→グルーピングタイム1→ラベルワーク1「これまでの学生生活を振り返って」→グループ発表1
2日目:オープニングセレモニー→グルーピングタイム2→ラベルワーク2「これからのゼミの内容・方法・環境・1年後(あるべき到達点)」→グループ発表2

【特徴】

(1)1日目のグルーピングは長岡京まちづくりワークショップと同じ方式で行なった。「これまでの学生生活を振り返って今一番考えたいこと」を各自発表してもらいグルーピングを行なった。グルーピングおよびグループテーマ設定は,長岡京の時よりもスムーズに決まった(おそらく同じ学部3回生という共通部分が大きいため)。結成されたグループとテーマは,森田予備校「自由な時間とは何か」,Bチーム「商学部生は目標を持っているのか」,チーム男樹「生涯付きあっていける友達をどうつくるか?そしていかに保つか?」,THE関西「サークルに入っている人と入っていない人の違いは何か」となった。全体としてタイムキーピングを意識的に行なった結果,スピード感のある進行ができたが,一方では時間を意識しすぎてラベルワークにおける突き詰めが甘くなる(根源的な問いかけになりそう雰囲気を避ける)傾向があった。この傾向がラベルワーク開始直後から根強く見られたために,かえって時間がかかってしまった(当初から根源的な問いかけにをしていれば結果的に短時間で知的な高みに到達できたはずである:この件はバネをアナロジーとするとわかりやすい)。

(2)2日目のグルーピングは,テーマ(班)をあらかじめ「内容」「方法」「環境」「1年後」の4つとし,これを自由に選択させ,人数の多い場合話し合いで調整した(4回生は見守り役・サポーターとしてグループには参加しなかった)。なおラベルは4つのテーマについてのものを最低1枚ずつ全員が書いた。この方法は,3月の経済学教育学会研究集会で行われた1日目のラベルワークの方法に手を加えて,「学生の現状」テーマ(現状把握)を「1年後」テーマに置き換えて行なったことに特徴がある。そうした理由は,第一に現状把握は1日目に折り込まれると考えたこと,第二に21名を5-6名のグループに分割すると4つ以下にはできないからで,これに代わるテーマを探していたところ,3回生の岡田佳大(長岡京まちづくりWS参加者)の発案で「1年後」テーマを加えることとしたからである(今から思えば,「現状」「あるべき内容」「採るべき方法」「あるべき環境」「あるべき1年後(到達点)」の5つのテーマセットで行なえばより立体的・ネットワーク的なラベルワークができたのではと考えている)。

 いずれにしても2日目のラベルワークは,各班の担当するテーマはお互いに密接に関係しており,他の班との連絡・連携・協調が求められた。作業の比較的初期段階にそのことが認識され,自分たちの仕事を進めていくプロセスで,多くの他の班のテーマに関するラベルが生み出され,担当班に手渡された(ラベルによる班をまたがるコミュニケーションネットワーク)。また,「環境」班がゼミ生のパソコン所有状況をアンケートして回る,4回生や他の班からのヒアリング等が行われた。

【成果】

(1)この合宿の成果としては第一に挙げなければならないのは,ゼミ生21名がラベルワークを通じて気心しれた仲間となることができ,ゼミとしての一体感を醸成することができたことである。このことは1日目のコンパの様子に如実にあらわれていた。通常ゼミやサークルで一体感を醸成することを目的とし初顔合わせに近い時期に行われる合宿においては,事実上飲み会(一気飲み合戦)が最大の目的達成手段であることが多い。ほとんどのゼミ・サークルの飲み会が初顔合わせに限らず一気飲み合戦になってしまうのは,これによってそのままでは「気まずい」「盛り上がらない」場をなんとか盛り上げようとするからであるが,一気飲み合戦によってはその場では仲良くなれたような気がするだけで,しかもこれが急性アルコール中毒という悲劇につながっていく。

 今回のラベルワーク合宿における飲み会については,最初から飲み会における一気飲み禁止(一気飲みをした場合ゼミから除籍)を宣言しておいた。これは健康上,あるいはラベルワーク遂行上の配慮に加えて,ラベルワークを行なえば一気飲みという悲劇的手段を使わなくても心地よく楽しく飲める確信があったからである。スケジュールの遅れから10時半から開始された飲み会は,驚くべきことに当初から会話があちこちで盛り上がり続け,これが3時ごろまで続いた(こんなゼミでの心地よい飲み会は初めて経験した)。この合宿を通じて21名の学生参画型ゼミ運営に大きな可能性があることを確信した。

(2)また,まだ学ぶということ,参加するということ,仲良くなること,知的生産を行なうことが学生の頭の中では結びついていないものの,自分の頭で考えることはどういうことか,議論をするということはどういうことか,ほとんどの学生が実感できたことも今回の成果である。

(3)さらに,ラベルワークの豊かな有効性についてほとんどの学生が実感できたことも今回の成果である。ラベルを一つ一つ大事にすることの含意,ラベルとチャートに作者の個性と心境が表出すること,ラベルとチャートの相互関係,等が理解されたと考えられる。

【参考】長谷川ゼミ(演習I)履修要項(99年度)


    Author: Shin Hasegawa
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