『大学を学ぶ』から


(大学とは何か)

 大学生にとって大学とは,人生の大きな節目にあたり,自分のやりたいこと,自分の適性,時代の変化やニーズを読みとり,生き方を考える貴重な場所であり,時代であると私たちは考える。進学前に方向が決まっていた学生の場合でも,間違いのない選択かどうかを再考してみてはどうだろうか(12頁)。

(学生に求められるもの)

 自分で考え,事柄の真実を見極め,自分の知性と良心にかけて行動できる主体として,真に自立する力量をつけることが大学時代に求められている(21頁)。

 大学では,与えられる知識・情報を批判的に再吟味することが重要であり,この「批判的再吟味」は研究を含んでいると考える。一方的に受け入れるのではなく,さまざまな参考書や講義から得られるすべてを批判的に再吟味することが,学生の態度として重要なのだ(32頁)。

(高校との違い)

 …高校と違って,大学では学生を「大人」として扱う。何をするのも学生の自由だが,そのかわり責任は自分でとらなければならない。また,「正解」を学ぶ高校までの授業とは違い,ある意味では「通説」や「常識」を疑うことを教えられるのが大学の授業だ(37頁)。

 授業に加え,課外活動やアルバイトなど,多忙すぎる学生時代を避けるためにも,改善の方向としては,第一に週当たりの受講科目を減らすこと,第二に学生諸君の選択による時間割の「自主編成」が求められる(55頁)。

(学ぶとは)

 大学とは学びの場である。…ここでいう学びとは,講義や演習のみをいうのではない。サークルや自治的諸活動,ボランティア活動を含めた大学生活全体での学びを言う(56-57頁)。

 何のために学ぶのか―こう問いかける間さえ十分とれず,追い立てられるがままに突き進んで来なかったか。何のために学ぶのか―この問いは実は何度問うても問うに値する問いなのだ。そこに真の学びのヒントが隠されてもいる(59頁)。

(大学の教員の捉え方)

 …大学教員は一般に教育については未熟であるということを押さえていおいてほしい研究者としては多少は鍛えられているかもしれないが,具体的に大学教育―講義や演習をどう進めていくかについては未熟であるということ,したがって講義も決して「うまくない」。だから「講義がつまらない」ということは当たっているかも知れない(64頁)。

 大学では,教師はまず第一に,自分の探究のためのアドバイザーとして利用する気でいた方がよい(108頁)。

(大学で身につけるべき能力と就職)

 …創造的な仕事のためには,その担い手の側が,真に柔軟な思考力を保持していなければならず,そのためにはつめ込み型教育・学習ではなく,個性的=複眼的で偏らない知識を持つ,またそうした思考のできる人間として各人が自由に育つこと,このことが最も重要になってきている,ということなのだ(90頁)。

 多数のものは,専門とは直接関わりのない仕事に就いている。このようなことは社会的に見てたいへんな損失ではないかという見方もある。しかし,学生たちは専門の講義を通して体系的にものをとらえ,論理的に思考する方法を学ぶことができるし,ゼミでの発表を通して資料収集のし方やレジュメの作成方法,プレゼンテーションやディスカッションやディベートの技術などを身につけることができる。これらの能力は,将来どのような仕事に就くにしても役に立つベーシックな能力ということができる(131頁)。


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