探索的因子分析法
因子分析法には、探索的因子分析法と検証的因子分析法とがある。SPSSで分析として使用できるのは、前者の探索的な方法である。因子の構造についての仮説があり、標本間の比較を目的とする場合にはAmos(狩野・三浦(2002)と田部井(2001)に詳細な解説がある。)を勧める。
ここでは、新しいデータに潜在する共通因子を探索することを目的として、因子分析法の手順を紹介する。因子分析法のモデルの詳細は、このHP内にも記述しているので参考にしてほしい。
探索的因子分析の手順を簡単に書くと次のようになる。
a. 素点データ(被験者×変数)
b. 相関行列の計算
c. 因子数の決定(スクリーグラフ)
d. 共通性の推定(主因子法)
f. 因子軸の回転Varimax法(直交)−> Promax法(斜交:因子パターン行列)
1. 因子分析の対象となる変数
この解説で使用するデータは、例題データ2( data2.sav )である。
因子分析の対象とする変数:職業志向尺度(若林ら、1983)より
<解説:就きたい職業に、そなわっていてほしい要因を、複数の側面から測定のための9項目。項目は5件法「5:非常にたくさんあってほしい、4:かなりたくさんあってほしい、3:普通以上にあってほしい、2:普通にあってほしい、1:普通以下でよい」>
変数名 項目内容
V1 職場のみんなから受け入れられること
V2 高い給与やボーナス
V3 仕事の責任の重さ
V4 上司とのよき人間関係
V5 仕事の気楽さ
V6 自分の能力が試される機会
V7 仕事仲間とのよき人間関係
V8 休日の数・勤務時間の短さ
V9 困難な仕事へ挑戦する機会
以上
2. SPSSでの因子分析の指示
データの読み込み:例題データ2(data2.sav)を、SPSSで開く。

図1 データを読み込み、「分析(A)」−>「データの分解(D)」−>「因子分析(F)」を選択した画面
SPSSは、因子分析を「データの分解」に分類している。なお、この分類に入っている他の方法「コレスポンデンス」や「最適尺度法」は、名義尺度水準の変数に潜在する成分を分析する手法である。
次に、因子分析の対象とする変数を選択する。ここでは、「職業志向尺度」の9項目v1からv9を選ぶ。次の図が、分析変数を選択した画面である。

図2 因子分析の分析変数の指定
この図2の画面の下の「記述統計(D)」「因子抽出(E)」「回転(T)」で、bからfの手順を指示する。まず、「記述統計(D)」を押すと次の画面が現れる。
次の画面では、「1変量の記述統計量(U)」と「相関行列」の「係数(C)」だけをチェックする。他は、チェックしないこと。これによって、各変数の平均・標準偏差と変数間の相関行列(b)が出力される。指示が終われば「続行」を押す。

図3 記述統計の指示
次に、「因子抽出(E)」では、次の画面のように指定する。ここで指定したのは「主因子法(d)」で初期の解を計算すること、因子分析の対象は、「相関行列」であること、「スクリー(c)」の図を表示すること、因子数を3として分析することである。

図4 因子抽出の指定
図4において、他に指定したものとして「回転のない因子解」は、主因子法で推定した共通性での最終解を表示させるという意味である。
この伝統的な因子分析のわかりにくさの1つは、相関行列から初期の因子解を主因子法(他にもいくつもの方法がある)で計算することであろう。その理由を簡単に書く。相関行列には、変数の数(あるいは次数。このデータの場合なら9)の情報量が含まれている。この情報を何らかの基準で分解することによって、因子を抽出しなければならない。(この意味で、因子分析が「データの分解」に分類されているともいえる。)
主因子法は、数学的な基準によって、固有値・固有ベクトルの形式において、相関行列を分解してくれる。では、固有値とはなにか。これは、簡単には説明できないが、一般的な理解としては、相関行列に内在している変数間の関連について情報の中へ、1つの棒を立て、この棒に各変数を最も大きく関係付けさせる。この棒が引き出した情報量のことを固有値といい、この棒と変数との関係を固有ベクトルという。
因子のこのような分解では、最初に、最も大きな固有値(棒)を、相関行列から計算する。これを第1固有値(第1主因子でもある)と呼ぶ。この情報を差し引いた相関行列を第1残差相関行列ともいう。次に、2番目の固有値を求める。その残差から第3番目を求める、というように、相関行列の次数分(この場合には9個)を計算することができる。
次にわかりにくいことは、共通性という概念とその推定手続きであろう。古典的テスト理論では、(観測変数=真の得点+誤差)という式において信頼性を定義している。ここでは、大胆に、因子分析では、複数の変数に共通に存在している真の得点に相当する情報量を、共通性と考えていることにする。そして、独自性とは、誤差に、複数の変数において共有することのできない情報を加えたものである。因子分析に類似した方法として「主成分分析」という方法がある。因子分析と主成分分析との違いは、このような共通性を推定するかどうかにある。
実際の共通性の推定は、相関行列の対角線(変数自分自身の相関係数のこと)に最初は、1.0を入れて、主成分解を求める。次の、この解から、仮の共通性を計算し、相関行列の対角線に入れる。そして、主因子解を計算する。これを繰り返す(反復)のが「主因子法の繰り返し法による共通性の推定」である。この繰り返しの最大反復回数が、図25では、25回となっているわけである。この反復を終了する基準は、前の回の共通性の値と新しい反復で計算した共通性との差であり、たとえば、0.001である。
因子の数を決めることも、因子分析法の難しいポイントの1つである。固有値の値が1.0以上である主因子の数を因子数とするKaiser-Guttman基準がある。この基準よりは、Cattellによるスクリー基準の方が、因子の数の決定には、適切なものと評価されている。ただし、この問題が難しいのは、絶対的な基準がないことである。スクリーでも、明確な結論を得ることができないことがある。いくつかの因子数で、因子分析をおこない、回転後の因子解(Promaxの因子パターン)を解釈し、データに適切な因子数を、解釈の観点から決めることが、最も一般的な方法であろう。
次は、因子軸の「回転(T)」である。
ここでは、Promax(プロマック)法(f)を指定する。カッパ(K)はデフォルトの4にしておく。表示においては、「回転後の解(R)」をチェックするが、「因子負荷量のプロット」を指示しても、3因子以上の場合には、表示がわかりにくい。

図5 因子軸の回転方法の指定
因子軸の回転が必要な理由は、因子分析の初期解が、主因子法のような数学的な基準の下で、計算されるからである。因子数が1つならば、回転の作業は必要ないが、2つ以上の因子の場合には、解釈可能なように因子軸を回転する必要がある。この場合の基準は、「単純構造の原理(Thurstone)」である。この単純構造の意味は、簡潔にいえば、解釈が単純におこなえるかどうか、ということである。最も単純な構造とは、1つの因子に関係する(あるいは負荷する)変数は、他の因子とは関係しない、ということである。Thurstone (1947)は、単純構造を因子パターンではなく、準拠構造(reference structure)で定義していた。因子軸とは独立した準拠軸体系は、因子の視覚的な斜交回転において、ThurstoneそしてCattell(1952)が重要視してきたものであった。相関行列の分解から直交の初期の因子解を推定し、これを心理学的に解釈するための回転として、この2つの軸体系が工夫されたわけである。
この単純構造を因子の座標軸を直交のまま解析的に求める方法がVarimax法である。直交の体系では、因子軸と準拠軸との区別はなく、一般的に因子解と呼ばれる。Varimax回転は、単純構造により近い直交解を与えてくれるが、因子軸の体系には、直交(角度が90度)という制約を与えている。この制約があるがためには、十分に単純な構造を得ることができない。このVarimax法で得た解を元にして、直交という制約をはずして、さらに単純な構造の解を計算する方法がPromax法である。現在最も用いられている回転方法である。
実際の解析結果を確認しながら、以上の説明を再度、簡単に説明していく。
以下は、因子分析の各種の指定が終了してから、「OK」を押した後、出力ビューアにおいて表示された内容である。なお、ここでは、図表に、番号は与えていない。



注:この共通性は、因子の数を3とした場合のものである。


このスクリーの図を見ると第4番目以降は、ほぼ直線的に固有値の値が小さくなっていく。この4番目以降をScreeとCattell(1966)は呼んでいる。第1から第3番目の固有値は、明らかに4以降とは意味がことなると判断できる。
上の「説明された合計分散」では、第3までの固有値の大きさが1.0以上であり、この結果では、スクリー基準でもKaiser-Guttman基準でも、因子数は、3であると判断できる。

これが主因子解である。最終的な共通性を得るまでに、20回の反復がおこなわれた。SPSSでは、この表のようにE型での数値表示がされることがある。小数点の位置をこのEの後ろの値で移動させればよい。-8.24E-02は、-0.0824のことである。出力ビューアにおいて、この表をダブルクリックし、次の右クリックし、セルのプロパティで「#.#」を選択すると、通常の表示となる。



パターン行列が、Promax回転後の「因子パターン行列」である。この3つの因子は、変数V2が第3因子で.474で、第1因子で.235となっている他は、ほぼ完全な単純構造といえる。回転前の主因子解の「因子行列」の3因子とこの「パターン行列」とを比較すれば、なぜ、因子軸の回転が必要なのかがわかるであろう。「因子間相関行列」はPromax回転後の因子と因子との相関係数である。直交の因子構造であれば、この値はゼロとなる。今回の結果では、第1因子と第3因子との相関が他よりも高く、次が、第1因子と第2因子である。なお、「構造行列」は、因子得点を推定する時に、使用される行列であるが、ここでは、因子得点についてはふれないので、説明は省略する。