『反封神榜』について


・奇書『反封神榜』

中国の小説に、「反〜」というタイトルを付けたものがあります。たいていは、有名な小説について行われる、一種のパロディ小説です(笑)。

最も有名なのは、『反三国志』でしょうか? これは『三国志演義』を、全く蜀が勝利するように内容を書き換えてしまっているものです。『三国志演義』を読んで、蜀が破れるのを見て悲憤慷慨する人には、快哉を叫ぶことのできる、いい小説ではないでしょうか(汗)。

『三国志』を「もし〜だったら」という仮定のもとに作り直した小説は、それこそごまんとありますが、この『反三国志』はまだ出来のよい方だと思います。あまり小説のお約束を踏み外していないので・・・。このあたり、日本人の書くものより、中国の人の方が「お約束」をよく心得ているからだと思いますね。


この「反」モノの中の一書に、『反封神榜』という小説があります。

題名からしてすぐ察することができると思いますが、『封神演義』の内容について、意図的に書き換えたものです。ただ、この『反封神榜』は、『封神演義』の内容を書き換えているのではなく、その続編という形になっています。


作者は「楞厳閣主」と名乗っていますが、当然ペンネームです。おそらく現代のものでしょう。正確には『神怪列国志−反封神榜』というタイトルです。

中国民間文学出版社が出していますが、あまり日本では売っているのを見たことがありません。まあ、こんなものを好きこのんで読むのは、自分くらいなものでしょう(笑)。内容は、「千年大比」と「反封神榜」の二種のストーリーが収められています。1988年の出版です。


・世界観について

はっきり言って、この作品では『封神榜』の世界観をかなり無視しています。

『封神演義』に出てこない神々や、また小説のオリジナルらしき神格が数多く登場します。

そして、天界や地界、水界や魔界など、各世界がそれなりに民間信仰的な世界観によって構築されています。むしろ、『封神演義』よりよく考えられていると思いますよ(汗)。

天界は、玉皇大帝を中心として、神々のヒエラルキーがしっかり構築されていますので、むしろ、『西遊記』に近いかもしれません。

ある意味で、現在漠然と民間で考えられている天界の構造を最もよく示すものかもしれません・・・。


・反−封神たるゆえん

「千年大比」もなかなか面白いストーリーなのですが、今回は「反封神」の方がメインですね。

『封神演義』から2千年後のこととなっています。2千年前殷周の興亡の際に行われた「封神」に不当なところがある、と訴えがあるところから始まります。その訴えとは、次のようなものです。


1.費仲・尤渾・飛廉・悪来などの四人は、国を誤った奸悪な大臣どもに過ぎない。それなのに、この4人までもが封神されているのはおかしいのではないか?

2.蘇護の娘妲己は、後に妖狐に身体を乗っ取られてしまったが、本人自体は賢徳ある女性であった。彼女は封神に対する犠牲者と言える。妲己の魂にも一定の地位を与えるべきなのではないか?

3.趙公明は財神に封じられたが、その前に呪いで眼が見えなくなってしまった。この2千年というもの、富貴を得るにふさわしくない者が、富を得ているのは、趙公明の眼が不自由であることに起因する。ここはその責任を追及すべきではないか。

・・・と、要求は24カ条に及びます。


他には、

なんもせん姜子牙の妻の馬氏などが、なんで封神されているのだとか、

紂王までちゃっかり封神されているのは何事かとか、

殷郊と殷洪の2人も、不義不智であるから封神すべきではないとか、

五岳のうち、黄飛虎と崇黒虎はともかく、他の連中はたいした功績もないとか、

伯邑考が紫微大帝になったため、その後、紫微大帝の下凡した君主はロクなのがいないとか、

千年狐狸も、玉石琵琶も、九頭雉精も、職務をまっとうしただけなのに、責められるのは何事かとか、

いろいろあって楽しいです(笑)。


ある意味で、『封神演義』の矛盾点をよく突いているのかもしれません。時に言わずもがなな主張もありますが、かなり納得できる論拠もあります(汗)。

この訴えは、主に通天教主から、その国師である小老先生を通じて、玉帝に提出されます。

ひょっとして、この話の主役は通天教主かもしれません(笑)。彼は全編を通じて大活躍します。


この訴えに反発するところがあるのが、仏界です。特に、燃灯仏・準提仏・接引仏の動きが盛んです(笑)。

結局、仏界と、通天教主率いる魔界との激突になります。この戦いもなかなか興味深いところがあります。闘戦勝仏、つまり孫悟空も出てきます。

すごいのは、通天教主がこの2千年に修行を積み、準提や接引もたじたじの法力を身に付けている点です。そのため、戦いはやや魔界に有利になります。

他の天界・仙界・鬼界なども巻き込んで、騒動は大きくなりますが、結局、天界の秩序に問題点があることは認められ、各界から代表を出して、問題を審議することになります。

最後には、通天教主の主張ももっともだ、ということで、玉帝から、封神の理不尽な点を改めるよう裁定されます(笑)。ただ、全部の主張が通るわけではありませんが・・・。

そして、まとめに「宇宙和平大会」が開催されて、どうにか混乱も収拾します。


まあ、ある意味でとんでもない小説ですが、作者がよく民間信仰の説話を自己のものとしているため、それなりに楽しめる作品に仕上がっています。

もっとも、文学関係の場で、議論されることは無いでしょう。それにしても、ただ見過ごすだけでは惜しい本ではありますので、ちと論じてみました(笑)。


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