その7 中国の四天王について


中国のお寺に行くと、日本の寺院とはかなり雰囲気が違うので、驚くかもしれません。

日本の寺院も、むろん中国のお寺の影響を受けて建てられているのですが、それぞれ時代によって変化を遂げています。

いまの中国のお寺は、明(みん)の時代に整えられたものでして、その様式はあまり日本に入ってこなかったのです。

例外としては、宇治の黄檗宗萬福寺があります。このお寺は、明の末頃の中国の寺院の影響を受けており、いまの中国に広く見られる形式と同じです。

<宇治黄檗山萬福寺>


いま中国で広く見られる寺院形式は、門である山門、その次に四天王を祀る天王殿(てんのうでん)、その次に本殿である大雄宝殿(だいおうほうでん・だいゆうほうでん)、そして後ろに講堂や法堂(はっとう)などが直線的に並びます。

また大雄宝殿の手前には、左右に鐘楼と鼓楼が設けられている場合が多いです。

脇には、観音堂や伽藍神を祀る伽藍堂などがありますが、それは各寺院によって異なります。

ただ、本尊が観音菩薩の場合、大雄宝殿でなく、円通殿(えんつうでん)などと呼ぶ場合もあります。

<寧波阿育王寺の天王殿>


その天王殿に祀られるのが、四天王です。中国では「四大天王」や「四大金剛」と呼ばれるのが一般的です。

この四天王を見ると、日本の四天王と姿が全然違っているがの分かると思います。

すなわち、中国の四天王は、琵琶・傘・蛇または龍・剣を持っているが普通です。

 

<上海玉仏寺の四天王>


日本の四天王は、持ち物が一定ではありませんが、だいたい多聞天は塔を、広目天は筆と巻物、そして持国天は刀を、増長天は戟などを持つことが多いようです。

以下に、日本と中国での、四天王の持ち物の差について記します。


・日本

多聞天=宝塔と三叉の戟

広目天=筆と巻物 戟・槍

持国天=刀・槍・戟 金剛杵

増長天=刀・剣・戟 金剛杵

 ・中国

多聞天=傘

広目天=蛇、または龍

持国天=琵琶

増長天=剣


なお来歴の古い寺院では、多聞天は日本と同じく、塔を持っている場合もあります。

また多聞天は、銀の鼠を持っていることも多いです。

実は唐の時代では、中国の四天王は日本のものと変わりません。というより、日本が当時の中国の形式を輸入したわけですから当然です。


また韓国のお寺にも天王殿があり、こちらも四天王はやはり琵琶や龍を持っています。またたまに多聞天は塔を持っています。

<韓国釜山梵魚寺の広目天>


実のところ、中国・韓国のみならず、チベットなどでも四天王はこの「琵琶・傘」タイプであり、要するにアジアではむしろ日本の四天王の方が少数派なわけです。

もっとも、同様のパターンはいくらでもありますね。


中国の四天王の持ち物について、よくその典拠として示されるのは、『封神演義』です。

『封神演義』に登場する魔家四将(まけししょう・まかししょう)の魔礼紅・魔礼青・魔礼海・魔礼寿が、その宝具として琵琶・傘・剣・蛇(貂)を持っているからです。

そしてこの4名が、姜子牙によって四天王に封神されます。

   

<魔家四将>


しかし、現在の四天王と魔家四将では、若干その持ち物に違いがあります。

魔家タイプでは、琵琶と蛇を持つ天王が入れ替わっている形になります。


同じ明代の小説でも、例えば『西遊記』の四天王はどうも傘・琵琶を持っているという描写が見えません。

また宇治の萬福寺の天王殿の四天王も、琵琶や傘は持っていません。

どうも地域や時期によって異なっている部分があるようです。


この形象が何時から始まったのかについては、まだ調査しきれていません。

中国でも、寺院によっては古い形式の四天王を残している所もあります。


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