バーチャル・スペースの中の寺廟

Some Temples in Cyber Space

二階堂 善弘

(雑誌掲載時に比して若干の修正を加えてあります)


はじめに−ネット社会と宗教−

「宗教」と「インターネット」とは、一見、奇妙な取り合わせに見える。何故なら、伝統的な価値観や生活を重視する宗教文化と、最先端の情報社会の申し子とも言えるインターネットとは、性格を異にする組み合わせに見えるからだ。

しかし、情報社会の発達は、現代のあらゆる分野において影響力を及ぼしつつある。インターネット上に展開されるバーチャル・スペースを覗けば、そこには様々な宗教に関係する団体や集団が、勢力の扶持に努めようとするさまが看取できるであろう。

実の所、宗教勢力は、歴史的に見ても新しい技術に対してはむしろこれを積極的に取り込み、活用して布教に役立てることの方が多かった。例えば、印刷技術などは、多くの宗教で経典の普及のためにいち早く取り入れたなどの事例がある(注1)。生駒孝彰氏の『インターネットの中の神々』によれば、アメリカにおいてはラジオによる伝導が早くから発展、その後テレビ布教が社会に多大なる影響を与え、そして現在ではインターネット布教がさらなる力を持ちつつあるとされる(注2)。また、ヴァチカンが聖職者に必要な能力として「ネット対応能力」を挙げたことも記憶に新しい(注3)。アメリカの多彩なキリスト教派、例えばルーテル派・バプテスト派などが盛んにインターネットでの布教を試みていることも、すでに広く知られている。


ただ、インターネット上で活動する宗教には、いろいろ問題の多い団体があるのも確かである。特に、昨今はインターネットを利用して信者を獲得するカルト宗教が多く、それがインターネットそのものに対するイメージを損なっているのも確かである。土佐昌樹氏は、その著『インターネットと宗教』の中で、集団自殺を起こして話題となった「ヘブンズ・ゲート(Heaven's Gate)」事件に着目し、そのために「インターネットと宗教」に対するイメージが誤解されたと指摘する(注4)。

もちろん、インターネットの特色として、団体の規模に関係なく対等の立場で情報発信ができることや、信条に関わらず自由な立場でが発言ができるということがある。そのようなインターネットの良い特性を、カルト側が悪用している面がないとは言えない。ただ、インターネットはあくまでもコミュニケーションの手段のひとつであり、それをどう使うかは使う側の問題である。これは広告や出版などにおいても言えることで、インターネットに限ったことではない。どのコミュニケーションの手段においても、悪意を持った者に利用されるのは避けられないことであることは言うまでもない。


ただ、今後はインターネットというツールの特性を生かした布教が、伝統宗教、新興宗教を問わずに盛んになるであろう。それにより、宗教研究においても、経典の読解やフィールドワークと同様に、ネットにおける宗教活動を調査する必要が今後ますます必要になっていくことはほぼ間違いないと考えられる。先に挙げた土佐・生駒両氏の著書は、その意味で先駆的な業績である。しかし、アジアの中でも非常に重要と考えられる中国語系サイト(Webページ・WWWホームページ)については、ほとんどと言ってよいほど言及されていない。小論では、宗教研究の一端として、中国語による宗教系サイトについてその現状を調査し、併せて若干の考察を心みたい。


1.中国語による宗教系サイト

現在では、アジア諸国・地域においても、インターネットの発達により急速に情報化社会が構築されつつある。その中でも特に動きが盛んなのは日本や韓国、それに台湾・香港・シンガポールなどであるが、昨今は中国大陸における発展もめざましい。これを受けて、中国語表記によるサイトは日々激増の一途をたどり、全アジアのサイト中に占める割合も非常に高くなっている。

中国語による宗教系サイトには、伝統的な仏教や道教などの宗教に限らず、キリスト教やイスラム教、それにモルモン教などのページも多い。特に際だって目立つのは、キリスト教系サイトの多さである。


例えば、台湾の代表的な検索サイトである「蕃薯藤」(注5)において、仏教サイトの総数が260であるのに対し、キリスト教系(プロテスタント系)のサイト数は356にのぼっている(2000年5月現在)。これはやはり、キリスト教の諸派が、そもそもネット布教に対する取り組みが早く、また非常に力を入れていることを反映しているものと思われる。

むろん、こういったキリスト教、あるいはイスラム教系のサイトも重要ではあるが、この場合は、アジアというよりはもっとグローバルな展開を持つもので、それについては別に考察が必要になると思われる。従って、この方面のサイトについては、小論では特に取り上げないこととしたい。

ところで、宗教に関連するサイトの発展については、地域によってかなりの不均衡が見られる。これはもちろん、それぞれ国や地域の政治・経済的な事情が背景にあってのことであるのは明らかである。


中国語サイトの検索ページを観察することによって、そのようなサイトの地域性や、またどのような宗教勢力がインターネット布教に力を割いているか、などの特性を看て取ることができる。例えば、代表的な検索ページである「中国Yahoo!」(注6)を見てみると、「宗教信仰」のエリアにおいては、大陸系のGBコード(簡体字・国家標準碼)によるサイトの数は少なく、台湾・香港系のBig5コード(繁体字・大五碼)によるものがほとんどである。さらに、一般に中国大陸においては、宗教系サイトの宣伝・広告などは少ない。もっとも、これは経済的な要因も大きい。現在ではまだ大陸では、一般の廟が営業や宣伝をインターネット上で行っても、祈祷の依頼が来ることは少ない。つまり、台湾や香港のような、参拝や祈祷の勧誘広告が効果を上げるような状況がないということなのである。それでも後に見るように、仏教寺院の宣伝などは大いに行われている。

キリスト教を除いた宗教系サイトでは、やはり伝統的な仏教や道教といった、伝統的な宗教勢力のサイトが目立つ。

例えば、先に挙げた台湾の代表的な検索エンジンである「蕃薯藤」では、宗教の欄を見ると、「一貫道」が29サイト、「天主教(カトリック系キリスト教)」が30サイト、「回教(イスラム)」が5サイト、「仏教」が260サイト、「道教」が67サイト、「基督教(プロテスタント系キリスト教)」が356サイト、「摩門教(モルモン教)」が13サイト登録されている(2000年5月現在)。もっとも、この中の分類は必ずしも厳密なものではなく、新興宗教系の団体が仏教や道教として登録されている場合も多い。


同様に「中国Yahoo!」では、やはり宗教のカテゴリにおいて、「道教」系36サイト、「民間信仰」13サイト、「伊斯蘭教(イスラム教)」7サイト、「仏教」320サイト、「新時代(ニューエイジ)」10サイト、「基督教(キリスト教)」関係565サイト、「一貫道」関連16サイトが登録されている(2000年5月現在)。

このカテゴリの分け方自体にも、それぞれの特徴が出ていることは大変興味深い。「蕃薯藤」では、キリスト教を伝統的な「天主教」「基督教」と区分していたり、「民間信仰」を「道教」に含めない。また、イスラム教を「回教」と称すなど、総じて伝統的な中国的なカテゴライズを踏襲している。

これに比して、「中国Yahoo!」の側は、キリスト教サイトを一括して扱い、そのために数が多くなっている。詳しい区分は、むしろ下位のカテゴリで行っている。また「道教」と「民間信仰」を区別し、イスラム教は「伊斯蘭教」と書かれ、さらに、「新時代」などのカテゴリが存在する。


「蕃薯藤」は台湾土着とも称すべきで、そのカテゴライズは中国的な発想に基づいているのに対し、「Yahoo!」の方は、アメリカやその他の国でのネット上の区分を、そのまま機械的に持ち込み、中国的に些かアレンジした形式を取っている。そのために、このように両者にはカテゴライズに顕著な差異が現れたのである。これは大きな問題と言えるものではないが、端無くも外からと内からの宗教に対する見地が異なっていることを露呈した例と言えよう。

伝統的な宗教、と言えば、中国では古くから「三教」という言い方をする。則ち、「儒教・仏教・道教」の三者である。ところが、ここで興味深いことは、仏教と道教のカテゴリがある一方で、儒教のカテゴリが無いことであろう。むろん、哲学方面において「儒学」或いは「儒家」というカテゴリはあるし、後に見るように、新興宗教系の団体が「儒教」を標榜することもある。しかし、一般的には、このように儒教は宗教カテゴリの中には位置づけられないのである。このことは、伝統的な宗教研究の側ももっと注意してよい問題だと考えられる。

そして伝統的な中国宗教の中でも、圧倒的な質量を誇るのは仏教系のサイトである。その数は登録されているものだけで200−400サイトに近い。もっとも、この中には、仏教団体や寺廟の他、研究機関や出版社・博物館なども含まれるので、宗教団体のみというわけではない。しかし、それにしても仏教系勢力の力強さを感じさせるものと言えよう。

それに比べ、道教関係のサイトの数はあまり多くない。ただ、民間信仰と併せて考えた場合は、その勢力は台湾や香港でもかなり大きなものがある。以下では、これらの宗教勢力とそのWebサイトについて個別に見てみたい。


2.伝統的な民間信仰廟宇サイト

一般に布教、というよりは、廟の礼拝や喜捨のための広告を出している廟は少なくない。これらの廟は、民間信仰か道教に分類されるところが大半である。歴史の古い廟としては、台湾台北市の「保安宮」(注7)などが挙げられる。こういった廟を運営する団体は、伝統的に地域の廟管理団体であることが多く、規模の大きい廟宇だからと言ってネット上の活動に力を入れるところは少ないので、保安宮の事例などは現時点では珍しい部類に属するものと言える。

この他に、日本の新聞でも取り上げられ(注8)、話題になった台南の「仁寿宮」(注9)がある。この廟は、あまり規模の大きい廟ではないと思われるが、「バーチャル参拝機能」を付したことで話題となった。

この廟がネットに進出し、凝った参拝機能を付した目的について、「故郷を離れて都会に出た者が、忙しい合間にも郷里を忘れずに参拝できるようにしたためである」とする。このように、特別な目的にてインターネット上にサイトを立ち上げる廟もあるが、多くの廟はむしろ参拝や観光のための案内である場合が多い。


例えば、「鹿耳門天后宮」(注10)・「鹿港天后宮」(注11)などといった比較的伝統もあり、規模も大きい廟宇から、「武当宮」(注12)・「礁溪協天廟」(注13)・「二結王公廟」(注14)・「碧雲宮」(注15)・「台南南聖宮」(注16)など、小規模と思われる廟に至るまで、多くの廟が現在ネット上に情報を出しているが、その主な情報とは、廟自体の場所の案内であったり、厄払いなどの活動紹介、それに祭祀される神とその儀礼の日程などの紹介、喜捨の案内など、宣伝活動に類するものが大半である。多くの廟は、また財団法人や管理委員会などの組織を持つことが多く、サイトの運営もその管理団体が行っている場合がほとんどである。

これらは台湾の廟が主であるが、中国大陸でも、主として観光向けと思われるが、廟宇を宣伝するサイトが出現している。関帝の郷里である山西省解州の「関帝廟」(注17)がそれで、関帝の事績や廟宇に関して、かなり詳しい紹介を行っている。山西の関帝廟と言えば、その広大な面積と歴史で知られている。


これとは別にマレーシアの「万仙廟」(注18)などは、斉天大聖や観音を祭るといった趣旨からして非常に民間色の強い廟であると考えられる。

ここに挙げた廟宇は、それぞれ地域も歴史も規模もまったく異なり、千差万別であると言ってよい。しかしバーチャルスペース上において、各々の廟の性格や規模を、全く予備知識なしに判断することはほとんど不可能である。宣伝する側も、ある程度はこういった特性を承知の上でサイト上の活動を行っているものと推察される。

台湾の廟などに、決して著名とは言い難いところが目立つように思えるのも、インターネットの特性を生かして、早くから宣伝活動を展開して参拝客を増やそうとする意図が感じられる。ただ、こういった廟宇の宣伝活動は、今後も増大の一途を辿るであろうことは容易に想像できる。


3.道教系・新興宗教系のサイト

「道教」を標榜するWebサイトは少なくない。しかし、実際にこれらのサイトを見てみても、本来道教系なのか、民間信仰系なのか、あるいは新興宗教系なのか、判別することは甚だ困難である。そもそも、多くの団体は、たとえ新興宗教系であっても、自己の「伝統性」を強調することが多く、いきおい、道教や仏教の伝統を継ぐと称する場合が多いからである。

台湾において最も参拝客が多く、その収入も台北第一と言われる「行天宮」(注19)は、関帝廟ではあるが、実際には恩主信仰を中心とした、民間宗教系の廟宇である。実際には、彼らは道教とも仏教とも称さず、「儒宗神教」と自らを定義し、儒教であると言う。もちろん、これは関帝が『左伝』を愛読したことにこじつけたものであろう。だからといって、彼らをその額面通りに「儒教」と解するには、これには躊躇を感じる。


このような紛らわしさは、他の廟においても多かれ少なかれ見いだすことが出来る。例えば、呂祖を奉じ、「全真教」と称する団体の多くも、実際には民間宗教系の団体であることが多い。

例えば、「道教全真派網頁」(注20)についても、善書や功過格を強調する面が強い。「青松観」(注21)も全真教龍門派であると称し、道教関連の行事を挙行するが、元来の性格は異なっている。また「玉清別館」(注22)も、道教に分類されるが、「道壇」であるとサイトにも紹介されている。また、昨今急速に香港とその周辺で道教の布教を行っている「円玄学院」(注23)も、その部類に属するものと言えよう。このような、道教を標榜するサイトの多くがむしろ民間宗教系であることは、別の意味で興味深い。

また、道教の布教を旨とした団体として、「中華民国道教会」(注24)や「台湾省道教会」(注25)などがある。

こういったWebサイトでは、オーソドックスな道教の教理や歴史を紹介している。また道教一般に関連する情報を広く提供する「道教網路資訊報導」(注26)もある。


このように「道教系サイト」とは称するものの、その中身は複雑な様相を呈している。オーソドックスな道教系のサイトがある一方で、民間宗教系のWebページもある。

これはそもそも、台湾における道教と民間宗教の関係自体が複雑なものであることに起因するものであると考えられる。以下でごく大まかに述べるが、道教、あるいはそれに類する宗教的な宗派は、多岐にわたって存在し、それを厳密に区分することが難しいということがある。

一般に「道士」と呼ばれる宗教的職能者は、伝統的な道教の斎−儀礼を司るものである。この他に「法師」と称される巫術者がいる。彼らは彼らで独自の儀礼を行うものである。しかし、彼らが道士を模した儀礼を行っている場合もあり、その時は容易に判別ができるものではない。また、憑依を行う「童乩(タンキー)」という呪術者がおり、やはり別系統の儀礼を行っている。また民間宗教系の団体には、「鸞堂」と呼ばれるものが多い。彼らは「扶乩(フーチー)」という降霊術を行う。この鸞堂が奉ずる神や仙人は、道教の神仙である場合が多い。関帝や呂祖などが最も好まれる(注27)。

現在台湾の道士は、道観に居住している者はほとんどいない。また儀礼を行うことを中心としているので、あまり対外的な布教行為が目立つわけでもない。これに比して、民間宗教系の団体は、廟或いは特定の「堂」を拠点に活動を行い、布教活動に熱心である。このような差異が背景にあって、現在ではまだ道教系のサイトには、民間宗教を基盤にしたものが多いのであると推察される。


4.仏教系及びその他のサイト

仏教系サイトの数は多く、その全容について把握するのは大変困難であると言ってよい。やはり台湾や香港のものが中心となる。しかし、台湾の仏教は、かなり複雑な発展を遂げており、それがWebサイトのあり方にも反映している部分がある。

台湾においては、日本に統治されていた時代、日本系の仏教諸派が布教を行っていた。特に、臨済宗や曹洞宗などの発展が目立ったようである。日本の敗戦後、いったんは中国大陸との交流により、大陸系の仏教が流入した。しかしまたその後大陸との交流が途絶えたために、独自の発展を遂げ、白聖・印順・李炳南などの著名な僧が率いる教派が発展した。


現在では、聖厳(法鼓)・星雲(仏光)・証厳(慈済)などの大師が率いる諸派がよく知られている(注28)。これらはまたそれぞれ社会活動に熱心で、例えば教育に熱心な法鼓派、医療や慈善運動に力を入れる慈済派など、各々特色を持って布教に努めている。これら仏教諸派は、アメリカのバプテスト諸派のごとく、政治的にも文化的にも大きな影響力を持っている。例えば、台湾では仏教によるテレビ伝導も行われている。また自治体から国政レベルに至るまでの、多くの選挙運動ですら影響力を行使している。このような影響力を背景にしてか、台湾では仏教徒と称する人々はかなり多い。

Webサイト上で目立つのもこのような現代の仏教諸派である。その中でも一際目立つのが「仏光山」(注29)であろう。この派は現在高雄に本山を構えている。布教活動には熱心で、出版事業や慈善活動にも力を入れている。

突出した慈善活動と、医療に力を入れている「慈済会」(注30)も、非常に活発な活動で知られている。


これらとは別に、積極的にサイト上での宣伝を強化しているのが密教である。「密宗」と呼ばれるサイト数は、数十にのぼる。ほとんどはチベット密教系のサイトである。浄土宗や、天台宗のサイトもあるが、見たところ現在ではまだあまり数は多くない。

寺院が独自にWebサイトを立ち上げている例も多い。財団法人を組織して、会の活動を宣伝する場合が多いが、一方で民間信仰の廟サイトと同じく、法会の開催や、参拝のための広告を行うものもある。「白毫禅寺」(注31)・「光徳寺」(注32)・「霊厳山寺」(注33)などのサイトがある。

中国大陸でもサイトを立ち上げる寺院は存在している。上海の古刹である「上海静安寺」(注34)・広東省の「南華寺」(注35)・「寒山寺」(注36)・「龍泉山寺」(注37)などである。寒山寺など、日本人観光客が多いためか、日本語の紹介ページまで持っている。今後こういったWebサイトも増加の一途を辿ると考えられる。

民間宗教としては歴史のある「一貫道」(注38)も、サイト上にて活発な布教を行っている。一貫道は、道教・仏教のみならず、キリスト教やイスラム教をも取り込もうとする民間宗教である。しかし、実際には道教系の民間宗教の色彩が強い。台湾では合法的に活動を行っているが、かつて大陸で禁圧されたこともある教団である。これも20以上のサイトが登録をしており、Web上では目立った存在である。


おわりに −中国宗教サイトの今後−

本論では、管見に及んだ中国宗教に関わるサイトの紹介を行ったが、現時点(2000年5月現在)では、中国宗教系のサイトは、圧倒的に台湾・香港のものが多く、中国大陸のものが少ないことが分かると思う。しかし、今後は特に中国大陸でも、観光面に力を入れた宣伝のための寺廟のサイトが増えると予想される。

台湾や香港のサイトには、一見それとは判定できないが、やはり伝統宗教を装ったカルト的なものも存在すると思われる。これらについては、截然と判定することはかなり難しい。日本の場合もそうであるが、社会問題化して始めて顕在化することもあると考えられる。


ただ、一般に小規模の廟宇が行っている活動は、例えば厄払いである「安太歳」の儀式、民間医療の一つである「収驚」などであり、問題性の少ないものである。これを迷信と見なす向きもあるが、そういった小規模の儀礼活動が盛んであるために、カルトの跋扈する余地が減っているのも確かである。

道教系の廟の活動が行っている活動の中にも、かなり身近な問題を解決する、とするものが非常に多い。例えば、台南の広信府天師爺壇(注39)には、幾つかの「お祓い」による効果を宣伝している。「台北の陳小姐は、家族の不和に悩んでいたが、わが壇の祭祀によって厄が祓われ、現在は幸福な生活を送っている」といった類のものである。これが実際の出来事の反映であるかどうかはともかく、宣伝として一定の効果があることは認める必要があろう。人々が寺廟に望んでいるものは、こういった面もかなり大きいと思われるのである。よって、こうした方面の需要を満たす活動も、今後ますます多くなると考えられる。

宗教のインターネット布教が社会との軋轢を招くことも、今後はますます起こり得ると予想される。「法輪功」(注40)が中国大陸で「邪教」の指定を受けて批判されているが、大陸以外の地域では彼らはそのまま活動を行っており、Webページでの布教も盛んである。そもそも、中国大陸においても、彼らはWebによる布教を重視し、電子メールで連絡を取り合うなど、インターネットを大いに利用していた。逆に法輪功を批判する活動もWeb上で展開されている。『人民日報』のWeb版(注41)に展開される法輪功批判記事と、法輪功のページの主張は併せて見るべきであろう。


しかしながら、中国宗教のサイトにおける活動に関しては、まだまだ過渡期である、とう感を免れない。台湾や香港のネット関連のインフラはかなり整備され、中国大陸におけるネット利用も盛んになってきたが、宗教系の団体が、そういったインフラを使いこなす、という状況にまではなってきていないのである。むろん、仏教系の団体を中心として、布教や社会活動・宣伝活動に役立てているところも存在するが、それはまだあくまで一部に過ぎない。

今後も当分は、地域・宗派によるアンバランスは解消しないと考えられる。しかし、宗教サイトの数と、それを利用する人の数は急激に増加することは間違いないと思われる。


*リンク切れの廟については削除してあります

(1)例えば、奈良時代の「百万塔陀羅尼」は、仏教信仰と密接な関わりを持つ。これは現存するものでは最古の部類に属するとされる印刷物である。国立国会図書館の展示を参照。また、グーテンベルグの『聖書』印刷と宗教文化との関係は、複雑かつ深刻なもので、多大な影響を文化面に広く及ぼすこととなった。

(2)生駒孝彰著『インターネットの中の神々−21世紀の宗教空間−』(平凡社・1999年10月)、第1章pp.16−47による。

(3)『毎日新聞』1999年7月19日付記事「ローマ法王庁:神父は清貧、出世を求めずネットに精通」

(4)土佐昌樹著『インターネットと宗教−カルト・原理主義・サイバー宗教の現在−』(岩波書店・1998年11月)pp.25−46による。

(5)蕃薯藤

(6)中国Yahoo!

(7)保安宮

(8)『朝日新聞』1999年11月22日付夕刊より。

(9)仁寿宮

(10)鹿耳門天后宮

(11)鹿港天后宮

(12)武当宮

(13)礁溪協天廟

(14)二結王公廟

(15)碧雲宮

(16)台南南聖宮

(17)解州関帝廟

(18)マレーシア・万仙廟

(19)行天宮

(20)道教全真派網頁

(21)青松観

(22)玉清別館

(23)円玄学院

(24)中華民国道教会

(25)台湾省道教会

(26)道教網路資訊報導

(27)ここでは、劉枝萬『台湾の道教と民間信仰』(1994年・風響社)などを参照に、極めて概括的に述べた。

(28)ここでは、王重民「當代臺灣佛教變遷之考察」(『中華佛學學報』第八期1995.07)を参照した。

(29)仏光山

(30)慈済会

(31)白毫禅寺

(32)臨済宗光徳寺

(33)霊厳山寺

(34)上海静安寺

(35)広東南華寺

(36)寒山寺

(37)龍泉禅寺

(38)一貫道慈声橋

(39)広信府天師爺壇

(40)法輪功

(41)人民日報


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