関西大学 孝忠研究室

Research Life of Professor Dr. N. Kochu

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差異と共同:「マイノリティ」という視角(関西大学出版部)を公刊しました

 マイノリティ研究センターの研究中間成果の集約ともいうべき、編著『差異と共同:「マイノリティ」という視角』(関西大学出版部、2011年12月)が公刊された。ここでは、その「はしがき」と目次を紹介しておきたい。

はしがき
「差異」と「共同」を並列的にならべるのには異議(異論)もあろう。ただ、本書のタイトルにこの両者を用いたのは、私たちの研究の「意義」を端的に訴えるためでもある。
「差異」――ここでは、「在りて在るもの」ではなく、「在りとされるもの」であり、それ自体固定的ではない動的なもの、そして人々を分け隔てると同時に結びつけるものでもある関係性の名称として用いたい。この差異という観念を背負わされるものとして「マイノリティ」を考える。かかるマイノリティ相互およびそれぞれの内部にも、もちろん差異は存在する。多様な差異の自己目的化の危険性とその「結末」は明らかである。また、ここでいう差異は、共同体を育むための規範、そしてその秩序に一致しないものとされてきた「差異」とは必ずしも一致しまい。
「共同」――多様な差異が多様なままで編み上げられていく共同・共同体の在り方を考えてみたい。この営為は、国民統合の理念の再構築、グローバル社会における「国家」の相対化などを含むが、その地平にとどまるものではない。相互に矛盾する異質な原理の共存から共同へ、すなわち多様なロジックの共存から共同への営みとして理解されるのではないだろうか。
この「差異と共同」という二つの言葉は、ともに一定の価値判断を内包する。この背後に見え隠れしているのは、「普遍性」という概念である。私たちのマイノリティ研究には、「普遍性を問う」という問題意識が共有されているともいえよう。

 本書は、文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(2008年度~2012年度)の採択を受けて設立された関西大学マイノリティ研究センターの研究中間成果の一部である。研究中間報告書は、私を編集代表とし、研究主幹である安武真隆、西平等と共編で『「マイノリティ」という視角(上)(下)』(2011年3月)として公表した。本書は、そこに収録した論稿にさらに手を加え、書き直した論稿を掲載したものである。
本書の構成を序章および第Ⅰ部~第Ⅲ部の三部構成とした。第Ⅰ部は、「マイノリティの権利と国家」、第Ⅱ部は、「マイノリティをめぐる政治と思想」、そして第Ⅲ部は、「国際的問題領域としてのマイノリティ」である。当研究センターの研究員は、三つの研究班、すなわち、「市民権とマイノリティ」研究班、「国家形成とマイノリティ」研究班、および「国際関係とマイノリティ」研究班のいずれかに所属して研究を進めてきた。しかし、研究の進展にともなって、この三つのグループ分けでは、「マイノリティ研究」を全体として適切に関連づけながら進めていくには、困難な局面もあることが明らかになってきている。そこで、本書では、研究班の枠にとらわれない構成をとることにした。ただ、この構成が、それぞれの論稿の内容を充分にふまえたものとは言いがたいところもあり、またこの構成に収まりきらない内容を提示する論稿も含まれている。ひとえに「中間」研究成果の故である。ご寛容いただきたい。多様な「差異」はあるけれども、「共同」研究の成果の一部として諸賢の批判にさらしたい。

 最後になったが、本書出版のためにご尽力いただいた佐藤やよひ所長をはじめとする関西大学法学研究所の方々、同出版部の方々、マイノリティ研究センターの櫻井次郎特別任用研究員、およびRAの中野裕史氏に深く感謝したい。
2011年10月                      孝忠 延夫

          目 次
はしがき     
序章  これからの『マイノリティ研究』                孝忠延夫
第Ⅰ部 マイノリティの権利と国家
第1章 韓国における「民主共和国」の概念              國分典子
第2章 中国における死亡賠償金の算定基準と戸籍制度        宇田川幸則
第3章 タイにおける人権侵害と国家人権委員会への救済申し立て
――共同体の権利を中心として             西澤希久男
第4章 土地の権利とマイノリティ
――タンザニアの事例にもとづく考察           雨宮洋美
第5章 インド2008年村法廷法の特質
――とくに司法パンチャーヤトと比較して         浅野宜之
第6章 いわゆるブルカ禁止法をめぐって
――2010年5月11日国民議会決議によせて        村田尚紀
第7章 憎悪煽動の規制と表現の自由
――マイノリティの地位と尊厳という視点から       奈須祐治
第Ⅱ部 マイノリティをめぐる政治と思想
第8章 16世紀フランスの政治的寛容をめぐって  
――その予備的考察として               宇羽野明子
第9章 16世紀スペインにおける恩寵と自由意志
――前モリナ主義からモリナ主義へ           松森奈津子
第10章 マイノリティの権利の普遍性を語る困難について 
――エストニアの少数民族文化自治を事例として      小森宏美
第11章 刑法175条と同性愛者たち
――通時的観点に立った東独(DDR)に於ける反同性愛法   須磨 肇
第Ⅲ部 国際的問題領域としてのマイノリティ
第12章 国際法学におけるマイノリティ研究の過去と現在        桐山孝信
第13章 シティズンシップ(だけ)では足りない
――さまざまなシティズン、さまざまな安全と不安全      柄谷利恵子
第14章 中華帝国における外国人とマイノリティをめぐる二つの視座
――近代東アジアの一系譜学             蔡 孟翰(訳・安武真隆)
第15章 ドイツの移民政策と主導文化を巡る論争                       佐藤裕子
第16章 戦間期日本のマイノリティの権利論
――田畑茂二郎の少数民族保護条約理解について                 西 平等
第17章 アメリカの理念と難民政策                      大津留(北川)智恵子

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