大学の現状と将来的なあり方について
第8話
大学(法人と教学)のガバナンス(2)
このシリーズ第6話「大学(法人と教学)のガバナンス(1)」において、関西大学におけるガバナンスの改革をめぐる動きと現行法人ガバナンスの概要を紹介した。ここでは、そのいくつかの問題点と課題などを明らかにしてみたい。
(1)真の「学部長理事制」の実現を
理事の増員にともない、「教学」の理事は大幅に増加した。改正の動きの中で1つの目玉とされたのが、「学部長理事制」である。しかし、現行制度は、「学部長等のうちから10名」(第6条1項3号)とされているので、その職務上理事になるという「学部長理事制」が採用されたわけではない。もちろん、従来の制度からすれば大きな前進であり、高く評価すべきだと思う。が、早急にさらなる改正をはかるべき事項だとも考える。
河田悌一学長が二期目に挑むにあたって公表したマニフェスト(その1)の中で、次のように述べられている(2006年7月)。少し長くなるが引用する。
「(平成18年5月26日付寄附行為検討委員会『中間答申』について)教学にかかわる学部長理事制の問題について、理事数を増やし、法、文、経、商、社、工、総情、外機、専門職大学院、政策創造から各1名という案は、たしかに一歩前進といえます。ただし、…まず工学部は3学部になるのですから、3名の理事を出すとすべきです。…また、今後、新学部をふくめた改革の際には、理事を出さないという後ろ向きの方向でなく、その折に改めて論議するとしておくべきでしょう。…」
ここでは、明確に「学部長理事制」の導入が謳われているのである。この方向は基本的には「継承」すべきと考える。
ただ、この「学部長理事制」については、私たち「教学」の関係者にその意義と困難さについての検討と理解が不十分であるように感じる。理事となった学部長等の理事会における積極的な職権行使(論議のリード、論点の整理、および判断・決定)とその「責任」の取り方などの問題である。また、教授会との関係も十分に説明がなされてきたとは思えない。したがって、「学部長理事制」の導入にあったては、改めてこれらの論点を十分に論議する必要があろう。
(2)寄附行為における「学長」の地位と権限を明記する方向での検討の開始
改正前寄附行為においても改正寄附行為においても、「学長」は、その職務上「理事」となるが(第6条)、その地位と権限についての明文規定はない。また、現在、常任理事(第10条)となっているが、このことに寄附行為上の根拠はない。したがって、その実質的影響力を考慮に入れないとすれば、学長は、他の学部長等の理事と同格であり、理事会の決定に1票を投ずることができるだけである(学長が信念をもって反対しても理事会の議決は通常過半数の賛成で決せられる(第22条))。もちろん、学校法人の最高議決・決定機関である理事会において設置学校の「代表」がどのような地位と権限を有するべきかの問題は十分に検討されなければならない。しかし、「学校法人関西大学」と「関西大学」との関係、そのガバナンスを将来的に考えるとき、「関西大学」の代表としての学長が「学校法人関西大学」においてどのような地位を占めるのかは、今後の論議に「開かれ」ており、早急に検討すべき問題であると思われる。
(3)常任理事会は、「教学」の意思が十分に反映される構成を
常任理事会は、「この法人の日常業務の執行に関する事項及び理事会から付託された事項を決定するため」に、理事会の下に置かれた機関である(第24条)。この文言からすれば、基本的には日常業務の執行機関であり、法人の重要事項を決定する機関ではない。しかし、理事会が「包括的・白紙委任的」に権限を付託することによって、実質的には、この常任理事会が重要な決定・執行機関化することは大学のみならず、一般的な「病理現象」ともいえる。したがって、理事会が実質的に機能するような努力とともに、「教学」理事が常任理事会で一定数を占めるよう工夫すべきであろう。この場合、常任理事となった教員の職務上の配慮は不可欠だと思う。
2009年7月14日
はじめに――「大学の現状と将来的なあり方について」語るにあたって(09/6/29)
第1話 「『質』の向上に努力しない大学は淘汰されるべき」だとの提言について(09/7/2)
第2話 法学部における教育内容、教育方法改善の歩み――個人的回想(09/7/3)
第3話 地球市民社会(Global Civil Society)にはばたく人材の育成をめざして(09/7/4)
第4話 教育・研究サポート体制の充実――とりわけ専任事務職員の充実を(09/7/6)
第5話 大学の「使命」、「ビジョン」そして「戦略・計画」(09/7/9)
第6話 大学(法人と教学)のガバナンス(1)(09/7/10)
第7話 Facultyの基盤としての大学「研究所」(09/7/13)
第8話 大学(法人と教学)のガバナンス(2)(09/7/14)
第9話 手段としての「多様性の確保」(09/7/23)
むすびにかえて――これまでに寄せられたご意見・ご質問をふまえて(09/7/24)