関西大学 孝忠研究室

Research Life of Professor Dr. N. Kochu

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大学の現状と将来的なあり方について

はじめに――「大学の現状と将来的なあり方について」語るにあたって

  先般、「抱負」を500字で語る機会を与えられた。
  研究者として大学に就職し、研究・教育にたずさわるなかで、一貫してこのテーマについて考え、発言してきたが、このような形で発信するのは初めての機会である。そこで、これまで、考え、発言、そして行動してきた歩みをこの機会に振り返り、あらためて現時点における未来志向の大学論(ガヴァナンス論を含む)、研究・教育論などを思いつくままに論じてみたいという気になった。
  その理由の1つは、今年、いわゆる「還暦」を迎えたことである。20代後半に研究者という道を選択し、曲がりなりにも研究を続け、同時に多くの学生に「憲法学」を講じ(近年では「マイノリティ論」なども)、その中で何人かの研究者を育ててきた歩みの「中間総括」をおこなっておくべきだと考えたからである。
  第2の理由は、冒頭の「抱負」にかかわることである。「抱負」を語る場合、自らのこれまでの行動に照らしてその内容が吟味されることになろう。大学などの「あり方」の一定の(あるいは大胆な)チェンジを語るには、そのような内容を、あるいはその萌芽的な発言と行動を少しでも示していなければならない。また、従来の継続・発展を語る場合には、その自信の背景と、不十分さへの目配り、一定の「反省」も必要なのではないだろうか。

  私が「抱負」で述べたことは、これから順次明らかにしていきたいが、要約すれば次の4点になる。
  まず第1に、「知識基盤社会」をリードし、その不断の形成プロセスを支える大学の役割の重視である。決して、社会の変化に追随していく大学であってはならない。すなわち「知識基盤社会」とは、学問研究の自由が保障された大学、そこにおいておこなわれる高等教育が広く普及する社会であるべきであり、その成果と便益は社会全体に帰着・還元することとなる社会であろう。
  第2に、それを支え、創りだすのは大学の全構成員であるが、とりわけ研究に携わる教員の主導的役割が決定的に重要だということである。こういうと当たり前のように思われようが、自由な研究を日々営む「研究者と研究」への謙虚さと率直さ、すなわち研究を「担う人々へのレスペクト」が欠けてしまうと、社会の他の組織と同じような効率性と目先の結果だけが求められる運営になってしまうし、大学は現在そうなってはいないか、ということが言いたかったのである。
  第3に、「制度改革」とその「担い手」の問題である。たとえ、いかに優れた制度を導入し、外見的には先進的な制度改革をしようとも、その決定プロセスが適切でないと制度は機能しない。とりわけ大学においては、第2に述べた「真の担い手」が積極的役割を果たすことがなければ、官僚主導の組織運営すらも機能しない、場当たり的・思いつき的な恣意的運用が一般化してしまうことになる。さらに、次に述べるリーダーシップの欠如を「制度」のせいにする風潮を生みだしてしまう。
  そして、最後に、上述の「担い手」の中心になり(報われることはないかもしれない、あるいは社会から正当に評価されないかもしれないという重圧にたえずさらされながらも、地道に研究を継続している「担い手」から信頼される研究者として)、一身を賭してリーダーシップをとるのが「大学の長」であると考える。単なる出身母体の大きさや人脈によって決まるのなら、他の一般社会の組織とあまり変わりない。必要とあらば、前例のないことでも決断し、その責任を問われることから決して逃げないリーダー。同時に十分な説明責任を果たし、構成員の「総意」を形成しようとする不断の努力を怠らないリーダーが求められているのではないだろうか。

  これから、可能なかぎり多様な論点をとりあげ、学術的論文を書くときの姿勢を堅持しつつ? 同時に私見と感想をも率直に述べてみたい。

2009年6月29日

はじめに――「大学の現状と将来的なあり方について」語るにあたって(09/6/29)

第1話 「『質』の向上に努力しない大学は淘汰されるべき」だとの提言について(09/7/2)

第2話 法学部における教育内容、教育方法改善の歩み――個人的回想(09/7/3)

第3話 地球市民社会(Global Civil Society)にはばたく人材の育成をめざして(09/7/4)

第4話 教育・研究サポート体制の充実――とりわけ専任事務職員の充実を(09/7/6)

第5話 大学の「使命」、「ビジョン」そして「戦略・計画」(09/7/9)

第6話 大学(法人と教学)のガバナンス(1)(09/7/10)

第7話 Facultyの基盤としての大学「研究所」(09/7/13)

第8話 大学(法人と教学)のガバナンス(2)(09/7/14)

第9話 手段としての「多様性の確保」(09/7/23)

むすびにかえて――これまでに寄せられたご意見・ご質問をふまえて(09/7/24)

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