「親ばかフランス紀行'94」
(7)  − 「もうもう」の公園− 


 1994年6月24日(金) とにかく暑い

   植物園 (Jardins des Plantes)および国立自然史博物館(Museum National d'Histoire Naturelle)を後にして、待ち合わせのために宿に戻る。

13:00に知人のY氏来訪。 3歳の子供のJ君を伴っている。 会うや否や、私の4歳の息子は、J君が気に入ったようだ。 ホテルの前のJacob通りに豪快に縦列駐車したY氏の車に乗り込む。前と後ろに駐車された車に1回ずつ当てて、バウンドさせてから、Y氏は車を出発させた。

 中華料理店で、昼食。 息子とY君はすっかり仲良しになっている。Y君には、4分の1フランス人の血が流れているが、外見は、まったくの日本人だ。旅行に出発して以来、初めて日本人の子供に出会えたこともあって、息子は非常に喜んでいる。
   昼食後、Y氏のアパルトマンの近くにある公園に連れていってもらう。 Y氏によれば、ここは、かつて屠殺場であったらしい。 今は、昔の面影は、まったくなく、市民の憩いの場所、子供の遊び場所に生まれ変わっている。ただ、昔の名残からか、あるいはパリ市民のお腹に入った牛たちの霊を慰めるためからか、入口に牛の顔の像が建てられている。Y氏は、この公園の正式の名前を知らない。 牛の顔の像が迎えてくれることから、Y氏は、この公園のことを、J君といっしょに、「もうもうの公園」と呼んでいる。
    

    まったく暑い日だ。 芝生の上で、水着姿で日向ぼっこしている男女の横で、息子とJ君は、走り回って遊んでいる。 芝生、池、木陰、子供の滑り台、砂場、大人が憩えて子供が遊べるなかなかいい公園だ。 息子は、大 分慣れてきて、地元の子のボ−ルを蹴ったり、また別の子と幅の広い滑り台を滑り降りる競争をしたりしている。
 子供たちは、言葉の違いなんか関係なく、すぐに仲良くなってしまうもんだなあと改めて感心した。
 

 Y氏のアパルトマンに少しお邪魔してから、車で宿まで送ってもらった。それにしても、Y氏の運転は荒っぽい。 のろのろしている車に遭遇する度に、彼の口から、s.....とか、 p.....などといった言葉が発せられる。 これが、4年前、私の家から車で京都まで案内したとき、「車は嫌いだよ。 時間通りに着かないし。 俺は乗らないね。」なんて言っていた人と同じ人物かと疑いたくなる位だ。
 そんな私に彼はぴしゃりと言い放った。
 「パリじゃあね。 先に行ったものが勝ちなの。 謙虚になってちゃあ、この街じゃあ車に乗れないよ。 郷に入っては郷に従えだよ。」

    J君と遊び疲れた息子は、上記のようなY氏の荒い運転ぶりと、ク−ラ−のない車内の暑さが、車外のうだるような暑さによって増幅されている惨状にもかかわらず、途中でぐっすりと眠りこんでしまった。
 

 さて、Y氏のアパルトマンは、15区のDutot通りだったけれど、 あの「もうもうの公園」の本当の名前は何ていうのかな。

Katsuyuki Kamei



一つ戻る ホームへ戻る お手紙を書く