「親ばかフランス紀行'94」
(5) −チュイルリ公園の「さら砂だんご」−

1994年6月23日(木)
「パンだけのごはんはいや−」と息子に評された朝食を終え,本日の活動開始。
Jacob通りの宿から歩いて,本日の目的地オルセー美術館へ到着。
ところが,息子は,「こんなところ行きたくなーい。おもしろいとこ行きたいよう。」と言い出した。 オルセーの中は開放的だから子供も楽しめるだろうと思っていたのだが開館時刻よりも早めに来たのが裏目に出て息子が待ちきれなくなってしまったのだ。
「ほら,象さんがいるよ.」と,オルセー美術館の入り口の前にある象の像を指さしたりしたが,焼け石に水であった...
パリの空の下,セーヌは流れ,私たちは,オルセー美術館を去る。
「じゃあ,公園に行こう」ということになり,対岸に見えるチュイルリ公園を目指してPont Royalの上を歩いて、セーヌ河を渡る。
チュイルリ公園の砂地に足を踏み入れた瞬間,息子が叫んだ。
「さらっぴんやあー!」
(「さらっぴん」とは,関西のとある街の保育所における子供たちの業界用語で,さらさらのきめの細かい砂を意味する。 ちなみに小石混じりの砂のことは「ざらっぴん」と呼ばれる。)
円形の池のまわりの広場のところまで,歩を進めると,息子は手慣れた作業を開始した。 コンコルド広場のオベリスクが,凱旋門に重なって見える美しい眺めの公園で,保育所でいつも作っているさら砂だんご作りが始まった。
緑の芝生の中を涼しげな水をまきながら回転するスプリンクラー。 腕の上で,鳩たちに餌を与えるおじさん。 緑色のベンチに腰掛けて憩う人たち。 息子の作業を微笑んで見つめながら,横のベンチでバゲットをかじる美しい女性。
− チュイルリ公園のさら砂だんご作り −
(1)地面の表面のざらっぴんをどける。
(2)ざらっぴんの取り除かれたあとの地表をかいて,さらっぴんを集める。
(3)チュイルリ公園の池の水を水鉄砲に汲み,
かき集められたさらっぴんに水をかけて,よくこねる。
(4)形が丸くなるようにこねる。
(5)それを地面に置き,上からざらっぴんをかける。
するとぬれただんごの表面にざらっぴんの中のさらっぴんの
部分だけが吸い寄せられる。
(6)(5)を何度も繰り返しているうちに,だんごが大きくなっていく。
(7)さら砂だんごチュイルリ公園版完成。
横のベンチの美女は バゲットを食べ終え,息子がだんごを完成したのを見届けると,さっそうとコンコルド広場方面へ歩き去った。
この後,パリ観光の定番バトームッシュに乗ったのだが,さら砂だんご作りに精魂尽き果てたのか,各国語によるセーヌ河沿いの名所のガイドを子守歌に,息子は,船上ですやすや眠っていた。
翌朝,Jacob通りの宿の斜め向かいにある郵便局から,船便で本を送った。その中に,息子がチュイルリ公園で作ったさら砂だんごを入れておいた。
秋風が吹く頃に再会できるだろう。 でも,ちゃんと丸い形のままでいてくれるかな。 それとも,もとのさらっぴんに戻っているかな。
A bientot, Odango kun!
Katsuyuki Kamei
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